別荘の設計
2013年2月25日
別荘は自宅と気候が異なることもあり、間取りや設計に色々な工夫が必要です。 特に週末別荘を通年で利用するためには、従来の別荘のパターンではカバーしきれません。 2度の別荘ライフで分かった、ノウハウでアドバイスします。
間取り
吹抜けのリビング
開放感を得るために、吹抜けのリビングを希望される方が多いと思います。 しかし吹抜けのリビングでは熱気が上がるので、夏涼しいですが、冬寒くなります。 冬も利用する場合は、シーリング ファンと床暖房の設置をお勧めします。
吹き抜けの照明には、昇降機を付けると便利でしたが、LED照明は寿命が長いので 今後は不要かもしれません。
ロフトにポールやロープ、天井からハンモックなどの遊び心も楽しいです。 天窓を付けると明るくなります。大きな開口部
大きな開口部を望む場合は、在来工法が良いです。空間の共有
玄関から個室に行く構造を避け、リビングから行くことで、空間を共有できます。 但し、リビングにTVを置くので、どの部屋もうるさくなります。部屋
和室はくつろげますが、畳が湿度を吸いますので、高湿の場所には向いていません。 また、定年後の定住には洋間にベッドが楽です。収納
別荘の施行例では、収納が少なくして、部屋を大きくすることが多い様です。 しかし、不在期間が長いので、掃除の手間を省くためにも、収納を大きくしましょう。 ゴルフ道具や、スキー、掃除機などの仕舞い場所として、クローゼットも便利です。
押入れは、天袋の有無で収納能力は大きく変わります。 但し、奥行が深いので、使い方が難しいです。
傾斜地の場合は基礎に大きな収納庫を作ることができますが、 道路下の別荘の場合、荷物の出し入れが不便です。玄関
高原の冬は寒いので、玄関と別荘内部を仕切るか、玄関の外に風除け室を付けます。広いテラス
広い庭は手入れが大変なので、広いテラスをお勧めします。 但し、雨ざらしになるので、雨ざらしに強い木材を使うか、コンクリートのテラスにウッドパネルが維持が楽です。駐車スペース
屋根続きに駐車スペースをつくると雨の日に便利で、バーベキューもできます。 また、樹液で車が汚れることも防げます。 但し、降雪地域で、道路と駐車スペースが離れていると、除雪が必要です。薪ストーブ
薪ストーブは、別荘の最高のアクセサリーであり、実用的な道具でもあります。コンセントやスイッチの位置
扉の開く向きは意識しますが、コンセントやスイッチの位置を建築家にお任せにして、 後で不便を感じることが多いので、図面で確認してください。『拙宅のスイッチとコンセント』
駐車場の照明スイッチは道路を向いて左側にあります。きっと建築家は左ハンドル車ユーザなのだと思います。
キッチンにコンセントが1つしかないので、食洗機やフードプロセッサはタコ足です。 きっと電動調理器具を知らないのだと思います。
どう考えても、箪笥を置く場所にコンセントがあったので、コンセント付きの箪笥にしました。
『別荘のスイッチとコンセント』TVに外が映りこまない様に置く場所を決め、コンセントの位置も決定します。 インターネットの引込み口は、出来るだけ家の中心で、TVの傍が良いです。
2階の廊下にコンセントが無く、部屋のコンセントも部屋の奥なので、 廊下の掃除の時に不便です。きっと掃除嫌いなのでしょう。
部屋の照明のSWは、部屋に入ってすぐが良いのですが、押入れや引き戸の関係で部屋の外にあります。 1つのSWボックスに部屋の照明と廊下の照明のSWが入っていますが、 上下が部屋毎にバラバラです。家具
不在期間が長いので、掃除を楽にするため、家具は極力少なくします。 家族構成を考え、子供が大きくなった時に団らんに参加し易いように、家族全員が座れる物をお勧めします。 お掃除ロボットが下に入れる高さのある家具も便利だと思います。 食卓と椅子、テーブルとソファーは歩くスペースも考えます。 お洒落な家具は大きいので、家具屋さんで大きさを確認して、間取りを考えます。
屋根
瓦はメンテナンスが要りませんが、重いため耐震上の問題があります。
瓦以外の素材には定期的な補修が必要です。 ガリバリウム鋼板は丈夫で長持ちしますが、鉄のため海辺では使えません。
急勾配にし、雪が自然に落ちる様にします。 玄関、駐車場、テラスには雪が落ちない様に、屋根の形状を考えます。 テラスに屋根がないと明るく、眺望が確保できますが、雨の日にテラスが使えません。
雨どいは落ち葉が詰まったり、雪で壊れたりするので、別荘では付けない事が多いです。 代わりに、雨水が落ちる場所に砂利をひく等の工夫が必要です。 また、雨水が隣接地や道路に流れでない様に、雨水升を設置します。 但し、別荘の湿度が高くならない様に、雨水升は別荘から離します。傾斜地の場合、別荘より下に設置した方が良いです。基礎
斜面は平地に比べ基礎の費用が高くなります。 切り土は、基礎の費用は安くなりますが、湿度が高くなります。 盛り土は地盤が安定するまでは、別荘を建てられません。
