げっちゅう☆3の上





あんまり、天気がよかったから。

それが、五代が、誰にも内緒でプチ冒険に出てしまった事の言い訳だった。
別に何に不満があるという訳ではないけれど。
あんまり空が青かったから。
太陽の陽射しが優しかったから。

五代を昔からよく知る人は、そんな五代に慣れているから。
「またか」
とおやっさんはあきれたように笑って。
「それだけ、元気になったことだよね」
と桜子は安心したように微笑んで。
「お土産なに買ってきてくれるのかな?」
とみのりは今までを思い出しながら笑って。

だが。

「でも・・・・・・彼は、どうなの?」
と一部の共通の人間は期待を込めて呟いたりしちゃって。

五代は、本当に、ついうっかりと。
最愛の(?)人がどういう人物かを忘れていたのかも知れなかった。

ま、いっか、冒険ていったって国内だし、海外に出たわけじゃないし。
・・・・・・・でも、とりあえず、留守電にだけいれておこう。
と今はもう後戻りのできない飛行機の上で呟いていたりする。

「あ、一条さん?五代です。ちょっと冒険してきますね」

そんな留守電をいれて。



彼がいきたかったのは北海度だった。
父が、母が、逝ってしまって二人は天蓋孤独の身となったけれど。
やっぱり北海道は故郷だった。
親切にしてくれた近所の人たち。
友人達。
そして、幼い頃に馴染んだこの空気。
子供の頃の楽しかった記憶。
五代はすぐに溶け込んで。
ちょっとお金が足りなくなっちゃったので泊まりこみのバイトをしたり。
そんなのは冒険していればザラにあったことだったので、つい。
本当についうっかりと楽しんで時間を忘れてしまったりして。


気が付いたときには半月たっていたりした。

だから本当にいつもの冒険のつもりで連絡なんかもいれてなんかいなかったりする。
「そろそろ帰ろうかな♪」
彼がそんなふうに言いながら北海道をでたのは、東京を出発してから3週間ほどたっていた。


「・・・・・う〜ん、東京までいけないなぁ・・・・」
所持金が少なくて、飛行機代が無かったりする。
「・・・よし! また稼ぎながら帰るか! こういうとき言葉が通じるといいよね!」
と、ちょっとワリのいいバイトをしながら帰ることにしたりする。



そして彼は長野まできていた。


五代はゴンドラに揺られながら窓を掃除したりしている。
(やっぱり昼のバイトなら窓拭きって自給がいいよね!)
すっかり鼻歌なんかでちゃってご機嫌だったりした。
これならすぐにお金が溜まりそうだ。
もうすぐ帰って、彼に会える。
こうして離れてみてやっぱり自分は好きなんだなぁ。…としみじみ実感していた。
事あるごとに彼のことを考えて。
特にこの長野は全てが始まった場所だから。
自分がクウガになって。
そして彼と出会って。
彼のことを考えると、胸がほわぁ・・・・と熱くなって。
この思いがあったからこそこの世界にとどまれていたのだと実感して。
(早く、会いたいなvv)
とか、このときは考えていたりした。

そのとき、自分が窓掃除をしている部屋にカップルが入ってきた。
「え? 嘘!」
この部屋は未だ使われるはずではなかったのに予定が狂ったのだろうか。
慌ててクリーナーを吹き付けると窓が白い泡に覆われていく。
窓拭きをする方は、そう簡単に動ける物じゃない。
まして今日は一人の仕事なのだ。
「それにしても、俺のこと気にしてないのかなぁ?」
部屋に入った途端、女性が男性に抱きついたのが、窓が泡に追い尽くされる寸前に眼に入ったからだった。
男性の方もまんざらではないらしい。
「ちゃっちゃと仕上げなきゃ!」
後ろポケットに差し込んだ器具で窓を、サッとひと拭きした途端、部屋の中の男と顔が合ってしまった。

「五代!?」
「椿さん!?」

一瞬の硬直後、互いに指差して叫んで、だけど行動は椿のほうが早かった。
手の中の女性を放り出すとダッ!と窓に走りより窓を開ける。
「なにやってんだ!お前!」
「わっ!わっ!足引っ張んないで下さいって!!」
「バカやろう!! さっさと中に入れ!!」
五代の足首を掴み部屋に引きずり込もうとする椿と窓枠に掴まって必死に堪える五代の姿があったりする。
「無茶言わないで下さいよ!! ここ12階なんですよ!! 離してくださいって!!」
「ええい! さからうなっつうの!!」
「ちょっ、ちょっと! か、彼女! 彼女ほっといていいんですか!?」
いや、すでに投げ飛ばしているんだけど。
「そんなことより、とっとと身体みせろ!!」
定期検診をサボったことを怒ってのセリフだったんだけど彼女には通じなかったらしい。
「身体みせろですってぇ!」
女性の声に二人の動きがピタリりと止まった。
「・・・・あ・・・・・・」
「ふううん、椿くんてそうだったんだ・・・・・」
「・・・・あ、いや、そうじゃなくって」
といいつつも椿の手は五代の足をつかんで離さない。
さらに女性の視線がきつくなり、とうとう五代まで睨まれてしまった。
「ち!違います!! そんなんじゃ・・・・!!」
慌てて否定しようとして手を降った瞬間、五代の身体は一気に部屋の中に引きずり込まれそのまんまの勢いで椿の胸の 中にダイブしてしまった。
が、そこは椿、「おっと」といいながらびくともせず抱きとめてみたりして。
それがさらに怒りを煽ったらしい。
「このバカッタレ!!」
と鼻息も荒く女性は出て行ってしまった。
部屋の中にしばしの沈黙がただよって。
「・・・・・・・ご〜だ〜い〜・・・・・」
椿の地を這うような声が。
「・・・はい・・・・・・」
五代に逆らう事を許さなかった。



