愛のばかやろう×2 《1》

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「あれ・・・・・?」
目が覚めると、そこは自分の部屋ではなかった。
なぜなら天井が違っていたから。
「?」
昨日の記憶を思い出そうとして・・・・まったく浮かんでこない事に驚いた。
「なん、だぁ・・・?」
ともかく自分の居場所はどこなんだ、と顔をなにげなく横に向けて目に入った光景に、危うく五代は叫びそうになってしまっ た。
「・・・・・!!」
あわてて自分の口を両手で押さえると、自分の早く脈打つ心臓の音が耳元で聞こえるような気がした。
――― なんで、なんで一条さんがいんだよ―――――!!!!!
未確認を倒す、という共通の目的の元に、まるで水と油の様な二人が互いに歩み寄っていくようになって、実は相手の本 質的な精神が自分とよく似ていることに気がついた。
そうなると相手が理解しやすくなった。
相手の行動が、考えが読めるようになり、理解しあう。
今では互いにいろんな話をするようになって、いい仲間になったと思っている。
その過程で一条に紹介された椿も、多少変わっているがいい友人になれたと思っている。
そうだ、昨日は三人で飲んだんだっけ・・・・・一条さんのマンションで。
少し、記憶が戻ったことで、五代に余裕が出た。
そう、目の前の一条を眺められるぐらいには。
しかし。
かといって、一つのベットで寝られるほど打ち解けたっけ?
五代の素朴な疑問であったが、今は一条の寝顔を堪能する事に決めた。
何故なら
(俺、綺麗なモノ、大好きなんだよねぇ〜〜・・・・・・)
五代の鼻先10センチ先にある一条の寝顔は、そりゃあもう素晴らしかった。
すっ・・・と通った鼻梁、きりっとした眉、形の良い薄い唇、アイラインを引いたようにびっしりと長い睫毛の生えた、今は閉じ ている瞳。
何処を取っても素晴らしくって。
「ほんと、顔だけなら好みだよね・・・・・・・」
なんて、溜息とともに呟いて、我に返った。
いつまでもこんな事をしている場合ではない。
「ともかく起きないと・・・・」
と身体を起こしかけたとき、自分を襲った予想だにしなかった痛みに硬直する。
一箇所は頭、コレは酒の飲みすぎでなる、いわゆる『二日酔い』というものの筈だ。
が、自分の下半身を襲った、この鈍い鈍痛のようなものは。
覚えが、まるっきりない、とはいえなくもない。
「だって、ほら、俺って『冒険野郎』だし、っておいおい」
などと自分でぼけて、突っ込みを入れてみたりする。
が、実はすごい動揺したりしていた。
そこの、下半身を襲う痛みに予想はつく――― けっして自慢にはならないけど、本当にいろんな冒険をしちゃっているか ら ――――が考えたくはなかった。
もしかしてもしかして。
やっちゃった?
「しかも、俺がされちゃった・・・・・?」
沈黙
「うっそだろう〜〜〜・・・・・・」
力ない呟きが落ちた。



が、すぐに五代は立ち直った。
だてに冒険野郎をしていたわけではない。
ともかく、一条が目を覚ます前に帰ってしまおう、と決めた。
なんか、そんな予感がしたのだ。
そのほうが、絶対、自分のためだと。
とりあえず身支度・・・・・と思って、ベットから降りようとした五代は、ヘナヘナと崩れ落ちた。
下半身に、というより股関節が痺れたようなっていて力が入らない。
つまり、これはかなり大股を開いちゃっていたということだな、などと考えて五代は真っ赤になった。
こんな事をしている場合ではない。
ともかく壁際まで這っていって、何とか立ち上がろうとした。
ようは下半身に力をいれたわけだが、
「うっ!?」
その瞬間、身体の奥深くで、トロリ・・・・・、と何かが動く気配がした。
「あ・・・・っ・・・・・!!」
ゆっくりと降りてくる感覚。
それは、もう自分では止め様がなくって。
―――――――――――!!!!!
五代の声にならない悲鳴があがる。全身が震えた瞬間、それはゆっくりと五代の中から外へと流れ出した。
身体に残る、大量な、一条の愛の痕跡が。
昨夜の記憶はないけれど、一条が己の中に放出したときのなんともいえない心地よさを身体が思い出してしまったらしい。
ブルリ、と震え、腰から力が抜けていく。
そのままへたり込みそうになる自分を叱咤する。
はやく帰らなければならないのに!!
しかし、このままという訳にもいくまい。
なんとか風呂場に転がり込み後始末をした。
そっと風呂場から出てくると、どうやら一条はまだ目を覚ましてないらしい。
「よかった・・・・・」
手早く身支度を整え ――――― それでも一条は目を覚まさなかったが ――――― ドアのカギを開け、音も立てずに 出て行ったのだった。
マンションの駐車場にはTRCSが置いてあった。
昨日、その横においてあった椿の真っ赤なポルシェがない。
「何時、帰ったんだろう?」
覚えてないからしょうがないが、まさか椿の前ではそういった行為に及ぶまい(と五代は思っているが)。
そのとき、一緒に帰っていればこんな事には・・・・とおもっても後の祭り。
TRCSに跨ると、腰に響く振動をこらえつつ朝早い靄のなか、ポレポレへとバイクを走らせたのだった。


