構造設計の流れ、構造設計はどのように行うの?

 

 ここでは、構造設計とは、どのような仕事か、どのように行うのか、構造設計の流れについて、構造計算、構造図作成、確認申請までの業務を説明します。

構造設計スキルをワンランク上げるための取組み 構造設計スキルをワンランク上げるための取組み

著者:建築構造設計べんりねっと
出版社名:Booth
価格:1,000円(税込)


1.構造計画を行う。

 まずは、構造計画を行います。構造計画とは、構造種別(RC造、鉄骨造、・・・)、架構形式(ラーメン構造、ブレース構造・・・)をどうするか、柱をどこに建てるか、 梁や耐力壁をどこに設けるか、基礎形式(直接基礎、杭基礎)を何にするか、設計クライテリア(耐震等級など)をどうするか、と言うような事であり、構造設計の中で最も重要な部分になります。

 この構造計画の中で構造種別の選定や柱位置のなどの初期検討は、意匠設計者により行われる事になり、構造設計者はこの計画にアドバイスや要望を伝えます。

 実際の作業としては、構造体をモデル化した“略伏図”と計算にあたっての“仮定断面”と言うものを作成します。
 以前は、このようにテンプレートと定規を使って、柱を○、大梁を=、小梁を-で手書きで書いていまたが、今はCADで実際の構造図に近い形で書く人が多いと思います。

 当然、建物は構造だけで成り立っている訳では無く、意匠を台無しにしてしまう計画ではまずいので構造計画には多少の意匠的な知識も必要になります。

 優れた設計者は、この構造計画の時点で建物に発生する応力や変形がイメージ出来ており、既に建物の崩壊までの設計のストーリーが頭の中で出来ています。

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2.設計荷重を算定する。

 次に構造計算を行うにあたっての設計荷重の算定を行います。床や壁の仕上げの種類や厚さから 1㎡当りの固定荷重を計算し、部屋の用途に応じた の設定をします。
   設計荷重表例

 また、建設地に応じた地震荷重、風荷重、積雪荷重の設定を行います。その他、設備機器等で重量物がある場合は別途、算定をします。

 この設計荷重の設定が適切でないと後の構造計算に影響が出てしまうため、慎重に行う必要があります。

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3.二次部材の設計を行う。

 さて、それでは部材設計の開始です。まず、二次部材の設計を行います。二次部材とは スラブ(床)や小梁などの地震力を受けない部材の事を言います。

 先に算定した設計荷重から応力計算を行い、断面算定(断面寸法、配筋の決定)を行います。二次部材のほとんどは静定構造であり、応力計算も簡単ですが、作業の効率性から、今はこのような 計算プログラム を使用して行う事がほとんどです。

 スラブ(床)や小梁は、常時荷重(長期荷重)で断面が決まる事がほとんどであり、設計ミスがあると床の振動やたわみなどの使用上の支障がすぐに発生してしまうので十分に注意が必要です。


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4.柱、大梁、耐震壁(ブレース)の設計を行う。

 いよいよ、構造設計・耐震設計の本丸とも言うべき建物のメインフレーム(柱、大梁、耐震壁)の設計です。設計の流れを簡単に説明すると以下のようになります。

 建物のモデル化・剛性計算 → 荷重計算(長期荷重、地震荷重等)→ 応力計算(常時、地震時等) → 各部の断面検定

 耐震設計方法には、建物規模等に応じて建築基準法で定められたいくつかの設計方法(設計ルート)がありますが、上記の検討の他にも採用した設計方法(設計ルート)で必要とされる検討や安全性の確認が必要となります。(偏心率、剛性率、層間変形角、柱壁量・・・)

 通常、建物は高次の不静定構造物であり、応力解析が非常に複雑であります。また、仮定した断面が耐力的に足りないなどの時は再度、この計算をやり直す必要があり、非常に手間がかかるのでこれらの計算を一連で行ってくれる"一貫構造計算プログラム"と呼ばれるソフトを使って設計を行います。

 それでは実際の作業の流れ(プログラムによる検討方法)を簡単に説明します。
 まず、柱位置等に合わせグリッドを設定し、スパン長の入力、階高等の入力を行います。次に仮定した柱、梁、壁の断面を登録し、グリッド位置に配置します。また、開口や床・小梁などを建物形状に合わせて、入力します。その他、計算条件、使用材料、支点・材端条件(ピンor剛orバネorフリー)、計算補正データの入力をします。

 ここまでの入力を行うと応力計算まで自動的に行われます。最後は鉄筋を入力し、断面の検定を行います。(鉄骨断面であれば自動的に断面検定が行われます。)

 NGの箇所があれば該当箇所の入力を変更し、全ての部位の断面がOKになり、その他、設計方法(設計ルート)による条件を全て満たしていれば、上部構造(柱、大梁、耐震壁等)の設計終了となります。

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5.基礎の設計を行う。

 上部構造の設計が終わったら、次に基礎の設計を行います。基礎の設計を行うには、まず、建設地の地盤の状態を知る事が必要であり、専門業者による地盤調査を行います。

 この地盤調査結果と建物の重量から、基礎の形式を決定する事になります。地盤の状態が良ければ、直接基礎(独立基礎、布基礎、べた基礎等)、悪ければ杭基礎の採用をする事 になります。杭にもいくつかの種類があり、建物形状、建物重量、地盤条件、敷地条件(施工条件)等を考慮し、決定する事になります。