「だから、連絡をいれなかったのは謝りますって!!」
「・・・・・・」
「だって、国内なんですよ!! 危険な海外に行くわけじゃないし、折角平和になったんだし・・・・・」
懸命に言い訳する五代を見ながら椿は心の中で溜息を付いていた。
(こいつ、ほんとに判ってねぇ・・・・・)
五代がフイッ・・・・と冒険に出てしまってから。
いったいどんな事になっていたか。
しかも、留守番電話にたった一言しか伝言を残さないなんて。
おかげで東京はすっごい平和だった。
あの東京の犯罪率がぐうっっ〜と減って。
普段は微塵も思っちゃいないが、ほっんとうに!今回ばかりは犯罪者に同情しちゃっていた椿であったりする。
(ま、面白かったからいいけどvv)
可哀想なのは側にいた同僚と、ここにいるなんにも知らない五代であろう。
ちろり、とみれば上目使いに椿を見てる五代がいる。
「・・・ま、しょうがない。ここでブチブチいっても始まらんしな」
「・・・・・・」
「・・・なんだ?」
なにか自分を不安そうに見ている五代に気付く。
「あの、あの人・・・・平気なんですか?」
「あ?」
あの人、というのは先刻の女性のことらしい。
ああ、と椿は呟くとひらひらと手を振った。
「ああ、いい、いい。気にすんな。別に大した事無い」
「だって」
「いいのいいの、ちょっとしたお付き合いだからさ」
「ちょっとしたって・・・・・・」
冷たくなる五代の視線に椿がむっとする。
「いいだろ、大人のお付き合いなんだから」
「・・・・・・・桜子さんとみのりに近寄んないでくださいね・・・・」
「なんだよ! その言い方!」
二人で言い合って、はた、と気付く。
「ね、なんで椿さん、長野にいるんです?」
「・・・・そういうお前こそ」
「・・・・・・俺が先に聞いたんですけど・・・・・」
「いいからは・な・せ!」
椿に押し切られて五代は仕方なしにココに至るまでの説明をした。


「・・・・ふう〜ん・・・・・」
「ふうん、て・・・ね?他愛もない冒険でしょうが」
「・・・・・」
「窓拭きなんてお給料いいですからね、すぐお金が溜まるんですよ」
だからもうすぐで帰るとこだったんですよぉ、椿さんのお土産もあるですよぉ、とニコパと笑った五代を見て椿は心の中で 溜息をついた。
「・・・・それより、今日未だこの仕事続けんのか?」
「?・・・・ハイ」
椿の質問に小首を傾げながらも素直に返事を返す。
その五代の返事に一瞬笑みを浮かべる。
「そっか、なら邪魔しちゃわるいよな、悪かった」
「・・・・椿さん、なに考えてるんです?」
「いんや? 俺もそろそろ仕事の時間だからさ」
チラリと腕時計を見る椿。
「・・・・・仕事前にあんな事してるんですか?」
「だから! 今日はたまたまなの!!」
冷たい五代の声に椿が怒鳴る。
「・・・・さ、仕事に戻れよ」
「椿さんが部屋に引っ張り込んどいてよく言いますね」
「いいから! ほらほら!」
とさっきの態度とは正反対の態度で窓から五代を押し出そうとする。
「わ、わかりましたよ!もう!」
といいつつも窓枠を乗り越え外にでる五代ににこやかに椿は手を振った。
「じゃな、頑・張・れ・よ」
「・・・・・・?」
とりあえず手を振って、五代は下へと降りていった。
「ぷぷ、いっちゃった♪」
それを嬉しそうに見送って、椿は面白くて堪らないという顔をした。
「やっぱり五代がいなくっちゃ話にならねえよな」
幸い、爆弾はいることだし♪
椿はいそいそとデジカメを取り出し部屋を出た。





ははははは、な〜んで続きになるかな。
しかも椿さんと五代しかでてないし。
でも後半はいいこわれっぷりの予定、え?何がかって?
そりゃあ、もちろんあの御方が。
そして爆弾君も登場。ふふふふふ。        BY樹


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