パート従業員の社会保険
平成24年8月10日に法が成立して、平成28年10月より「短時間労働者に対する社会保険の適用拡大」が施行されます。「パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、社会保険加入義務が発生する」ということです。今回は、従業員501人以上の「特定適用事業所」大企業に勤務している方が適用対象になりますが、「平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずる」とされています。従って、平成31年10月以降、中小企業も適用拡大の対象となる可能性があります。
事業者側からすると、大変な負担になります。一朝一夕にできるものではないので、経営の合理化を進め、適材適所で効率の良い人材の配置を行い、人件費について無駄のないように、今から計画しておきましょう。
従業員の立場からすると、「特定適用事業所」に勤務しているパート従業員さんは、以下の要件すべてを満たす場合は、強制的に社会保険に加入しなければなりません。
① 週の所定労働時間が20時間以上あること
② 雇用期間が1年以上見込まれること
③ 賃金の月額が88,000円以上であること
④ 学生でないこと
《厚生年金について》
今まで、夫が厚生年金加入者の配偶者の場合、「年収130万円未満」という枠内で働いていれば、少しの所得税・住民税のみで、健康保険や厚生年金保険料を負担しなくてよかったのですが、これからは、上記に該当する妻は、自分自身の社会保険に加入するわけですから、当然手取り額は減少する方が多くなると思います。
例えば、月額賃金が88,000円で、健康保険料5,077円、厚生年金8,000円、年収1,056,000円で社会保険に加入する方は、手取りが899,000円くらいになります。今までは、社会保険に未加入の方は、手取り1,042,100円なので、あたかも損をしたかに見えます。
しかし、従業員が社会保険に入って負担が増加するのは事業者であって、控除された社会保険料と同額を事業者が負担して、国へ納付しなければなりません。
従業員は事業者から、控除された社会保険料と同額を免税で取得しますので利益になります。
つまり見た目では、143,100円少ないと思いますが、年金に192,000円積立しているのです。それは、将来従業員自身が受け取る年金になるのです。
加入期間にもよりますが、40年間88,000円の給与として試算すると、年金の納付額は月額8,000円ですが、40年後に受取る年金額は月額84,000円になります。
夫がサラリーマンではなく、個人事業者の場合、国民年金を毎月16,000円納付しますが、40年後年金を月額65,000円受給します。
一方パート従業員の妻は、厚生年金を毎月8,000円納付して、40年後に受取る年金額は月額84,000円になります。会社が8,000円納付するので、夫と同じ16,000円を国へ納付している筈なのに、受取は夫より19,000円多くなります。現在の社会保険制度の矛盾がここにもあるのですが、だからこそ、老後の安心のためには、厚生年金に加入しておいた方が良いと思います。
※上記の計算の数字は、仮定なので実際とは異なります。
また、万が一、厚生年金を納付していた者が亡くなった時、その死亡した者によって生計を維持されていた妻や子・孫、55歳以上の夫、父母・祖父母は、遺族厚生年金を受給することができます。
《健康保険について》
・傷病手当金
業務上および通勤途上の病気やケガは「労災保険」で扱われます。業務外の病気やケガが原因で働くことができなくなり、給料がもらえなくなったり、減給されたりした場合には、被保険者の生活を支えるために「傷病手当金」が支給されます。支給期間は、傷病手当金が初めて支給された日から最長1年6ヵ月間です。
・出産手当金
出産した場合、被保険者には「出産育児一時金」、被扶養者である家族には「家族出産育児一時金」が支給されます。
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