第356号 相続税精算課税

相続税精算課税

 相続税法及び租税特別措置法の一部が改正され、令和6年1月1日から施行されています。
 贈与税の相続時精算課税にかかる基礎控除額が創設されました。暦年課税の基礎控除とは別に、1年間につき110万円が控除されます。受贈者が複数人ある場合は、全員合計で110万円です。各人は贈与額で按分します。
 贈与税の相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者ごとに、1年間に贈与により取得した財産の価額の合計額から、基礎控除額110万円を控除し、特別控除2,500万円の範囲内で、その金額を控除した残額に、20 %の税率を乗じて、贈与税額を算出します。
 基礎控除額110万円は、相続時精算課税を選択した年から毎年控除することができますが、特別控除2,500万円は、特定贈与者の相続開始前までの合計限度額です。
 特定贈与者は、60歳以上の両親または祖父母、受贈者は、20歳以上の子供または孫に限られています。(贈与年の1月1日時点の年齢)
 特定贈与者の相続が開始したとき、相続時精算課税を選択した受贈者は、特定贈与者から取得した贈与財産の贈与時の価額から、基礎控除額を控除した残額を、その特定贈与者の相続財産に加算します。
 相続時精算課税は、贈与の時、仮に税金を計算して納付し、名称のとおり、相続開始の時に精算します。
 納付した贈与税は控除し、贈与税の計算で控除した特別控除2,500万円は、相続税の計算では控除できません。相続時精算課税の基礎控除額(本年創設)のみ控除できます。
 例えば同居している長男に2,500万円の自宅の土地建物を贈与したい場合は、無税で贈与できます。
 しかし、特定贈与者である親の相続の時は、相続人の長男は、2,500万円で贈与された自宅を、その他の資産に加算して相続税を計算します。その時、土地や建物が値上がり・値下がりしていても、贈与されたときの価額で計算します。その上、相続税の計算上、同居している長男であっても、小規模宅地の減額はできません。


どういう人が相続時精算課税を選択するのがよいのでしょうか?
相続時精算課税を選択する理由
① 特定贈与者が決めた人に財産を上げたい場合
②  贈与された不動産や有価証券等資産が収益を生む場合

   (反対に下がるリスクあり)
③  贈与された不動産や有価証券等資産の価値が上がると予想される場合

    (反対に下がるリスクあり)
④  特定贈与者の資産総額が、特定贈与者の相続税の基礎控除額以内の場合


 相続時精算課税の基礎控除額110万円は加算しないので、毎年110万円の贈与をして、令和13年以降に特定贈与者が亡くなった場合は、暦年課税より相続時精算課税を選択した方が、受贈者1人について、770万円多く免税になります。そのため、今後相続時精算課税を選択して毎年110万円の贈与をする方が増えるかもしれません。
 相続時精算課税を選択しようとする場合は、贈与税の申告期限までに【相続時精算課税選択届出書】を受贈者の所轄税務署長に提出します。


相続時精算課税を選択しない理由
⓵ 相続時精算課税は、実質贈与ではない
②  小規模宅地の減額はできない
③  相続時精算課税選択後、暦年課税が適用できない
④  不動産登記に係る登録免許税は相続の方が低い
⑤  不動産取得税は、相続にはかからない。


 相続時精算課税と暦年課税、どちらが有利かは前提条件が違えばどちらとも言えません。相続時精算課税をお考えの方は、内藤祐介税理士事務所まで

 

 

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2024年05月01日