構造設計者の日常~ある中堅構造設計者の日記
構造設計事務所に勤める私の友人のある構造設計者が一つの建物の設計を終えるまでの日記です。
9月23日(金) 「エピローグ」
今日は今、設計をしている物件の提出期限。朝、事務所に来て、メールを確認すると意匠事務所からのチェックバック。
と言うか、変更じゃん!
まあ、たいした変更じゃないから、いいや。変更対応の図面修正、計算書のまとめをして、終了!!!
昼過ぎには終わったけど、意匠事務所には17時に宅ファイル便で納品。大変だった感を伝えようと思って。
まあ、何はともあれ、終了!明日、明後日は久しぶりに二連休出来る。今日は飲みに行こう。
9月26日(月曜日) 「今日から新しい仕事。打合せ」
今日から、新しい仕事。その打ち合わせで某ゼネコンに直行。
新しい仕事が始まるのは気分が良い。今回の建物はRC7階建てのマンション。形も複雑ではなく、それほど難しくない。打ち合わせメンバーはゼネコン担当者とその上司、意匠事務所、設備事務所と構造事務所の自分。いつもの顔見知りのメンバー。
打ち合わせはゼネコン担当者から、建物の説明、我々への指示事項、こちらからの質疑と言う感じで進みます。まあ、だいたい、いつもと同じ仕様なので、打ち合わせもスムーズ。殆どは意匠事務所と設備事務所の仕様の確認であり、その時間は退屈な時間。。。
こちらからは、地盤調査方法を指示。近隣データからは杭基礎になるのは間違いないので孔内水平載荷試験と液状化試験を指示した。
最後に確認申請提出先とスケジュール。チェック、打ち合わせ用提出は一ヶ月後の10月21日。最終提出は28日、31日に確認提出予定。まあ、それほどタイトではないな。
確認申請提出先は日本ERI、適判機関はビューローベリタス。これもいつも通り。
昼ご飯を食べて、事務所に戻り、早速作業。
まずはメールで届いた平面図データを元にCADで略伏図を作成。19時30分、柱位置を調整した部分と小梁配置を確認を確認するためにゼネコン担当者と意匠事務所にメール送信。
本日の業務終了。
9月27日(火) 「準備計算、二次部材の設計」
8時起床。8時30分に家を出て、9時30分より、業務開始。
さて、今日から本格的に新規物件の構造設計開始。まずは設計荷重から。普通なら、仕上表、矩計図から設計荷重を拾うのだが、ここの仕事は構造計算開始時にこれらの図面がない。いつも通りとの言葉を信じ、設計荷重を作成。図面がないのである意味、早く作業が終わる。
後からの変更は多少、覚悟の上。
そして、小梁スラブの設計に入るために、昨日送った略伏図を電話にて確認。特に何もないらしい。
今日の昼は事務所の近所の定食屋でランチ。
午後からはスラブ、小梁の設計。使用するプログラムはストラクチャー社のRCチャート。入力項目が少なくて、電卓みたいな感覚で使えるのでこのプログラムは好き。
マンションなので小梁もだいたい同じパターン。自分の中でも設計パターンが出来ているので特に問題なく、終了。
計算した断面サイズをゼネコン担当者と意匠事務所にメール送信。
本日の作業は予定通り。20時終了。明日は一貫計算プログラムの入力だ。
9月28日(水) 「早速、変更かー!」
いつも通り、9時30分より、仕事開始。
メールを開いて見ると意匠事務所から、昨日送った小梁配置の修正依頼。間取りを変更したらしい。
まあ、大きな被害はない。
しかし、メールの時間が深夜2時。毎度の事だけど、この事務所はいつも何時まで仕事をしてるのだろう。
スラブと小梁の計算書、伏図を修正。午前中はその他、別の事務所からの構造計画の相談の対応。これは予定外。そして、午後より一貫計算プログラムの入力を開始。集中したいので、作業の邪魔が入らない事を祈りながら。
だいたい、最終形はイメージ出来ている。計算書に添付する補正入力データの内訳を作りながらの作業。
21時終了!今日は集中して、仕事できた。満足な一日。明日から、入力のチェックと計算結果のチェックだ!