 検討方法としては、地盤調査結果から地盤の地耐力や杭の支持力を算定し、基礎の大きさや杭の本数を計算します。また、基礎からの反力等も受ける事になる基礎梁(地中梁)の設計を行います。

 基礎・地盤は上部構造の設計以上に不確実な事が多い部分であり、上部構造が十分な耐震性を発揮するためにも強固な基礎があってでの事です。
 また、基礎は建物の経済性(コスト)に大きく影響する部位であり、上部構造に比べ、後で補強をする事も簡単ではなく、構造設計の中でも難しい部分の一つです。

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6.保有水平耐力の検討を行う。

 建築基準法では、建物の構造は中地震時(震度5強程度)と大地震時(震度7程度)の2段階の地震力に対して設計をする事が義務付けられています。構造設計では一次設計時、二次設計時(終局時)と呼びます。  それぞれの設計目標は、中地震時に対しては建物が損傷しない事、大地震に対しては多少の損傷は許容するが人命保護のため、建物が倒壊しない事となっています。

『柱、大梁、耐震壁(ブレース)の設計』の部分で耐震設計方法には、いくつかの設計方法(設計ルート)がある事を説明しましたが、代表的なものでルート1、ルート2、ルート3と呼ばれる設計方法(設計ルート)があります。この中で大地震時の検討を直接行うのがルート3(保有耐力計算)です。ルート1、2はある条件を満たしている事を確認する事によって、大地震時の安全性を間接的に行う事によって、大地震時の検討が免除されています。

それでは保有水平耐力の検討の説明をします。保有水平耐力の検討も一貫構造計算プログラムを使用し、一般的には荷重増分法と呼ばれる解析手法で行われます。

この荷重増分法とは、ある地震力(一次設計時よりも少し大きい程度)にて応力解析を行い、建物の各部が壊れていないかを判定します。この時点で壊れている部分があれば、その部分をピン(塑性ヒンジ)にした応力解析モデルを作成し、更にもう少し大きい地震力を作用させ、応力解析を行い、また、建物の各部が壊れていないかを判定します。この解析を数度繰り返す事によって、建物が不安定構造になった時点での地震力がその建物の保有水平耐力となります。

 通常はこの解析工程を数十回行います。まさにコンピュータで無いと出来ない解析の一つです。

 そして、この保有水平耐力が必要保有水平耐力を上回っていればOKとなります。必要保有水平耐力は建物重量等のほか、架構特性や形状特性を考慮し、決定します。保有水平耐力の考え方は、 地震エネルギーを建物が塑性変形により、吸収するとの考えに基づいており、変形吸収能力の優れた建物は必要保有水平耐力が小さくなります。

 この保有水平耐力の検討で重要なのは保有水平耐力が必要保有水平耐力を上回っているのは当然として、どのような壊れ方をしているのかです。せん断破壊等の脆い壊れ方をしていないか? 梁よりも先に柱が壊れていないか?・・・。良い壊れ方をさせるのが、良い構造設計と言っても過言で無いくらいです。

 この保有水平耐力の検討が終われば、構造計算は終了です。

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7.構造図を作成する。

 構造計算が終わったら、構造図の作成をします。施工者は構造図を見て、建物を造る訳であり、構造設計の意図を伝える大事な資料です。

 一般に構造図の種類としては基礎及び各階伏図、軸組図、部材リスト、詳細図等が必要であり、作成にあたっては、CADを使用します。

 いかに構造計算が正しくても、構造計算にあった構造ディテールとなっていなかったり、構造計算書との不整合があったりすれば建物は危険な状態となってしまいます。

 構造設計とは構造図を作成する事が目的であり、構造計算はそのプロセスでしかありえないと言っても良いでしょう。

これで構造設計は全て終了です。

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8.建築確認申請を行う。

 建物を建てるにあたっては"建築確認申請"と言う手続きが必要であり、この建築確認申請の構造に関する部分の対応も構造設計者が行う事になります。

(※平成12年からは、建築確認業務が日本ERIなどの民間会社でも行われるようになりました。)

 建築確認とは、設計が建築基準法に適合しているかを審査する事となっているのですが、やはり、建築基準法での取扱いが難しくなるようなケースもあり、そのような時は審査側からの質疑が来ます。それに対して構造設計者は説明や追加検討をしていく事になります。

また、平成19年からは、構造計算適合性判定と言う制度が始まり、設計方法(設計ルート)がルート1以外のものは、この審査を受ける事が必要になりました。この審査は建築基準法では、グレーな部分となってしまう構造のモデル化や計算仮定・設計方針などを試験(終了考査)に合格した判定員と呼ばれる専門家が審査を行います。

構造図の見方~これを読めば構造設計者の意図が分かる! 構造図の見方~これを読めば構造設計者の意図が分かる!

著者:建築構造設計べんりねっと
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9.工事監理を行う。

 工事が始まると工事監理と言う業務があります。工事監理とは設計図書通りに施工が行われているかをチェックする業務です。

 近年、施工不良が大きな社会事件にもなっており、工事監理は構造設計の中の重要な業務になっています。

また、杭施工などはどうしても施工誤差が大きく出てしまうため、杭偏心に対する補強の検討なども施工中に行う事もあります。

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