2014

10月

10月5日(日)

 今度の台風は月曜日に関東を通過するようだけど、この日記を書いている日曜日の段階では、それなりに本降りの雨ではあるものの、風も吹かず、あまり危機感を感じさせるような嵐の雰囲気はない。まあ、これからかもしれないけど。

 この日曜日は、地元の自治会で防災訓練が予定されていたけれど、この雨で中止となった。もちろん、この夏の兵庫県や広島県の大雨災害みたいに、雨による災害もあるわけで、「雨だからこそ訓練を実行すべき」という考え方もあるかもしれないけれど、私としては正直ホッとしました。
 それになぁ、お年寄りの多い集落で、お年寄りを冷たい雨の中を避難場所まで延々歩かせると言うのも、なんか気の毒だし。

 とは言うものの、災害というのは「悪い時に悪い事が重なる」という事も多いだろう。大雪や大雨の時に大地震が起きて、被害を更に大きくする事だってあるに違いない。防災訓練のように、天気の良い明るい日中の時だけ地震が来るわけじゃないからな。

 以前、イベントの交通の誘導に使っていたトランシーバーが、突然の大雨に当たって故障して、交通の誘導が出来なくなって駐車場が混乱した事がある。
 いろいろな「災害の備え」を準備してても、それら「災害の備え」の何%かは、災害によって使用不能になる事もあるだろう。滑稽に聞こえるかもしれないが、そんな想定も必要だと思う。

台風の前々日の空

 相模原市が、住民によるヤマビルの被害防止対策活動に、それらにかかる費用の一部を支援する事になった。住民による団体(自治会とか任意団体)が、ヤマビルの生息地域で、ヤマビルの減少に繋がる草刈りや落ち葉の除去、樹木の伐採や剪定などの活動をした場合、経費の支援を行うというもの。

 支援対象経費としては、刈払機、ブロワー、ほうき等の物品と、それらの燃料や消耗品の購入費。ヤマビルの忌避剤や殺ヒル剤の購入費。落ち葉などの運搬処理にかかる費用。ボランティア保険加入経費をあげている。
 金額は、活動による受益地の面積が1ヘクタール以上で5万円。1ヘクタール未満で2万5千円。

 この助成が効果があるのかどうかは、それぞれの条件によって変わってくるだろう。この手法が有効な事例もあるとは思う。

 ただ、私としては、このヤマビルの問題は、山里そのものの再生の問題として取り組んだ方が良いと思う。一見、話が大げさになったように感じるかもしれないが、かえって「ヤマビルにはヤマビル対策」と個別に対応するよりも、安く合理的に問題が解決できると思う。

コスモス

 もう少し具体的に書く。

 山里が抱えている問題は数多い。林業や木炭産業、農業の衰退と、雇用の喪失による人口減少と少子高齢化。それによって耕作が放棄された畑が増えて、そこにイノシシや鹿やサルといった動物が平然と入り込むようになり、ますます畑を荒らして農業が困難になっていく。そして、山里にヤマビルをばらまくのは、鹿やイノシシが最大の原因なのだ。(※註

 ヤマビルは何も食べなくても半年(1年?)は平気で生きていると言うが、それでも寿命はある。飼育した環境では最長で5年生きたという記録があるそうだ。他の資料を観ても、だいたい3年くらいが寿命と書かれている。

 ヤマビルは動物の血を吸うと、大量の卵を産んで、それがまた大量のヤマビルへと成長していく。しかし、鹿やイノシシといった動物がいなくなると、卵を産む機会を得られないまま寿命を迎え、自然減少が期待できる。
 もっとも、鹿やイノシシだけでなく、サルやタヌキからも血を吸うと言われているが、とりあえずヤマビルの「爆発的増加」に対しては、鹿とイノシシの行動の制限で効果があるはずだ。

図1

 私の考えはこうだ。すでにイノシシの害に悩まされている家は、独自に畑に柵を作っているところも多い。(図1)

図2

 これらの柵を繋ぐように、助成金を使った柵を増やして、山里の中に鹿やイノシシが入りにくくする(図2)。一気に全ての柵を作る事は金額的に無理だろう。優先順位の高い所から、少しずつ柵の長さを拡充していく。

