第105号 土地の時価

土地の時価

相続や贈与により土地の移転があつた場合、時価によって税金の計算をします。では相続税法上の土地の時価とは何でしょうか。都市部では全国の道路に路線価といって、1㎡あたりの価格が付されていて、その土地に接している道路の路線価にその土地の面積をかけたものが原則として時価です。
(地方は路線価の付されないところが多いです。)


これは、納税者が財産を自由に評価する方法を採ると、その評価方法、基礎資料の選択の仕方によって異なった評価額が生じ、また事務の迅速な処理が困難となるおそれがあることなどから、あらかじめ定められた評価方法により画一的に評価する方が、納税者間の公平、納税者の便宜、徴税費用の節減という見地からみて合理的であるという理由に基づくものです。相続税や贈与税の申告は、誰もが疑いも無く路線価によって申告しています。


 ただし、路線価を適用することにより、通常の取引価額を上回る価額により課税されるなど、実質的に租税負担の公平を著しく害することが明らかである場合には、路線価によらないで他の合理的な方法により評価してもよいと解されています。


このたび今までとちょっと違う評価が認められた判例をご紹介します。2月26日の東京地裁の裁判では、都心の商業地域の土地で、バブル崩壊後、土地の価格の下落率が大きく、路線価による評価は妥当ではないと判断した上で、収益還元法による価格と取引事例比較法による価格を単純平均して求めるものが相当とされました。収益還元法とは土地の収益性に着目してその価値を算定するもので、取引事例比較法とは土地の売買実例価額を基に算定するものです。


土地取引が低迷している現在、売買事例が少ないため、収益還元法による評価がもっとも的確とされるところではありますが、収益還元法を採用するには、経営者の能力、財産の状況により収益の額が左右されること、還元利回りの算定が困難なことなど不確かなことが多いので、個別評価による納税者側の不動産鑑定士の鑑定評価した価格と税務署側の不動産鑑定士の鑑定評価した取引事例比較法による価格の両方を同等に用いるべきと判断しました。納税者側も税務署側も控訴しなかったのでこの判決は一審で確定しました。


今回の判例で収益還元法や、取引事例比較法が認められたからこれからすべてがOKというのではなく、あくまで路線価が原則で、例外的に個別事情を斟酌することもありますよということです。

 

 


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2003年06月01日