役員報酬・損金不算入
10月14日の週刊税務通信の記事から一部抜粋
東京高裁 事前確定届出給与を巡る事件で国側勝訴
届け出と異なる支給額5,000万円の全額が損金不算入
東京高裁は、10月2日、控訴人(法人)が、代表者2名に支給した賞与の事前確定届出給与該当性を巡り争われた事件について、一審に続き控訴人の控訴を棄却した。
控訴人は、定時株主総会で決議した役員賞与1人2,800万円と記載した事前確定届出給与の届出書を所轄税務署に提出したが、実際に支払ったのは1人2,500万円、合計5,000万円でした。税務署が、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、損金に算入できないとし、その支給額の全額が損金不算入であるとして、更正処分を行ったので、控訴人が東京地裁に提訴したが、棄却され、その後東京高裁へ提訴して、再び棄却され、敗訴した納税者が、最高裁に上告受理の申立てを行いました。と、記事がありましたのでお知らせします。
役員報酬で損金算入できるものは限られています。定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3つで、不相当に高額なものを除いた給与です。そして、一般の同族会社は、この場合の業績連動給与は該当しませんので、顧問先様は、定期同額給与、事前確定届出給与のいずれかを支払った場合に損金算入ができます。
定期同額給与とは、毎月支払っている役員報酬です。その支給時期が、一定の期間ごとである「定期給与」で、その事業年度の各支給時期に支給額が同額であるものです。
いつも1年間は役員報酬額を変えることはできませんと、お伝えしているのはこのことです。定期給与の額を改定したい場合は、その事業年度開始の日から3か月以内に、株主総会や取締役会で決定して、その事業年度の間は同額とし、翌期以降の給与改定の前日まで同額であるものです。
但し、法人役員の職制上の地位の変更(代表取締役⇒監査役等)や、法人の経営状況が著しく悪化した場合を除きます。
事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に、「事前確定届出給与に関する定め」に基づいて支給される給与で、あらかじめ届出期限までに、税務署に届出をしたものです。その届出期限は、原則としては、次の(1)または(2)のうちいずれか早い日です。
(1)株主総会等の決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日から1か月を経過する日
(2)その会計期間開始の日から4か月を経過する日
法人税通達9-2-14 一部抜粋
《事前確定届出給与》に掲げる給与は、所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給される給与をいうのであるから、例えば、同号の規定に基づき納税地の所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合にはこれに該当しないこととなり、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることに留意する。
私は、事前確定届出給与は、届出の時期が実際に支給する時期より早いので、支給時期の会社の経済状況を判断するのが難しく、そのため上記の裁判で負けるようなことが起きたと考えます。
したがって、私は事前確定届出給与を顧問先様にはお勧めしていません。それでも行いたい場合は、しっかり資金繰りを検討した上で行うべきと思います。