げっちゅう☆3の中





一条薫は、ものすご〜く不機嫌だった。
ただし、彼は大人(?)なので、はたから見る分には全然わからなかったりするけど判る人にはわかってしまったりするの だ。
彼のオーラが語っている。
"よるな、触るな、近寄るな、逆らう奴はぶっ飛ばす"・・・・な〜んて痛いオーラが。
しかも身体は未確認にバージョンアップ済み。
無敵の未確認刑事("みかくにんでか"って呼んでねv)だったりする。
・・・・おかげで東京の犯罪者検挙率は過去最高の数字が出たとか出ないとか。



本当はすぐにも五代の後を追いたかった。
何処に言ったかなんてすぐにわかる。
警察の力を舐めちゃいけない。
移動の際に公共物を移動に使用しているなら簡単に足取りをつかめるのだ.
北海道にいるのはすぐにわかったが、ただ問題はその後だ。
その後の足取りがつかめないということは五代がヒッチハイクかなんかで移動しているという事だが、そんなものは現地に 行けばどうにかなるはずだったが。
時期が悪かった。
海外のお偉いさんが日本にきてしまったのだ。
要人警護という仕事が一条の身に降りかかったのである。
日本に大きな影響をもたらす国のお偉いさんの警護。
だが、一条が本来なすべき仕事ではないのに何故その面子に入ったのか。
それは、一条が未確認と戦っていたことと、またその見栄えのする外見のせいだった。
そんな理由でメンバーに組み込まれたことを知った時には、さすがの一条も本気でブチ切れたぐらいだ。
一条は刑事である自分の仕事に誇りをもっていたからこそ、そんな理由で時間を拘束されるのは耐え切れなかった。
今にも振り切って五代を探しに行きたかったのに、松倉からの直々の頼みではいやとも言えず、だがその松倉が何か事 件が起きた時にはそちらを最優先にする、という条件をつけてくれたのでなんとかもちはした。
もうそりゃあどんな事件でも一条が出向き片っ端から潰しまくったのである。


五代は五代、一条は一条で、どんなに身体や心を重ねても一つにはなれないことを知っている。
けれど、五代は自分の物と決めていたから。
冒険に出てしまったことをとやかく言うつもりは無い。
ただ、今の状況が辛いだけなのだ。
五代が急にいなくなってしまった。
一条にとっては不意打ちも同然な形で。
はっきりいって、
「・・・・・・・欲求不満だ・・・・・・」
と呟いた一条の隣から桜井がザザザァッ!と飛び退った。
ここは、真昼間の警視庁署内。
捜査室の机で書類を作成しているはずなのに、なぜかとんでもない言葉を聞いてしまったような。
「あ、あの・・・・一条さん?」
「・・・・」
言葉もなく桜井の方へとふり向いた一条のその目があんまりなものだったので。
(きゃああああああああ!!!)
思わずムンクの叫びになってしまった桜井であった。


誤解してはいけない。
一条が欲求不満になるのは五代に対してだけである。
他の人間ははっきり言ってしまえば、一条にとっては(一部を除けば)有象無象の存在であるから、五代に出会うまでは 適当に周りから選んでは欲求解消をしていた。
セックスなんて、一条にとっては溜まったものを吐き出す手段にしか過ぎなかったから、顔や身体なんてはっきり言ってど うでもよかったのだけど、一条は五代に出会って今までの自分が間違っていたことを知った。
自分の愛した人間に愛されてする交わりは。
一条に目の眩むような快楽を教えてくれた。
何度味わっても飽きる事のない底のない快楽に一条はどっぷり浸って抜けられなくなっていた。
多分中毒と同じ。
始めてといっていい程幸せな中毒を知ってしまった今、他の者では変わりになんかならず一条は禁断症状に陥ってた自 分に気付いていたりする。
毎晩、あたりまえのように手の中にあって、思う存分味わっていたものを急に取り上げられてしまってもうやるせないという かなんというか、こう言い表せないモヤモヤしたものが五代が冒険に行ってしまってから一条の胸を覆い尽くしていて。
夜も段々眠れないぐらいになってきていて、一条はもうぐっつぐつに煮詰まっていたりしたから。
(・・・・・帰ってきたら犯りまくってやる・・・・・)
などと、恐ろしいことを表情一つ変えずに考えていたりした。

その時、未確認対策本部及び関係者一同にかかった会議出席による長野出張。
こうして舞台は長野に移った。



椿に放り出されてから、五代は何かふに落ちないものを感じながらも仕事は続けていた。
さらに一階下に下りたときのことだった。
(・・・・控え室?)
ちょっとこじんまりした部屋に椅子がいくつか置いてある。
灰皿と飲み物が置いてあって、中に若い男が一人立っていた。
(ま、いいや)
掃除を始める。
軽く水ぶきしてから洗剤を吹き付ける。
そのとき中の男が五代のほうを振り向いて・・・・・ダッシュで窓まで走ってきた。
ダン!ダン!
「わっ!?」
内側から窓を叩かれて手にしていた道具を落としそうになる。
何事と眼を見張ってみれば、部屋の中の男が嬉しそうに自分を見ている。
(・・・・誰、だっけ。知り合い?)
記憶を辿っても心当たりの人物は浮かばない。
だが部屋の男はなにやら嬉しそうに五代を見て背広のうちポケットから、デジカメを取り出した。
『なんかポーズとってくださいよv』
「はあ?」
『ね、ね、早く』
そんな事いわれても何がなんだかわからない自分を置いて男は妙に嬉しそうにデジカメを取り捲っている。
(窓拭きがそんなに珍しいのかな?)


