構造設計講座(木造住宅編)

 

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実務から見た木造構造設計 実務から見た木造構造設計
著者:上野嘉久
出版社名:学芸出版社
価格:6,000円(税別)

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3.梁の位置を決める。

 次に梁の位置を決めましょう。梁もこれから計算して最終的に決めますので難しく考えるに配置してみましょう。


①梁が必要な部分

 まずは、どこに梁を配置するかを説明します。

(1)壁の上下
 壁下地(胴縁)は梁に止める事になりますので壁の上下には梁が必要です。外壁廻り、階段ササラを止める必要がある壁。耐力壁の上下にも梁が必要です。

(2)柱の上下
 木造では柱と梁の納まりは基本的には梁通しになるので柱の上下には梁が必要になります。下に柱が無くなる箇所は柱を支える為に梁が必要なのは当然として下に柱がある場合も必要です。
 また、屋根を支える小屋束の下も梁が必要です。

(3)床、屋根を支える部分
 床、屋根を支える部分には梁が必要です。屋根下地となる垂木を支える梁は母屋と言います。


②梁の形式、梁のかける方向

 梁の形式には両端支持形式と片持ち形式があります。

(1)両端支持形式
 両端支持形式は構造モデル化すると以下のような形になります。

両端支持形式
 梁の両端は鉛直方向が支持できる部分で無ければなりません。簡単に言うと両端支持形式の梁は柱から柱へ、柱から梁へ、梁から梁へと繋がなければなりません。

(2)片持ち形式
 片持ち形式の梁ですが、在来木造の場合、根元を剛接合とする事は出来ないので以下の構造モデルのようなに片持ち部分から更に連続させ、天秤の形にする必要があります。

片持ち形式
 これらを図面に書くと以下のようになります。

梁の形式

(3)梁のかける方向
 さて、次に梁のかける方向ですが、どのようになると梁がきつくなるかを説明します。梁の断面に一番影響を与えるのは曲げモーメントと言う応力ですが、曲げモーメントは以下のように決まります。

梁の応力

 ※等分布荷重を受ける単純梁

 wは荷重、lはスパンです。ややこしい公式は抜きにして、ここで覚えて頂きたいのは、梁は荷重(受け持つ面積)が大きくなるほど、スパンが大きいほど断面が大きくなると言う事です。
 上図のY3通りのように梁を受ける梁は荷重が大きくなり、断面も大きくなります。基本的にはスパンの短い方向に梁をかけた方が断面は小さく出来ます。

③梁の配置の基本ルール

 その他、以下のルールに従って、梁を配置して下さい。

  1. 垂木のスパンが1820(2000)mm以下になるように母屋を配置する。
  2. 母屋の下に母屋のスパンが1820(2000)mm以下になるように小屋束を配置する。
  3. 小屋束の下に梁(小屋梁)を配置する。
  4. 床梁は910(1000)mm以下の間隔で配置する。

【検討結果】梁の配置例(仮)


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4.構造計算プログラム入力の準備を行う。

 もう少しで構造計算プログラム入力です。構造計算プログラム入力が必要な数値の計算を行います。
 なお、以降、階高は以下のように構造階高にて進めるようにして下さい。
例)1階階高:土台天端~2階梁天端
  2階階高:2階梁天端~小屋梁天端


①建設地の設計条件を調べる。

 建設地の設計条件とは積雪荷重、風荷重などの条件です。

 風荷重の計算には、基準風速(m/s)地表面粗度区分(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)が必要です。各地の基準風速については平成12年建設省告示第1454号で調べます。また、地表面粗度区分については各特定行政庁が定めていますのでインターネットで検索して下さい。

 積雪荷重の計算に必要な垂直積雪量も各特定行政庁が定めていますのでインターネットで検索して下さい。

【設計例】
 検索ワード:「横浜市 地表面粗度区分」、「横浜市 垂直積雪量」
 ⇒検索結果

  基準風速:34m/s
  地表面粗度区分:Ⅲ
  垂直積雪量:30cm

②床面積を計算する。

 床面積は46条壁量計算用に必要になります。構造計算を行う場合でも46条壁量計算を行う事となっています。この場合の床面積は意匠の各階床面積になります。

【設計例】
  2階:66.25㎡
  1階:77.85㎡

③見付面積を計算する。

 見付面積は風荷重計算に必要な数値です。建物平面に対して下図のようにX方向・Y方向別、屋根・2階上部・2階下部・1階上部に分けて計算します。


見付方向
見付面積

見付面積の算定にあたっては以下の点に注意して行います。

  1. 階の上部、下部は階高の1/2で分ける。(46条計算では下から1.35mで分けますが、構造計算では階の1/2で分けます。)
  2. 通り芯からの壁厚さ分を考慮する。
  3. 細かい突起物などは考慮しなくて良い。(樋や小庇などは影響が少ないので考慮不要)

【設計例】

--
X方向
Y方向
屋根
8.83㎡
16.26㎡
2階上部
10.53㎡
17.74㎡
2階下部
11.48㎡
17.46㎡
1階上部
12.30㎡
18.10㎡

見付計算の内訳


④基礎関連データを計算する。

 あとは基礎関連のデータを計算します。と言ってもまだ、上部構造も計算していないので、これもだいたいでかまいません。上部構造の計算が終わり、基礎の計算の部分でまた、詳細に検討します。
 木造計算プログラムKIZUKURIに入力には、基礎底版面積・1階床重量・基礎立ち上がり部重量・スラブ重量・積載荷重が必要です。それぞれ以下のように計算して下さい。

a)基礎底版面積
 べた基礎の底版の面積です。建物内部の面積とします。通り芯間で計算した面積でかまいません。
【設計例】77.85㎡

b)1階床重量
 1階床の仕上げの総重量です。建物内部面積に0.45N/㎡をかけて計算します。
【設計例】77.85㎡×0.45N/㎡ = 35.04kN

c)基礎立ち上がり部重量
 地中梁のべた基礎底版より上の部分の総重量です。24kN/m3(コンクリート比重)に0.15m(地中梁幅)及び立ち上がり部の高さ、地中梁の総長さをかけて計算します。

 地中梁の位置は以下のルールに従って、決めて下さい。

  1. 土台(柱及び耐力壁、外壁、階段を受ける壁)の下部に地中梁(基礎立ち上がり)を設ける。
  2. 耐力壁下の地中梁は両端を直交する他の地中梁まで延長する。
  3. べた基礎底版が短辺4.095m以下の地中梁で囲まれた四角形となるように周囲を地中梁を配置する。

【設計例】24.0×0.15m×0.35m×75.53m = 108.77kN
 ※地中梁の配置(仮)

d)スラブ重量
 べた基礎底版の総重量です。べた基礎底版面積に3.60kN/㎡(24.0×0.15)をかけて計算します。
【設計例】77.85㎡×3.60kN/㎡ = 280.26kN

e)積載荷重
 一階部分の積載荷重による総重量です。建物内部面積に1.30N/㎡(居室用)をかけて計算します。
【設計例】77.85㎡×1.30kN/㎡ = 101.21kN

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