 これによって、鹿やイノシシによる新たなヤマビルの供給を絶つ。柵の内側では、草刈りを念入りにして、刈った草を時には燃やしたり埋めたりしてヤマビルを駆除していく。

図3

 これが上手くいったら、柵をさらに山側へ移動する(図3)。間伐が行き届かなくて荒れた森は樹木を間引いて伐採して、草は馬やヤギでも放牧して草を食べてもらい、見晴らしを良くする。こうすると鹿やイノシシも中に入りづらくなる。ここでも時々、草刈りとヤマビルの駆除を行い、徐々に山里全体が、ヤマビルだけではなく、有害鳥獣の不安からも遠ざかるようにしていく。

 このような総合的な対策は、まずは山里の住民の方から考えて(山里の住人の方が、鹿やイノシシの通り道も、山里の地理も、どこに柵を作れば効果的かも知っている)、住民から市へと提案する形が望ましい。 

 森や畑の荒廃、有害鳥獣とヤマビルの問題、これらはすべて原因は同じ根から出ている。その根とは「山里の衰退」だ。
 なので、ヤマビル対策も、山里の衰退を停止させ、どう再生させていき、最終的にどんな理想的な山里の未来像を作っていくか、という視点の一つとして取り組んだ方が、効果はあがると思う。

篠原のヤギ

 最近、篠原でヤギを飼い始めた方がいる。今の段階では、御自宅の周辺だけの草を食べているけれど、地域で柵と土地を提供して、イノシシや鹿が入りやすい所にヤギの放牧地を作るのもいいんじゃないかなぁ。

 ヤマビル対策(イノシシ対策も同様だけど)の最大の課題は、案外、住民の方にあるのかもしれない。同じ集落の中でも、ヤマビルの被害がひどい家と、それほどひどくない家、まるで被害のない家があったりする。なので、ヤマビルに対する危機感にも、集落の住民には温度差がある場合が多い。
 なので、ヤマビルの害に日常的には遭っていない人は、「なんでヤマビル対策に、そんな大仕事をしなくちゃいけないんだ」と、ヤマビル対策に難色を示す人もいるだろう。

 かと言ってなぁ、そうこうしている内に、集落全体にヤマビルが拡散して、集落の家すべてが悲鳴をあげるまで対策できないとしたら、それは愚かだろう。

※註

 神奈川県が作成した、「ヤマビル対策共同研究報告書(概要版) [PDFファイル/3.14MB]」の研究結果1に、「ヤマビルが吸血する動物・運搬する動物」という調査結果がある。これによると、ヤマビルを山里に拡散している原因の動物としては、鹿とイノシシで4分の3以上の割合になっている。このPDFファイルは、以下のページからダウンロードできます。

ヤマビルにご注意を!(このページの下の方にあります)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f986/p10106.html

10月13日(月)

山の中の写真展

 台風が迫る12・13日に、篠原の集落全体を会場にした「ぐるっとお散歩篠原展」が行われましたが、当初は12日から雨になるという予想が遅れて、12日はとうとう雨はふらないまま。13日は雨になりましたが、それでも恐れていた風は吹かない内に夕方になって、イベントは無事に終了しました。

 むしろ、「13日は絶対に雨だな」と思ったお客達が12日に押し寄せ、用意していた料理やパンはたちまち完売。13日もガラガラという程ではなく、それなりにお客さんも来ていたので、結果的には上手くいった形で終わりました。
 こういうイベントってねえ、いきなり「台風で中止」と言われて、仕込んでおいた大量の料理をどうしよう、と途方に暮れる事も多いそうな。

 上の写真は雨の13日のもの。山の中での写真展の光景。こんな時でも写真展をやる方もやる方だけど、足下の悪いなか来る客も客だ。まあ私も行ったからこの写真があるんですけどね。
 フジノは、イベントを企画する方も、イベントに来る方も、酔狂な人が多い。

