第72号 消費税(インボイス方式)、スペイン旅行

消費税・インボイス方式

通産省は2001年度税制改正で、インボイス方式の導入を求めることを明らかにしました。


政府税調では、来年参院選挙後に消費税率UPを議論する予定でいるとのことですのでいよいよ消費税について、政府の思惑通り実行する時が近づいてきたのかなと思います。

消費税制の先輩格であるヨーロッパでは、インボイス方式によって課税されています。

インボイス方式というのは、仕入税額控除の一手段です。事業者が消費税の申告をするとき売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を控除して納付税額を計算しますが現在、仕入れにかかる消費税について請求書の記載等によって控除していますがインボイス方式が導入されますと請求書等には納付される消費税しか記載することができません。

したがって免税業者からの仕入れは、消費税が課税されず控除されません。免税業者は、年間売上高3,000万円以下等の事業者で個人・法人あわせて375万もあるそうです。


これら357万の免税業者から仕入れしたA社の場合の現在と改正後を見てみましょう。

免税業者から140の仕入→200の売上
1.現在
   140+7(消費税)=147の仕入支払
   200+10(消費税)=210の売上収入
   10-7=3→国庫へ3の消費税を納付
   ◎A社手取り 210-147-3=60


2.インボイス方式導入後
   140の仕入支払
   200+10(消費税)=210の売上収入
   10-0=10→国庫へ10の消費税を納付
   ◎A社手取り 210-140-10=60

★A社にとっては同じ結果となります。
国庫に入るべき7が、現在免税業者の益税となっているのです。


先月号に書いたように所得税・法人税・事業税が減税されたので税収が大幅に減少しています。
政府としてはそれを補うものとして、消費税率のUPしかないと考えていると思います。
しかし、消費税率のUPということになりますと食料品・光熱費他の生活必需品について、軽減税率が叫ばれるでしょう。
そうなりますと、複数の税率が混在してくるので伝票に個々の税率を記載できるインボイス方式に頼らざるを得ません。
インボイス方式は、前述したように確かに公平なやりかたとは思います。ヨーロッパ等で買い物をすると必ず、すぐに伝票に明細を記載してくれます。買う人にとって待ち時間が面倒と思っても慣れてしまうと当たり前のことになっているようです。


インボイス方式の導入は、これからいろいろな問題を抱えて推移していくと思います。例えば、免税業者の職人さんに外注費を支払うとき税込み金額を手間代と考えている場合インボイス方式導入後、益税部分をどちらが負担するのかまた煩雑な事務処理をすべての事業者が行えるのでしょうか。
ヨーロッパに旅行して感じることですが、消費税が15~20%かかっていても内税なので気が付かないし、また気が付かないほど物価が安いのです。


日本でも最近物価が下がっていますが、消費税率が10%になったときヨーロッパ並に内税で対応できるようになっているのでしょうか。そのとき事業者は、どうなっているのでしょうか。


 


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2000年09月01日