相続税の贈与税額控除
先月号で相続税の一般的な計算を記載しました。相続により財産をもらった人が、亡くなった方から死亡前3年以内に財産の贈与を受けた場合は、贈与を受けた財産の贈与の時の価額をその人の相続税の課税価格に加算しなければなりません。
また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。
加算される価額の基になる贈与財産の範囲と控除する贈与税額は次のとおりです。
◎加算される価額の基になる贈与財産の範囲
被相続人から生前にもらっていた財産のうち相続開始前3年以内にもらったものです。 3年以内であれば贈与税がかかっていたか、いなかったかに関係なく加算します。したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や、死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。
なお、贈与税の配偶者控除を受けている又は受けようとする財産があるときは、その配偶者控除額に相当する金額は加算する必要はありません。
◎控除する贈与税額
控除できる贈与税額は、相続税の課税価格に加算された贈与財産の価額に課税された税額です。ただし、加算税や延滞税の額は含まれません。
相続税の税額控除等は次の順序で計算します。外国税額控除については省いてあります。
各相続人の税額+相続税額2割加算-暦年課税の贈与税額控除-配偶者の税額軽減-未成年者控除-障害者控除-相次相続控除=各相続人の控除後の税額(赤字の場合は0 )
この赤字の場合は0というのは、たとえば亡くなる前年に子供に2,000万円暦年課税の贈与をして、贈与税を720円納付しました。そして、相続税の計算をしたら300万円でしたという場合に300万円-720万円=△420万円でマイナスですが、相続税は0円になりますが、贈与税は還付されません。この場合、もし、贈与を受けないで相続まで待てば税金が少なくて済んだかもしれません。しかし、生前贈与するにはそれなりの理由があるのでしょうから、一概に何が有利で何が不利とは言えません。
ただ、贈与税は、課税価格600万円超で40%、1000万円超で50%と税率が高いので、贈与する場合は注意が必要です。
精算課税に係る贈与税額は還付を受けることができますが、暦年課税の贈与税が相続税より多い場合は、還付されません。
相続時精算課税の場合
各相続人の控除後の税額-相続時算課税分の贈与税額=※各相続人等の差引税額
※既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額が、相続税額から控除しきれない場合は、その控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税額は還付を受けることができます。
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