9月29日(木) 「確認審査機関からの指摘メール」
今日の予定は一貫計算プログラムの入力~応力チェック。
プログラムの入力データを印刷してる所でメールを一通受信。確認審査機関からのメールで、月曜日に確認申請を出した物件の指摘事項でした。
内容を確認した所、指摘事項の数は7項目。図面の修正、追記内容で3項目、考え方の説明の内容が2項目、追加構造計算が必要な内容が2項目。今日一日で対応出来そうだ。
予定を変更して、今日は先週まで設計していた物件の確認申請の訂正対応をする事にしよう。
20時、資料作成完了!そして、内容確認のために確認審査機関にメール送信。明日の午前中、電話で確認するとして、今日の業務は終了。
9月30日(金) 「イマイチやる気出ず。。」
世の中は今日で第二四半期が終了ではないか。まあ、構造事務所には全く関係ない。いつもと変わらず、9時30分に出勤。
昨日、送った確認指摘の訂正資料の内容確認をしたいが、まだ、内容を見ていないだろう。電話するのは、昼前にしよう。と言っても、こっちが片付くまで、新しい物件の仕事を進める気にもならない。
『建築構造設計べんりねっと』の会議室をのぞいたり、インターネットを見ながら、暇をつぶす。
11時、そろそろ良いかと思って、確認審査機関に電話。昨日送った内容の確認。追加検討した項目の以外は確認済みとの事。追加検討について、説明し、了承をもらい、早速、午後に差し替えに行くとのアポを取る。
午後はランチがてら、確認審査機関に訂正資料の差し替えに。たまにはいつも定食屋じゃなかて、オシャレな店で。差し替えも終わり、ドトールでコーヒーを飲んで、15時、事務所に戻る。
イマイチ、やる気も出ないけど、新規物件の一貫計算プログラムの入力データのチェック開始。
18時終了。土日は休み。
週明けから、頑張ろうと心に誓い、帰宅。
10月3日(月) 「一貫構造計算プログラムによる検討」
さて、今日から、一貫構造計算プログラムの応力チェック、調整、柱・大梁の断面のまとめを行う。
まずはプログラムで平面、立面、モデル図を確認。問題なし。次に地震力、水平力分担、重心剛心位置、軸力、モーメント、変形を確認。問題なし!と言いたい所だが、軸力の支点ごとのバランスがおかしい???
梁のせん断力を調べるが正常である。調べてみたら、重量の補正で節点に入力した特殊荷重が1スパンずれてる。。。危ない、危ない。
その他は問題ないようなので、大梁の設計開始!イメージ通りの断面、配筋で納まった。順調。次は
柱の設計。いつもながら、パネルゾーンを納めるのは面倒。。。上階から断面、配筋をまとめていき、2階柱で引っ掛かる。
何故か、やたらと配筋がきつい箇所が。鉄筋を増やして納めてしまう方法もあるが、気持ち悪いので原因を調べる。この柱だけ軸力が大きいのは判ったが、原因不明。ここまで軸力が大きいのはおかしい。
22時、原因が判らず、本日の営業終了。
10月4日(火) 「原因判明」
いつも通りに出勤。
昨日からの解析結果の検証を続ける。設定した計算条件を一つ一つ確認する事にした。条件を変えながら、解析を繰り返した結果、剛床解除の指定方法が影響しているらしい。
しかし、この条件も必要。なので、多少、配筋は増えるが、2パターンの解析条件で設計することにした。問題の柱軸力が大きくなる状態も把握した。少し、手間がかかったが柱の設計も終了。
次に耐震壁の設計。これは問題なし。
午後からは基礎の設計。基礎形式は杭基礎。
このゼネコンの場合は最低2通りの杭種にて検討、見積もりをして、決定する事になっている。場所打ち杭とPHC杭のか2パターンと軸力、水平力を元請ゼネコンにメール送信。あとは結果待ち。
10月5日(水) 「今日は遠足!」
今日は現場監理で久しぶりに出張。と言っても静岡までですが。新幹線で1時間弱。東京駅でお茶と朝ごはんを買い込み、新幹線へ。仕事の区切りもちょうど良いし、気分転換になる。
さて、現場には10時到着。ヘルメットを借りて、早速、配筋検査。
結果はと言うと頭を抱えるほど、酷くはないが、少し雑。鉄筋の乱れじゃなくて、意識が。
自信満々に「この現場、腕の良い鉄筋屋に頼んだから、綺麗に組めてるでしょ」と言う。
私的には「・・・。」
幾つか、気になる箇所を指摘。ここは、しっかり言わないと。
現場事務所で昼ご飯をご馳走になって、午後から、1時間ほど、検査結果確認の打ち合わせ。そして、事務所に戻る。直帰したかったが、16時には事務所に戻れるのでしょうがない。
やる気も出ないので、監理の報告書だけ、作って、本日終了。
と思ったら、今、設計してる物件の杭工法決定のメールも来た。乗り気はしないが、基礎の設計をまとめた。
明日からは保有耐力計算だ。
10月6日(木) 「今日から、保有耐力計算」
今日から、保有耐力計算。三連休もあるし、今日明日でなんとか、計算をまとめたい。計算条件を指定して、とりあえず、保有耐力を流してみる。
OKになれば、終了!と願い、結果を見る。
耐震壁があるY方向は問題なく、OK!
