人間は頑固なもので、自分達が属している組織が「衰退している」とは、なかなか認めたがらない。その一方で、新幹線や高速道路の開通で「見ろ、こうしてこの地域はますます発展していく」と考えたがるのだろう。実際は、新幹線や高速道路の開通で地域が発展する方式は、過去のものになっているし、むしろ逆効果で、衰退を加速させる要因にすらなっている。
地方の僻地から始まった衰退の波は、やがて地方全体に広まり、今では中央の周辺部にまで迫ってきた。いずれ中央部もその波に飲み込まれるだろう。
衰退を跳ね返す力は、その土地に住んでいる人々が、独力で事業を起こす活力があるかにかかっている。私には、その活力が、地方には無かったが中央にはある、とは思っていない。
逆に私はこう考えている。一度ひどい衰退を経験した地方の一部から、ようやく「独力で事業を起こす活力」を再興しようという気運が始まって来たが、中央はまだ恵まれているので、そんな気概を奮い立たせる状況には住民は至っていない、と。
新幹線だとか高速道路だとか、何か「大規模なもの」を持ってくれば自分達も豊かになれると考えている内は、かえって「大規模なもの」に身ぐるみ剥がされるだけだ。自分達の足下から、自分達の手足を使って豊かさを創造する覚悟と活力が無いと、衰退を止める力にはならないだろう。
前回の日記で紹介した、ささやかなパン屋作りのあり方に私が期待しているのは、そんな理由からだ。