構造設計講座(擁壁編)
『構造設計者になろう』の構造設計講座 第三弾は擁壁の設計です。
構造計算を必要としない木造住宅の設計で工作物申請も必要ない小さな擁壁がある場合、わざわざ構造設計事務所に依頼するのも面倒。 そんな時、自分で設計出来たら、良いと思いませんか?
ここでは意匠設計者の方向けに擁壁の構造設計講座を行ないます。面倒な計算は、本設計講座で公開しますEXCEL計算シート(※右クリックで保存)を利用しますので簡単に出来ます。
なんと、自動計算できる L型擁壁の構造計算プログラムがboothより、購入出来ます。(価格:800円)
本講座を加筆・再編集した構造設計講座(擁壁編)PDF版がboothより、購入出来ます。(価格:500円)
社内の研修資料にもご利用下さい。
擁壁設計講座の個別指導サービスを開始しました。(平成29年2月5日)(価格:15,000円)
1.擁壁の種類
擁壁・土留にも様々な種類があります。代表的なものとしては、鉄筋コンクリート反力式擁壁、鉄筋コンクリート重力式擁壁、練積み擁壁(間知ブロック擁壁)、コンクリートブロック土留などがあります。
a)鉄筋コンクリート造反力式擁壁
b)鉄筋コンクリート造重力式擁壁
c)練積み擁壁(間知ブロック擁壁)
d)コンクリートブロック土留め
そして、鉄筋コンクリート反力式擁壁の形状にもL型、逆L型、その中間の逆T型とあります。
※左から順番にL型、逆T型、逆L型
ここでは、最も多く使われる鉄筋コンクリート造L型擁壁の設計方法を解説します。尚、工作物申請が不要な見付高さ2.0m以下の擁壁を対象とします。
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2.擁壁にかかる力
まずは擁壁にどんな力がかかるか、考えてみましょう。言うまでもなく、擁壁は“土圧”を受けます。
さて、この土圧をイメージしてみましょう。
土を垂直に掘ると下図のように崩れてしまいます。この力が土圧です。
そして、土圧は以下のような性質を持ちます。
①土の高低差が大きいほど、土圧は大きくなる。
②崩れる土の重量(比重)が大きいほど、土圧は大きくなる。
③柔らかい土ほど、崩れる土の量が増え、土圧は大きくなる。(非常に硬い土であれば自立もします。)この土の種類、強度により、設定された係数を“土圧係数”と言います。
④土の表面にかかる重量(建物重量など)も土と一緒に崩れるため、その重量が大きいほど、土圧は大きくなる。この重量を“上載荷重(地表面載荷重)”と言います。
更に擁壁の底版の上にある土の重量(重力)がかかります。
また、地中に水位がある場合は水圧もかかりますが、大きな力となってしまう為、水圧は擁壁にかからないように水抜き穴を設けておくのが一般的です。
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3.擁壁設計の検討項目
擁壁設計の検討項目と言うと難しく感じますが、擁壁が壊れる時、どのような壊れ方をするかをイメージしてみましょう。
①擁壁が転倒する。
擁壁が土圧で転倒しないようにするには、底版の上の土の重量で抵抗する必要があります。この抵抗力が少ないと擁壁は転倒してしまいます。
②擁壁が水平に移動する。
擁壁が土圧で水平に移動しないようにするには、擁壁底版下の摩擦力で抵抗する必要があります。
底版上の土の重量が少ないほど、擁壁は動き易くなります。これを“擁壁の滑動”と言います。
③擁壁が沈下する。
擁壁下の地盤が軟弱であると擁壁は沈下してしまいます。
沈下しないようにするには底版を大きくし、荷重を小さくする必要があります。それでも足りない場合は、地盤補強や杭が必要になります。
高さ1.5mの擁壁では、通常80kN/㎡程度の地耐力が必要になります。木造2階建ての基礎に必要な地耐力は20~30kN/㎡程度ですので建物以上に大きな地耐力が必要になります。
④擁壁の壁や底版が折れる。
擁壁の壁や底版の鉄筋が少ない場合やコンクリート強度が小さい場合だと壁や底版が壊れてしまいます。
以上が擁壁の壊れ方になります。つまり、この項目の検討を行えば、安全な擁壁を設計出来る事になります。
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