続き

10月3日(月)の続き

 あれこれ細部にわたって聞いてもまともに答えてくれるか判らないので、二つに絞った。

 一つは単純で簡単なもの。合併によって災害時の対策に想定される不具合について、どう考えるか。
 以前、7月26日にこんな事を書いた(まずこのページ7月26日(火)の続きをご覧ください。)。

 そこでは、合併によって広くなり過ぎた自治体が、周辺地域の町の災害状況を把握できなかった実例を紹介した。合併後の藤野町で同様な問題は発生しないか。

 合併推進派の団体は、「藤野町単独では災害が発生した時に対処できない。相模原市のような大きな町に吸収された方が有利だ。」と言っていたが、町で対処しきれないような甚大な災害が発生した時も、全てを町独自で、県や国の助力もなく対処しなければならないという発想が、そもそもおかしい。これは不安を煽るだけで論外の理屈だろう。

 やはり合併した場合、『その土地をよく知り尽している人間が、現場で災害の様子を把握して、現場で対策を講じて、現場で指揮をとって行動する』自由度と迅速さでは、後退を余儀無くされるだろう。合併によるデメリットの一つと言っていい。
 この問題をどう捉え、藤野町の住民の安全を確保するか。
『藤野町の事務所と相模原市の市役所との間で、緊密な情報の連携によって対処し・・・』
といった程度の説明では不安が残る。上記の失敗した実例から、何を学ぶのか?

 もう一つは、もうちょっと深刻な問題(前述の問題も深刻だけど)。

 合併によって、果たして藤野町は本当に豊かになるのか?
 率直に言えば、合併後の藤野町に使われるはずの予算の規模は、合併しなかった場合に比較して、多くなるのか少なくなるのか。

 藤野町の予算は、おおまかに言えば住民からの税金と国からの補助金(地方交付税)で成り立っている。
 地方交付税をもらう事は、決して恥ではない事は、以前ここで書いた。
 藤野町は今、10あった小学校を3つに統廃合しようとしている。それでも、相模原市の基準からすれば、人口1万人の地域に小学校が3つというのは多すぎると思われるかもしれない。しかし、山間地であること、都市に比べれば人口密度が小さい事を考えれば、多少、余計にお金がかかっても、3つ以下にするのは酷だと私は思う。
 その土地の条件によって、税金が余計にかかる場所というのがある。相模原市のような都市近郊の町は、その点で有利だ。だから相模原市は地方交付税をもらわなくてもすむ。

 しかし藤野町は違う。上記の小学校の例以外にも、相模原市の基準では藤野町住民への行政サービスが保障できない例も出てくると思う。町営で行っているバスも、果たして今後も維持されるのかどうか。
 つまり、今までは藤野町は国から補助金をもらう事によって、住民への行政サービスを維持して来たが、合併後は、相模原市が、それまでの国に代わって、山間地の町に対して、都市部よりも手厚い補助をしていく役目を負う事になる。
 果たして相模原市にそれだけの覚悟があるのだろうか。何しろ、地方交付税は削減傾向にあるとはいえ、合併した方が大幅に減らされるのだ。今まで藤野町や津久井群の町が国からもらっていた地方交付税が相模原市に降りて行く事になった場合、相模原市はちゃんと、それまで国がして来てくれた役目を、周辺山間地の町に対して負ってくれるのだろうか。

 合併推進派は、相模原市と合併した方が、相模原市の手厚い福祉サービスの恩恵に浴することができると言ってきた。と言う事は、合併した方が、藤野町に投下される予算規模は、合併する以前よりも増えると言う事だ。

 ここは一つ、合併した場合と、合併しなかった場合とで比較できるような、藤野町に使われる予算規模の数値を出してほしい。合併推進派が言うように、相模原市と合併した方が、
藤野町では受けられなかった手当(子育て・高齢者・障害者手当など)やサービスも受けることができます。相模原市自体が、藤野町に比べ高いレベルのサービスを提供しており・・・』
『最低でも現行のままの引き継ぎを目指し、さらに全ての面で現在の藤野町とは比べものにならない質の高いサービスも受けられます。』
『合併後には、現在の役場の機能をあらかた引き継ぐ形で総合事務所となり、私たちが思っているほどの職員の減少はありません。
合併推進派のチラシより
このような未来を保障するものであるのなら、今までの国からの補助金と町民の税金でまかなってきた予算規模よりも、藤野町に投下される予算規模は確実に増えるはずだ。

 町長自身が選挙の時にチラシでこう主張した。
「推測」で合併を否定し、「推測」で単独でもやっていけるとなぜ言えるのでしょうか?』(このチラシ)

 これは論理ではない。さかさまにも使えるからだ。

「推測」単独を否定し、「推測」合併でもやっていけるとなぜ言えるのでしょうか?』
 私も「推測」はイヤだ。町長に就任してだいぶ経った事だし、そろそろ町長には「推測」ではない、合併した場合としない場合の比較を示してほしい。


余談

 根拠のない情報が流され、その場の雰囲気ばかりで物事が決まっていく現象がある。数値による検証もなく、事後の確認もなく物事が決まって行く。

 合併しないと藤野町は広域行政組合解散後には自力でゴミ処理をしなければならなくなり、それができない藤野町はゴミ処理で破局を迎える、という噂もずいぶん流れた。まあ、このチラシにもこんな事が書いてあったが。

『6月22日現在の相模原市の見解:
「藤野町が単独を選択するならば、ゴミの処理は藤野町で勝手にやってくれ!」
という姿勢をくずしておりません。住民が今よりも、かなり多額のお金を出し続け、それでも週一回程度しかゴミ収集車が来ない。まさに、危機的状況と言わざるをえません。』

 結局、この9月でゴミ処理を津久井群4町共同で行っている広域行政組合は、解散協議が調い、財産処分も含め、現在の広域行政組合への負担金算定の方法とほぼ同じ方法で計算された金額で、相模原市へ委託する方向へ向かうそうだ。
 これは、合併に反対している町長が粘っている城山町でも同じ事だ。

 つまり、相模原市と合併しようとすまいと、津久井群のゴミ処理と相模原市のゴミ処理は、始めから統合する方針だったのだ。この結果は、『合併しないと藤野町のゴミ処理はできなくなる』という主張には、根拠がなかった事になる。
 あのチラシを配った団体は、この結果をどう説明するのだろう。

 よく、「時代の流れだから合併は仕方がない」と言う人がいるが、確かに合併するだけの必然性のある町もあるだろう。
 問題は、藤野町にその必然性があるかどうかだ。
 私には、単独で残る必然性の方が、まだまだ強いと感じる。
 人口1万の山間地の町。これは決して小さくはない。自主性を売り渡すことが、果たして町民の幸福に繋がるのかどうか。