ラーメン方向であるX方向は安全率が0.83
まあ、そんなにうまくいかない。これが仕事だと諦める。
まずは破壊形式とDSを調べてる。柱にヒンジが出来て、部分崩壊になっている。まずは全体崩壊形になるように柱を補強。何回も計算を流しながら、結果を確認、再計算を繰り返す。
まあ、一回計算するのに一、二分。思えば、設計を始めた頃は保有耐力を流すのに十数分はかかった。PCの性能アップに感謝。
一次設計で鉄筋が多かったかなと思った柱があったが結局、廻りの柱も同じくらいの鉄筋量に。
ここで、保有耐力結果は、0.95。ここからの5%が大変。
さて、どうするか?
安直に断面を上げるのはプロっぽくない。スマートに納めたい。
今日は業務終了。プリントアウトした保有耐力結果と伏図を持って帰る。帰りの電車の中で考えよう。イメージが大事。
10月7日(金) 「保有耐力計算の続き」
昨日の保有耐力計算の続き。あと、5%
まずは偏心によるFesを改善しよう。断面サイズを調整しつつ、偏心を納める。少しずつ、断面を上げながら。耐力も上がったので、保有耐力クリア!
と言っても、まだ、1.03なので、もう少し、上げたい。せめて、1.10程度まで。
Dsは変わりそうにない。断面を上げるのも、ここまでだろう。
考えろー、三連休が無くなるぞー。
試行錯誤を繰り返す。考えなしに何となく検討しても、結果は改善しない。よし、もう一度、破壊形式、応力図を確認。全体崩壊にはなっているものの、隅柱脚部のヒンジ発生が速い。軸力の影響である。この部分の配筋を増やしてみた。
おっ、耐力アップ、1.08。もう少し。もう一本、鉄筋を増やす、1.11 。
これで終了しよう。
22時30分。よかった、三連休が取れる。
10月11日(火) 「図面書くの嫌い」
計算が終了したので、今日から、図面の作成。
構造設計で最も重要な作業。構造設計とは構造図を作る事と言い換えて良い。と言っても、面倒な作業だ。。。
だいたいの伏図は最初に作ってあったので、符号やレベル、その他の書き込みを追加していく。
一日中、地道に作業。。。普段は面倒だと思う電話での構造相談も今日は少ない。
集中出来てよかったと言うか、飽きた。
10月12日(水) 「飽きた」
今日も地道にCADで作図作業。嫌々で作業するから、進み方も遅い。うちの事務所も図面を書くCADオペレータさんを雇って欲しいよな。まあ、やるしかない。
伏図を書いている途中で納まりがおかしく、柱断面を修正しないとならない所を発見。やはり、図面を描かないと納まりのチェックが不十分なのを再認識。と思い、作図作業を頑張ろ。
途中途中で意匠事務所に連絡し、納まりや寸法の確認。
今日は軸組図、部材リストの途中まで終了。
あと、一日で終わるだろう。やっぱり、飽きた。(笑)本日も早めに業務終了。
10月13日(木) 「図面完了」
今日もまたまた、作図作業。午前中で部材リストも作成完了!雑詳細図は使い回しで殆どOK。
あとは架構配筋図。これが一番面倒だ。多分、こんな図面は施工者は見ていないと思う。自分も施工者に
伝えたい重要な内容はここには表記しない。使われない図面だけに余計に面倒。その割に手間がかかる。
まあ、あと少しだから、頑張ろ。
20時、図面作成、全て完了!
