第271号 グループ法人税制

グループ法人税制

  永嶋税理士事務所通信第193号平成2010年10月号でグループ法人税制について少し書きました。大企業ばかりではなく、案外身近なとこに適用があるかもしれません。
例えば下記のような会社があったとしたら、A社・B社・C社・D社は、グループ法人になります。
親戚の会社と知らぬ間にグループになっているかも分かりません。
会社名 A社 B社 C社 D社
株主 父 私 弟 A会社と私
所有割合 100% 100% 100% 50%50%


 グループ法人税制とは
 ・100%完全支配関係の法人グループ内で、一定の資産の譲渡損益があった場合に繰延べます。
 対象となる資産は、固定資産、土地(土地の上に存する権利を含む)、有価証券、金銭債権および繰延資産であり、売買目的有価証券および譲渡直前の帳簿価額1,000万円未満の資産は除かれます。
 そこには、いろいろな規定がありますが、100%完全支配関係の法人同士は、中小企業であっても必ずこの法律の適用を受けます。ですから親戚の会社同士で、1,000万円以上の資産の譲渡を行うときは、注意が必要です。
 譲渡損益が繰り延べられた資産がその後1回でも譲渡された場合には、たとえ完全支配の関係のある法人への譲渡であっても、最初の譲渡法人において譲渡損益を認識します。必ずしもグループ外への移転まで待つのではなく、最初の譲渡法人においては、2度目の譲渡のときに損益を認識します。


 ・完全支配された子法人株式等に係る受取配当等について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除を適用せず、受取配当等の額の100%が益金不算入になります。
 ・完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金について、その全額を損金不算入とするとともに当該他の内国法人が受けた受贈益についてその全額を益金不算入とします。
 100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合には、譲渡対価の額を譲渡原価の額とみなし、譲渡損益を計上しません。

グループ法人税制と連結納税制度
 グループ法人税制と共通点の多い連結納税制度と比較してみました。
 ・グループの範囲は、いずれも100%完全支配関係の法人グループ
 ・制度の適用は、グループ法人税制は強制適用、連結納税制度は任意
 ・損益通算は、グループ法人税制はできない、連結納税制度は可能
 ・受取配当・寄付金は、いずれも支払側:損金不算入、受取側:益金不算入
 ・譲渡損益調整資産の譲渡は、いずれも対象資産を再譲渡するまで課税を繰延べ
 ・グループ内寄附金は、いずれも支払側:全額損金不算入 受取側:全額益金不算入


 連結納税制度は、任意なのでメリット・デメリットをよく考えて判断が必要です。
 連結納税制度は、損益通算できるので、欠損金があるので連結納税をしようと申告したけど各社黒字化したのでやめようと思っても、一度採用すると簡単にやめることができません。
 黒字化した場合、単体で申告すれば、800万円の軽減税率がそれぞれの会社に適用になりますが、連結納税の場合は1社分800万円だけしか、軽減税率を適用することができません。
 また損金算入額の交際費についても、単体課税であればそれぞれの会社が800万円を限度として損金算入できますが、連結納税の場合は何社あっても、1社分800万円までしか損金算入できません。
 グループ法人税制に該当したくない場合は、100%の株式を社長一族で所有するのではなく、一部を親戚ではない社員や友人が所有すれば、グループ法人税制や連結納税制度の適用外になります。


 

 


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2017年04月01日