違います。
彼の名は竹田 浩一。
杉田、桜井から"歩く爆弾男"と呼ばれ密かに恐れられている男であった。
五代は面識はなかったが、彼は五代のことをよく知っていた。
しかし、何故ここに彼がいるのか?
例の会議に議事録作成のために呼ばれていたりする。
なんのかんのといいつつ彼は優秀な男であったし、あの一条を恐れない貴重な人材であったのでココまで連れて来られ ていたりした。


やがてポーズをとってくれない五代にじれたのか、男が窓を押し開けた。
「五代さん、なんかポーズとってくださいよ」
「はあ、なんで俺のこと知って・・・・」
「ま、いいから、いいから」
なんだか嫌な予感パート2。
「・・・・・」
「五代さん? ・・・・あ、そうか!」
黙っている五代になにを思ったのか、部屋に置いてあるカバンまで戻りなにかごそごそしてまた戻ってきた。
「いやあ、やっぱりモデルをしていただくんだからそれなりにお礼をしなきゃいけませんよね」
「な!お礼って何を・・・・・・ぶっ!!!!」
取り出されたのは一枚の写真。
それを見た途端、思わず手にしていた道具を取り落としそうになってしまった。
「ななななななんですか!!!!!」
それは遊園地の写真で。
「! ま、まさか・・・・・・警察の・・・・・!?」
「はい、一条さんには常日頃お世話になっています!」
がっくり。
警察にまで一条と自分のことがばればれだなんて。
別に必死になって隠そうとは思っていなかったけど、第一あの一条さんだからばれていないなんて思っていなかったし、で もこんなふうに自分の知らない人にまで知られているってのはどうも・・・・・・・なんてぐるぐる考えていると心配気な声がか かる。
「五代さん? どうしたんですか?」
「・・・・いえ、別になんでもありません。・・・それより!!」
「はい?」
「その写真、一条さんは・・・・?」
「いえ? 知りませんよ」
「下さい。それ」
「・・・・ポーズ」
「なんでもとりましょう!!」
こんな写真見られるくらいなら・・・・・・!!
そう覚悟を決めた五代のミニ撮影会はこうして始まったのだった。


しかし、そこは根がポジティブな五代のこと。
何時の間にかちゃっかりこの撮影を楽しみ始めていたりした。


「いや、いいですよ!五代さん」
「そうですか?」
何故だか知らないけれど、なぜか胸元が顕わになっていたりする。
「ところで、あなた誰なんでしょう?」
「あ、スイマセン! 自己紹介まだでしたっけ、自分竹田と言います」
「竹田さん?」
「ええ、桜井とは同期なんですよ」
「桜井さんの!」
「はい、桜井や杉田さんから五代さんの話は伺っていたんでつい他人のような気がしなかったんですよね〜。慣れなれし く話し掛けちゃってすいませんでした」
人懐っこい笑顔に五代も笑顔になる。
「そうだったんですか、いやあ、あんな写真もってるからどんな人かって思ってたら・・・・」
「ああ、あれですか?」
一条に抱き上げられて、顔を真っ赤にしながらも嬉しそうな自分が写ってるのを見てすっごい、こっぱずかしくなってしまっ た。
一度も見た事はなかったが、一条の側にいる時はあんな嬉しそうな顔をしていたなんて知らなかった。
(・・・・・・絶対知られたくない。ただでさえ、適わないってのにもう・・・・)
妙に照れくさい思いにひたっていた五代を竹田の一言が現実に連れ戻した。
「あれね、自分が撮ったんですよ」
「ええっ!!?」
「よく撮れてるでしょう? ナイスカップルって感じですよね」
「な、ナイスカップルって!?」
「恋人同士なんでしょう?」
これっぽっちも疑っていない竹田の笑顔に五代の顔が真っ赤になってしまった。
「・・・恋人、っていうか、その・・・・」
そんな五代に構わず竹田は自分のペースで話を進めていく。
「ね、最後のポーズお願いしていいですか?」
「え、あ、ハイ、なんでしょう」
「モンローポーズやってくださいvv」
「・・・・・は?」
思わず自分の耳を疑って真顔で聞き返してしまった。
「モンローポーズですよう!」
満面の笑みを浮かべる竹田がスッゴク楽しそうで。
(この人なんでこんなに嬉しそうなんだろう・・・・)
モンローポーズ?
五代が考えるにモンローポーズはアレしかない。
ちょっと前かがみになって、顎を上げて唇を尖らせて、眼は伏し目がち・・・ってやつ?
「そんなん撮って楽しいんですか?」
「はい!」
「ちなみに俺、男なんですが・・・・」
「そんなの関係ないです!」
「そうなんですか?」
「そうですよ! 五代さん素敵ですから!!」
そんな一条が聞いていたら血管の1本でも2本でも切ってしまいそうなセリフを言って。
「そうですか? しょうがないなぁ、じゃあ」
と、これまた乗りやすい五代が乗ってしまって。
「じゃ、お願いします!」
と向けられたデジカメに向かってポーズを取った時、向かいの扉が開いた。





いよいよ次は彼が登場。
こんかい思いのほか竹田が出張ってしまった。
さて、次は屋上で・・・・。多分次で終る筈。
By  樹


大丈夫。次で終わらなくても、
『上』『中』『下』『完結編』って手があるわよ☆
ひかる


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