そして、チェック前だが、意匠事務所に図面を送信。「途中ですが」と付け足して。仕上げた後に変更されるとチェック回数も増え、手間もかかるし、間違いも起こりやすい。
変更があるなら、今の時点で対応したいのとここまで出来てますから、後は変更しないで下さいよとの意味を込めて。
10月14日(金) 「別案件の仮定断面検討」
9時30分、出勤。
昨日、送った図面に対しての反応は今の所なし。
今日は別の仕事をする予定。一昨日、相談が来た案件の仮定断面検討。お得意様のデベロッパーからの
依頼。RC10階のマンションです。真四角な建物とは言えないが、構造的には、それほど無理はない。
一貫計算プログラムに入力し、柱・大梁の断面を算出。ここの仕事はシビアで余り余裕を見すぎた断面を出すと実施設計の依頼もなくなってしまう。
夕方、意匠事務所から、メールと電話が。
調整?変更と言うか、納まってなかっんでしょ。
データの日付は三日前。早く、連絡欲しいよね。
ちょっと被害。。。計算のやり直し。一貫計算でNGが出た。また、調整。。。
21時45分、終了。変更があると段々と鉄筋が増えていく。再度、全体をチェックして、減らせる所を探そうとは思わないから。
まあ、何とか納まった。週明けは計算書と図面のチェックと最後のまとめ。
10月17日(月) 「今日は頑張ったー」
今日から、計算書と図面のチェックと最後のまとめ。
間違いは許されない。集中して、仕事したいので、今日は電話を取り次がないように廻りにお願い。
さて、集中して、仕事するぞ!
まずは計算書をまとめ、変更になった箇所などによる細かい数値を合わせ、再計算して、DocuWorksに出力。そして、まとめ。
次に計算書の図面のチェック。部材の配置、断面サイズ、配筋。一つ一つ、マーカーしながら、確認。
不整合はないようだ。
そして、図面感の不整合チェック。多少の間違いはある。図面に赤入れ。
そして、最後は全体的のチェック、納まりの確認。
よし、終了!この勢いで図面を直そうと思ったけど、終電の時間。
図面修正は明日。今日は頑張ったー。
10月18日(火) 「設計完了」
まずは最後の図面修正。サラっと終わらせて、完了!
そして、同僚にチェックの依頼。うちの事務所では納品前に違う人がチェックする。昨日から、お願いしておいたから、スムーズに作業移行。
自分はその間に構造計算概要書その他、計算書の目次などまとめ。そして、Pdfに変換。
多少のアドバイスを貰い、図面を少々、修正。同じ、図面もPdfに変換。
これで、設計が全て完了!
一次納期が21日だから、ちょうど良いくらいに終わった。しかし、まだ、納品はせず。。。あまり、チェックの時間を多く与えると余計な指摘も増えてくるので。前日くらいに送ろ。
10月19日(水) 「暇だ。」
今日はポッかり、予定が空いている。特に今日、遣らないとならない事はない。と言う訳で事務仕事を少々。これも小一時間で終了。
暇だ。
午後、先週に仮定断面を送った物件の状況について、そのデベロッパーに電話。来週辺りから、設計スタートとの事。
その仕事の依頼が来るか確証もないが、また、変更も覚悟でその建物の仕事を始める事にした。略伏作成、一貫計算プログラムの詳細までの入力。二次部材の計算。資料もなく、想定だけで、仕事を進めているので逆に進みが早い。
これ以上は無駄になるので終了。なかなか、上手い具合に仕事の予定は入らないものだ。
10月20日(木) 「同僚の手伝い」
今日も予定はなし。と言う事で同僚の仕事を手伝う事にした。
と言っても、構造設計の仕事は大人数で出来るものではない。図面の作成を手伝う事にした。部材リストの作成。図面を書くのは好きではないが、暇をしてるより良い。
自分の物件は夕方に意匠事務所とゼネコンにチェック用図面を納品。
10月21日(金) 「新規物件の依頼」
先週、仮定断面を送った物件の設計依頼が来た。それも今すぐ、設計を始めて欲しいとの急な依頼。確認申請は3週間後。
相変わらず、このデベロッパーは無茶な依頼が多い。まあ、自分の予定としては問題ないが、ここは恩を売ろうと思って、多少渋りながら、仕事を請ける。でも、終わるまで休み無しかな。
早速、設計スタート。
このデベロッパーの一つだけ良い所。コストが合えば、設計内容については全く細かいことを言わないので手戻りは少ない。
10月24(月) 「最終打合せ」
今日は、最終打合せで元請ゼネコンに直行。
最終打合せは、ゼネコンの構造担当者も出席。意匠、設備との確認・調整は簡単な図面の修正、追記程度。でも、構造担当者から指摘は多少、計算のやり直しも必要かも。
もっと、早く見てくれよとの思いもある。設計思想の違いもあるが、やはり、その人の顔を立てないとならない。
まあ、修正作業量も考慮して、指摘をしてくれるのでそれほど大きな被害はない。
打合せも終わり、事務所に戻って、最終の修正。夕方には終わる程度。
これを宅ファイル便で最終納品。
まあ、順調に終わった方です。