傾斜地で道路を造成する際に山側を削り、谷側を盛土にするので、谷側は地盤が軟らいです。 そのため道路面と同じ高さの別荘にする場合、杭を深く打つ事が必要です。
点検口から全ての床下に行ける様に、人道口を付けるのが一般的でしたが、 耐震強度が低下するので、最近はあまり付けません。
また、湿度対策や先のメンテナンスを考えると、予算の範囲で少しでも高くした方が良いです。 積雪エリアも高くした方が良いです。点検口
メンテナンスのため、点検口から全ての床下に行ける様にします。 床下点検口は、押入れの中、畳の下などに付けます。 寒冷地では凍結するので、床下収納を設置しません。また、点検口に断熱を付けた方が良いです。 傾斜地の床下点検口は、斜面の下側に付けます。床下換気口
床下換気口を設置して、床下の湿気を排出します。換気口から虫の侵入を防ぐためのネットをつけます。 最近の土台通気タイプは、基礎と土台の間にパッキンを入れ、全周から換気します。 その為、冬の寒さが入るので、床下の断熱が重要です。小屋裏
夏の小屋裏(屋根と天井の間)は40〜60℃くらいになり、天井が熱くなり、部屋も暑くなります。 小屋裏に換気扇を付ける場合は動作音が煩わしいので、玄関やテラスを避けて設置してください。 タイマーを付けて、夜間はOffにすると、動作音が気になりません。
冬の夜は外気温近くまで気温が下がります。例えば室内20℃、小屋裏が0℃の場合、 断熱が不十分だと結露し、小屋裏がカビますので、断熱に注意します。内壁
板壁は、年を経ると風合いがでます。但し、たわむので隙間風の原因になります。
最近は壁紙の耐湿性が向上したので、壁紙も使えますが、シックハウス対策で珪藻土の壁が流行です。浴室
大きな窓から景色が素晴らしい浴室がありますが、入浴中は湯気で曇ってよく見えません。 夜は外が暗くて不気味な上、外から見えるので、女性には不人気です。 また、大きな窓は冷えが伝わるので、風呂場を暖かくする工夫が必要です。
露天風呂は落ち葉などの清掃が大変なので、浴室から出れるウッドデッキをお勧めします。寒冷地仕様
断熱
色々な工法があるので、工務店と相談しましょう。- 内張り断熱
柱と柱の間の外壁と内壁の間にグラスウールを挟む従来の工法。 グラスウールの厚さで断熱効果が変わります。 グラスウールを隙間無く敷設し、経年変化でずれない施工が必要です。 - 充填断熱
断熱材を吹き付ける工法です。 鉄骨構造では、鉄骨に熱が逃げるため使えません。 木造でも筋違部分の断熱性能が落ちるので、施工にノウハウが必要です。 - 外張り断熱
柱の外側に断熱パネルを張る工法。隙間が無いので高気密、高断熱が可能。 但し、寒冷地では見合った断熱性能の部材を使う必要があります。
- 内張り断熱
窓
ペアガラスは基本です。冷え込みの厳しい場所ではサッシが結露するので、樹脂サッシや、木製サッシを使います。水道
凍結防止栓と凍結防止ヒーターは必至です。
水抜き不要工法もあり、室温が0℃以下にならないので、冬に訪れた際に寒い思いをしません。 但し、それぞれの工法に一長一短があるので、ネットで比較検討しましょう。風呂釜
凍結を防止するため、風呂釜の水を循環させるモーターが入っています。 また、内部の水を抜くための水抜き栓が付いていています。トイレ
- タンク
瀬戸のタンク内にポリタンクが入っています。 - トラップ
トラップの凍結を防ぐため、ヒーターが入っています。 - 流動バルブ
常に水を流すことで凍結を防ぎます。マイコンで定期的に少量の水を流す機種もあります。 - 水抜き栓
ウォシュレットの水を抜くための栓が付いていています。
- タンク
防犯
貴重品の有無は外からは分かりません。 例え貴重品を置いてなくても、不快な思いをしないため、雨戸やシャッター、面格子を付けましょう。
また、森の中の別荘の場合、木や枝が折れて、窓ガラスを壊すこともあるので、雨戸やシャッターは必要です。 窓も雨戸も2重鍵にします。塩害対策
⇒塩害対策白蟻対策
新築直後は木材に防腐処理がしてあるので不要ですが、その後は5年毎に防蟻処理が必要です。 但し、標高の高い高原では、白蟻は居ませんので、不要です。
良くない業者も居ますので、家を建てた工務店か、ホームセンター、農協などから紹介してもらいます。
リゾートマンションでも、プランツと共に白蟻を持ち込み、建具や家具に被害が出ることがあります。オール電化
別荘は滞在期間が短いので、光熱費に占める基本料金が高いです。 熱源を統一することで、個別に支払う基本料金を減らすことができます。 別荘地は個別プロパンが多いため、電気に統一する場合が多いと思いますが、 深夜電力の割引は原子力発電が前提のため、今後の動向確認が必要です。地盤調査
地下の岩などの埋蔵物で、別荘を建築できない場合があるので、大きな別荘を建てる場合は、地盤調査をした方が良いです。 但し、100万円程度かかります。