第39号 山一証券と取得原価主義、12月は年末調整の季節

山一証券と取得原価主義

 11月24日、山一証券が百年の歴史に幕を閉じたとの報道を見聞きし、誰しもが驚きかつ、これからの金融不安が一体どこまで続くのか、とまどっているのが正直な気持ちと思います。山内証券の経営破綻の引き金になった、巨額の薄外債務は「飛ばし」などの法律違反によって作られたもののようですが、今月は、この薄外債務=含み損について考えてみましょう。もし、あなたが上場株式を30万円で買ったとして、100万円に値上がりしたとします。今売れれば70万円儲かりますよね。では、会社や事業主が買った場合はどうでしょうか。100万円に値上がりしていても、売却しなければその利益は、未実現になるので、商法も税法も70万円に対しては、利益とせず課税されないのが、原則です。つまり、会社には含み益が70万円もあることになります。昔から土地を保有している大企業や老舗には、膨大な含み益があるのです。しかし、その含み益に課税したのでは、企業は税金を支払う現金がありません。そこで、売却して利益を現金化するまで税金を先送りしているのです。バブルがはじけるまでは、誰もが、土地や株式は右肩上がりで、下がることを考えていませんでした。ですから、取得原価主義(決算時の価額を買ったときの価額のままとする)を採用することによって、仮に決算時の時価が10倍になっていたとしても、課税の繰延べができて企業にとっては幸いでした。が、このことが、昨今の金融不安を招くとは思わなかったのでしょう。
 会計処理について、取得原価主義を採用している場合は、買ったときの価額を資産計上します。値下がった現在の価額、つまり時価との間に差額が生じ、含み損があることになります。この結果、合法的に含み損をかくすことができるのです。現在、取得原価主義を採用するか、時価主義を採用するかを含めてわが国の金融商品の会計処理基準を作成中ですが、とてもむずかしいところと思います。国際会計基準委員会でも、その基準作りが難航しています。

12月は年末調整の季節

☆年末調整の必要性
 会社は従業員等に給与を支払う際に、一定の源泉所得税を天引します。源泉所得税はその人の給与額や扶養親族等が一年を通じて同じであると仮定して計算され、仮の金額です。また、配偶者特別控除や生命保険料控除などは年末でないと、金額が確定できないので、年末調整の際に控除されることとなっています。この結果、一年間に天引された源泉所得税額と年末に計算された年税額(所得税)との間に差額が生じます。この差額を本人に還付又は徴収しますが、これらの一連の作業のことを年末調整といいます。
 毎月の源泉徴収税額の合計-年税額=還付額又は徴収額


☆年末調整の対象となる人(特別な場合を除く)
(1)1年を通して勤務している人
(2)途中入社し年末まで勤務している人


☆年末調整の対象とならない人(特別な場合を除く)
(1)平成9年の給与総額が2,000万円超の人
(2)2ヶ所以上から給与を受けている人で、月額表の乙欄適用者
(3)年末調整を行うときまでに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない人


☆年末調整時の提出書類
  年末調整に際し、従業員等から提出してもらわなければならない書類は次の通りです。
 (1)扶養控除等申告書(平成10年度分)
 (2)保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書 今年からフォームが変更になりました。(控除証明書添付)
 (3)住宅所得税控除証明書(2年度目以降の人)
これらの書類は原則として、従業員本人が記入し、押印しなければなりません。


☆年末調整は会社の義務

年末調整を行うかどうかは社員の自由な選択の問題ではなく、給与の支払者としての義務なのです。もし年末調整を行わないで不足税額が生じた場合は、その不足税額を、会社が支払わなければならないのです。この様なことが起こらないように年末調整の資料を早めに回収しましょう。

 

 


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1997年12月01日