構造設計講座(擁壁編)

 

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7.底版下地盤の検討

①底版下接地圧の算定

底版下接地圧

 擁壁下の地盤には左図のような力(接地圧)がかかります。擁壁には土圧により、回転させようとする力がかかりますので接地圧は均等ではなく、擁壁のつま先側の方が大きくなるのはイメージ出来ると思います。

 底版が短いとつま先側の接地圧σmaxが大きくなり、また、底版かかと側の接地圧σminも小さくなっていきます。この底版かかと側の接地圧σminですが、擁壁の設計基準ではマイナスの数値にならないようにする事が必要ですので、まず、σminがプラスの値になるように擁壁底版長さを調整します。

 また、擁壁各部の重量も均一ではありません。これらを考慮して、擁壁下の地盤にかかる力を算定します。 (計算書参照)


②底版下地盤の地耐力の算定

 擁壁下地盤の地耐力の算定は以下のソフト等を使用し、算出して下さい。

地盤許容応力度の計算(EXCELシート)

③接地圧と地耐力の比較

 さて、擁壁下地盤にかかる接地圧と地耐力を比較して、地耐力の方が大きければ、擁壁は沈下しない、OKとなります。OKとならない場合は同じく底版長を長くして、接地圧σmaxを小さくしていく事になります。 そして、いくら底版長さを伸ばしても、接地圧がOKにならない場合はその高さの擁壁を設置するには地耐力が足りなく、地盤補強(地盤改良、杭)が必要である事になります。

 底版下地盤の検討としては以上になりますが、ここは慎重に検討を行う必要があります。

 現在の底版長さでは擁壁下の地盤にかかる接地圧は、66.3kN/㎡となっています。木造2階建ての接地圧は通常、20~30kN//㎡程度ですので、擁壁底版下には非常に大きな力がかかる事が判ると思います。
 言うまでもなく、擁壁が沈下してしまうとその上に建っている建物も傾いてしまいます。擁壁下の地盤の検討が不十分であり、建物が傾いてしまった言う例は多数あります。

 擁壁下地盤の地耐力計算は地盤調査業者に算出を依頼するのが無難と思います。また、擁壁下地盤には大きな地耐力が必要とされますので、ボーリング調査(標準貫入試験、土質試験)を実施する事をお勧め します。
 地盤改良を行う場合は、EXCEL計算シートで算出された接地圧σmaxを上回る数値を地耐力の項目に入力し、地盤改良会社に計算書と共に依頼をして下さい。


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8.壁、底版の検討

 擁壁の壁、底版にかかる力及び応力図(曲げモーメント図)が以下のようになります。



壁、底版の応力

・壁は底版上(壁根元)までの土圧による片持ち版として、応力を算出します。
・底版は壁面(底版根元)までの接地圧と逆方向からの底版上の重量を受ける片持ち版として、応力を算出します。

 ※詳細な計算式は計算書を参照して下さい。

 まず、この曲げモーメントに対し、必要な鉄筋(鉄筋径、ピッチ)を計算します。このサイズの擁壁では通常、鉄筋径はD13又はD16を使用します。ピッチは250mm~75mmとします。EXCEL計算シートでは、鉄筋径の表示箇所でプルダウンボックスから、D13又はD16を選択し、OKとなるピッチを入力します。

 注意点としては配筋がしずらくなるので壁、底版の鉄筋を同じ径で同じピッチとして下さい。

 次にせん断力のチェックをします。こちらは自動計算となっています。通常、擁壁ではせん断で決まる事はないのでOKになっているかどうかの確認をして下さい。

 以上で擁壁の構造計算が終了です。

 【擁壁の構造計算完了】

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9.構造図を作成する

 そして、構造図(擁壁断面配筋図)を作成すれば、擁壁の構造設計は完了です。図面には各部の寸法、配筋、使用材料(鉄筋、コンクリート)、水抜きパイプ等を 記入します。  なお、構造計算で決めた鉄筋は背面側壁縦筋と底版上端筋です。(赤文字表示部分)

擁壁構造図

10.実際に擁壁の構造設計をしてみる

 以上が擁壁の構造設計方法になりますが、理解出来ましたでしょうか?

良いんです、いきなり、全部理解しなくても!ややこしい計算はプログラムがやってくれます。

 まずは設計してみる事が大事です。そして、少しずつ理解すれば良いのです。例題をこなすだけで力も自信も付きません。 ぜひ、実際の擁壁を設計してみて下さい。

 でも少し不安と言う人は擁壁設計講座の個別指導サービスを ご利用ください。

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