その頃


一条が目を覚ましたのは、丁度五代がドアから出た瞬間だった。
それまでピクリともしなかったのに、まるで五代の気配が消えた瞬間に覚醒した。
こちらもやっぱり寝起きは弱いらしい。
今の状態も昨日の夜の事もなんにもわかっていなかった。
「・・・・・・・」
むっくりと上半身を起すと、ポリポリと頭を掻きながら辺りを見回す。
「・・・・・?・・・・・」
昨日は、どうしたんだっけ?
何時、俺は寝たんだ?
なんで、俺は裸で寝てるんだ?
加えてなんとはなしに感じる違和感。
誰か隣で、寝ていなかったか?
しかも自分はそれを歓迎していたらしい。
いままで多数の経験があったが、一条が(職業柄もあってか)一つのベットに他人と一緒に眠った事はない。
寝たことはあるけど。
オイオイ、と自分で突っ込んで。
だからちょっと不思議に思う。
いくら酔っていたからって、そこまで心を許すような相手がいたとは思えないからだ。
疑問に思うことは多数あったが、ともかく起きようとベットからおりて。
「・・・・ん?」
自分がかなりスッキリ、していることに気が付いた。
そう、スッキリとして―――――― 腰が軽い。
一条も男だから、この状態には覚えがある。
溜まっていたものを出した時だ。
「・・・・・・やったのか?」
ぼんやりと呟いてみる。
コレは間違いないだろう。
自分では意識していなかったが、いつにない爽快感はかなり自分がたまっていたんだな、などと思わせるもので。
ふと、思い当たることがありベット横のごみ箱を覗き込むと。
「・・・・・・生、だな」
ごみ一つ落ちていないということは、もちろん使っていないという事で。
「ふむ」
段々覚醒してきたようだ。
用心深い自分がゴムを使わなかったという事は、そんなものを使わなくていい相手で、しかも使いたくなかったという事だ。
そんな相手?・・・・・と考えつつリビングに入って一気に覚醒した。
コップや酒など残っていて、昨日明らかに飲んだ後があって。
そうだ、昨日は五代達と飲んだ。
だから昨日は五代達しかいなかった。
五代と椿と。
――――― 五代、と?
椿とは、ありえない。
なぜなら二人はあまりにも似ているし、そんな関係になるのならとっくの昔になっていた。
それに自分がヤられる筈が無い。
しかも五代が相手だとしたら間違いなくヤってしまったのだろう。
「大丈夫なのか? あいつ」
二人の今後を心配しての言葉ではない。
コレだけスッキリしているということは、かなり放ったということだ。
しかも、シーツの汚れが殆どないから全部中にだろう。
それにこの記憶が思い出せない状態っていうことは、終わった後もおそらくそのままだった筈で。
「・・・・・とりあえず、シャワーだな」

