第360号 振り返れば30年,遺言のお勧め

振り返れば30年

 顧問先の社長から、「他の税理士事務所とは異なる取り組みを実践するように」とのアドバイスをいただきました。そこで、開業は平成3年7月でしたが、平成6年10月1日に『永嶋税理士事務所通信』の創刊号を発行しました。
令和2年(2020年)6月に、後期高齢者となった私は永嶋税理士事務所を閉鎖し、内藤祐介税理士事務所へ業務を引継ぎました。現在は内藤祐介税理士事務所の業務を手伝いながら、通信の発行も継続しております。
通信の題名を『永嶋税理士通信』に変更し、今月で第360号、30周年記念号を迎えることとなりました。
今後は、不定期に、通信を継続していくつもりですので、宜しくお願いします。

 

遺言のお勧め

旧民法が明治時代から昭和22年5月2日まで施行されていた時代には、家督相続によって財産が相続されていました。家督相続とは、家長(戸主)が隠居や死亡した際、主に長男がすべての財産・権利を相続する制度です。財産や権利を相続すると同時に、家族を扶養する義務も長男に課されました。
昭和22年5月3日から昭和55年12月31日まで、妻が1/3、子供たちが2/3の法定相続割合が民法で制定されました。その後、昭和56年1月1日以降は法定割合が改正され、妻が1/2、子供たちが1/2となりました。
私が初めて相続税の申告を助手として行ったのは、もう40年以上前、昭和のことです。その頃は、家を守るという考え方が広く浸透していたように思います。親は長男にできるだけ多くの資産を残し、その代わりに長男に老後の世話を期待していました。家督相続の意識を持った地主も多かったと考えられますが、法定相続割合が制定されたことで、長男以外の妻や子供たちも相続できるようになりました。
兄弟が平等に相続できるとしても、以前は法定割合での相続は少なかったと思います。しかし、時代が進み、平成・令和となると、法定割合に近い相続が増えているように感じます。子供たち自身が平等であることを認識し、平等に相続したいという意識が強くなってきたのだと思います。
私は、本当の平等は法定割合に限らないと考えます。各家庭の事情に応じて、例えば、両親の老後を誰が看るのかとか、自分たちにとって最適な方法を、親が元気なうちに話し合い、決めておくことが大切です。
父親が亡くなっても母親が存命であれば、子供たちは母親の意見に従うため争いが生じにくいのですが、両親が亡くなり兄弟姉妹だけの相続になると、争いが起こりやすくなります。
相続では、相続人間で遺産分割協議書を作成し、遺産を分ける必要がありますが、近年、この過程で争いが増えていると感じます。そこで、遺言書に最適な相続方法を記しておくことで、争いを避けることができます。遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言などがありますが、公正証書遺言がお勧めです。自筆証書遺言やその他の遺言書は無効になる可能性があるからです。
公正証書遺言は、依頼を受けた公証人がその権限に基づいて作成します。まず、遺言者の希望を公証人が聞き取り、公正証書に記載します。その後、遺言者と2名以上の証人の前で読み上げ、その内容に誤りがないことを確認した後、遺言者が署名・押印して完成します。その際、公証人は、遺言者が判断能力を有し、自らの意思で遺言を行っていることを確認します。
このようにして作成された公正証書遺言は、公証役場で原本が遺言者の死亡後50年間保管されます。作成当日に「正本」と「謄本」が交付され、遺言者本人が持ち帰ります。遺言者が生存中であれば、遺言者の請求により再交付を受けることも可能です。


この通信を書き終えたら、内藤祐介所長から「本日午後7時頃、父内藤幸一が亡くなりました。」と電話がありました。突然のことに驚き、長い間永嶋税理士事務所を支えてくれたことに思いを馳せ、感謝しつつ、心からのご冥福をお祈り申し上げます。天国から長男祐介所長を見守り、応援してください。

 

永嶋税理士通信の内容についてご質問ご意見のある方はご連絡下さい。
過去の永嶋税理士事務所通信をご覧になる場合は、こちらをクリックして下さい。
2024年09月01日