第83号 預貯金の名義、税務署の誤指導と延滞税、夫が弁護士・妻が税理士

預貯金の名義

相続税がかからないように、預貯金の名義を子供や孫の名義にしていらっしゃる方が多いと思いますが税法上では、預貯金の真の所有者は誰か、事実認定によって調べます。名義も事実認定の材料にはなりますが、その経過が一番大事なのです。例えば、××年に△△から○○円を贈与されたとか、給与・不動産所得がいくらだからいくら残っているとか証明できるようにメモを取っておくべきです。


今年の3月に、大阪高等裁判所の判決がありました。「名義からでは、預貯金を相続財産と認定できない。」というものです。この判決の内容は、以前祖父が亡くなった折に相続人である祖母と母が、それぞれ1/3・2/3で祖父の預貯金を相続していましたが祖母は、母の預貯金までも祖母の名義にしておきました。その後母が亡くなって、今回祖母も亡くなったので、子供は祖母の相続をしました。本当は母の財産である預貯金が、祖母名義になっていましたので子供は、母の分を除外して祖母の分だけで申告しました。


税務署はこれを否定し、裁判になりましたが結局、「名義がいくら祖母のものであっても、名義からだけでは預貯金を祖母の相続財産と認定できない。」と、いくら祖母名義であっても母の財産ということが認められました。


よくある話は相続の時、配偶者や子供の名義になっている預貯金が実は誰のものなのかということが問題になります。どなたも証明できるようにメモを取っておいた方が、よろしいかと思います。

税務署の誤指導と延滞税

以前から納税者が税務署の窓口で、税務署職員に指導を受けながら申告した場合それが間違っていたため税額が増加したときは延滞税を合わせて納付しなければなりませんでした。


永嶋事務所の顧問先の皆様は、税務署に直接お尋ねになることはないかと思いますが納税者にとって、税務署職員の言うことはすべて正しいと思っているわけですから税務署職員が誤った指導をした場合に延滞税(罰金のようなもの)がとられるなんて、すごく腹立たしいことでした。


国税庁は、6月22日新しい通達を発遣しました。今回の通達の中で、誤指導の場合は延滞税が課税されないことが明らかにされました。とはいっても何でもかんでもと、いうことにはなりません。
延滞税のかからない誤指導とは、税務相談や税務照会などのときに納税者から充分な資料の提供があったにもかかわらず税務署職員が税法の解釈や取り扱いについて誤った指導をし納税者が納付すべき税額の全部または一部について申告・納付ができなかったという場合でしかも納税者に責任があるかどうか、納税者の税知識の程度はどのくらいか税務署職員の指導の内容・状況はどのようなものだったのかなど、総合的に判断されます。


何はともあれ、税務署に大事な問題を相談される場合は年月日、担当者の部署、氏名をしっかり確認しておきましょう。後日問題が生じたときに、困らないように。

夫が弁護士・妻が税理士

国税不服審判所は、「弁護士の夫が、税理士の妻に支払った税理士報酬の額は必要経費の額に算入されない。」とする裁決事例を明らかにしました。


根拠は、所得税法第56条に、居住者と生計を一にする配偶者や親族がその居住者の行う事業(…途中略…)から対価を受ける場合には、必要経費に算入しないとする規定があるためです。


このことは、業種は何でも適用されますので例えば、夫が建設業で妻がブティックをやっている場合お店に棚を作ってもらったなんていう場合も同じことです。

 

 

 


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2001年08月01日