そういった一条の顔が幸せそうに微笑んでいたことに本人は気付いていなかった。



数日後

椿の診察室に一条が訪れていた。
一条に背中を向けて何か書き込んでいた椿だったが終わったのかペンをおき、一条に向かって言い放った。
「そりゃあ、お前、やったんだろうさ」
「やっぱり・・・・・」
互いに表情変えずに言い合う。
「そうは思ったんだが、何分記憶が戻らなくて」
「・・・おいおい、珍しいじゃねぇかよ。ザルのお前がそうなるなんてな」
「うむ」
「よっぽど良かったんじゃねぇの?」
カラカラと椿が笑う。
「俺もそう思う。なんせ、生だから・・・・・・」
「お前が?!」
椿、ちょっとビックリ、ていう感じだ。
あの用心深い一条が?
「・・・・そんな面白いことになってたなんて・・・・」
帰るんじゃなかった。
伊達に似た者同士で長い付き合いをしてきたわけではない。
そんな心の呟きが聞こえたのか、
「いや、帰ってなくっても同じことしてたぞ、俺は」
と一条が言い放った。
「じゃ、その場合は参加OK?」
「駄目だ」
一言の元に却下されて椿は面白そうな顔をする。
あの、一条が誰かに御執心?
おもしろい。
「お前が誰かに拘るとはねぇ・・・・」
何事も楽しんで経験したい自分とは違って『来る者拒まず去るもの追わず』の一条だったので、女が途切れたことはな かったが男の経験はなかったはずなのに。
「で、肝心の五代は平気だったのかよ」
お前のいつもの調子で犯られて無事だったのだろうか?
どっかでクウガだし平気なのかも、と思いつつ念のために聞いてみると一条は眉間に皺を寄せた。
「・・・・なんだ?」
「・・・・五代なぁ、俺が思うに、初めてじゃないな」
「・・・・・・は?」
頭に入ってきた言葉を理解できず、思わず聞き返してしまった。
「もし、初めてだったら・・・・・きっと動けなくなっている筈なんだ」
「・・・・だろうなぁ」
「それぐらいの事、してる筈なんだが・・・・・」
なのに一条が起きたときにはもういなかった。
という事は、
「見かけによらず本当の『冒険野郎』なんだな」
感心したように、人は見かけによらないもんだと呟くと一条に睨まれた。
肩をすくめながら椿は心の中で呟いた。
―――いやはや、まったく面白い。
一条が気付いているかどうか知らないが、五代に対する独占欲を持ち始めたということだ。
五代の相手だった男に嫉妬している。
あの一条が、ねぇ。人間らしくなったもんだ。
いつも、どこか冷めていた男にこんな人間らしい生々しい部分があったなんて、大歓迎だ。
こうでなくっちゃ人生面白くないでしょう。
自分の娯楽のためにも、きっちり協力いたしましょう。
「で?」
こんどはちゃんと一条に向かいあって話を聞く。
そんな心情の変化をきっちり理解した上で一条は椿を巻き込んでいく。
なによりも、自分側の協力者は必要だ。
「今日五代が来るだろう」
「ああ、検診の日だからな」
「・・・・実はあれから会ってない」
「なんで」
「・・・・まあ、色々と」
「避けられてるのか」
「・・・・・・・・」
「ま、避けてるって事が、なんかあったっていう証拠も同じなんだがな」
「それはそうだが、このままじゃ、なあなあで終ってしまうかもしれないだろう」
普通はそうだよな、と椿は思う。
同じ男に犯られたなんて忘れたいだろう。
「ここは一発、俺のモンだってわからせておかないと」
「・・・・・いつからお前のモンになったんだよ」
「俺が決めた時からだが?」
「・・・・・・」
ああ、そうだ、こいつはこういう奴だった。
天上天我、唯我独尊。超俺様。俺が法律って感じ。
ま、五代には狼に噛まれたと思ってあきらめてもらいましょう。
それが俺達の平和のためでもあるし。
「ま、いい。協力はするさ」
「・・・・」
二人は顔を見合わせた笑ったりなんかして。
ブラック一条&デビル椿。
二人が手を組んだことを知らず、なにも知らない五代はすぐそこまで近づいていた。






はははは、『愛のばかやろう』別バージョンということで。
全体的にギャグ、さらに鬼畜度増量でいきたいと思います。
いやあ、メール配信て怖いわぁ・・・・・。限度がなくなりそう・・・・・。
だって、すでにメール配信を決めている話があってりするんですもの。   BY樹


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