 先週の台風は、あまり風も吹かないので個人的にはあまり危機感はなかったのですが、神奈川県でも被害はあったみたいですね。

横浜・緑区土砂崩れ 違法盛り土、市は指導継続怠る
こちら>>

 どうやら残土を違法に投棄したものが大雨で崩れたものらしいが、記事には、こんな危険な残土の崖が横浜市だけで243箇所あると伝えている。これが全国になると何ケ所あるんだろう。

10月10日の夕焼け 台風の前は印象的な雲が多い

 前回の日記では、やたらとヤマビル対策について書いたけど、一つ書き漏らした事がある。私はヤマビル対策として、鹿やイノシシを集落に近付けないための柵の設置が良いんじゃないかと書いた。そして、その柵の設置に関しては「まずは山里の住民の方から考えて住民から市へと提案する形が望ましい。なぜなら、山里の住人の方が、鹿やイノシシの通り道も、山里の地理も、どこに柵を作れば効果的かも知っているから」とも書いた。

 その「山里の住民」の中に、地元のハンターの意見も取り入れた方が良いな、と後から気付いた。たぶん、狩猟を行うに当たって、「こんな所に柵を作られたら困る」という場所もあれば、「どうせ柵を作るのなら、ここに作ってくれれば、イノシシや鹿を捕まえるのには好都合なんだが」といった話も出てくるかもしれない。何より、鹿やイノシシといったケモノの生態については、とても詳しい専門家だし。

 ただでさえ少子高齢化で人口が減りつつある山里なんだから、できるだけ、その土地にある人材も知識も技能も、総動員して取り組むしかないだろう。それがたとえヤマビル対策でも。

 いや、これは山里のヤマビル対策だけの話じゃないかな。
 これから日本全国、財政難で問題の解決が難しくなってきたら、結局、その土地にいる人材の知識や技能を総動員して、活性化して、有機的に長所を組み合わせて活用していくしかないだろう。それも、嫌々やるのではなく、参加する人々が楽しく活動できるような形でなければならない。

 ミズヒキ

 例年だったら、9月になっても10月になっても11月になっても、ひどい時は12月になっても、汗ばむような陽気になる事があったが、今年はそんな暑さのぶり返しもほとんどなく、着実に冬に向かって冷えてきている。もっとも、例年の方が異常で、今年の方が正常なのかもしれないけど。

 最近は朝晩になると、石油のストーブを使う程には寒くないけれど、少し暖房が欲しいなあという感じになってきた。

 寒くなってくると、薪ストーブの事を考えたりします。私の住む家には薪ストーブは無いし、設置するのは難しいのですが、家の周りはみんな木ですからね、すべてが燃料に見える。それに、どのみち家の周辺の木は切らないと、家の方が木に壊されてしまう。
 管理されない森林、増殖する竹林、道路脇の木々は、あらかじめ切っておいた方が、台風などの強風が吹いた時には、電線が切られずにすむ。

 何が言いたいのかと申しますと、山里では樹木の剪定によって発生するゴミは、今後も出続けるわけですよね。これらを、うまく加工して人工の薪を作ってくれる業者とか、ないものか。
 こんな商品もあるようです。これは木屑を固めた物ですね。
こちら>>

 人工石炭、というものもあるようです。これはオリーブオイル製造時の絞りカスを乾燥させて石炭と混ぜ合わせたもの。
こちら>>

 新聞紙を固めた人工の薪なら、実践している人も多いですが、木や竹や雑草を固めた薪って、広まらないものですかね。こういう「人工の薪」は、アメリカの方が進んでいるのでしょう。日本にも輸入してますね。
こちら>>

 自治体が「薪ステーション」を作る所もある。林業などで生じる、材木には使えない残材を地域の薪として使ってもらおうというもの。
こちら>>

 相模原でも同様な事を始めようとしている。これも林業で生じた残材を。地元の温泉を沸かすのに使おうという計画らしい。
こちら>>

 町田市では樹木の剪定で生じたゴミを発酵させて堆肥に加工している。
こちら>>

 富山市では食品の廃棄物処理とも組み合わせて、堆肥も作ればガスも作っている。
こちら>>

シラネセンキュウ

 なんだかリンクの羅列になってしまいましたが。

 今後も草刈りは必要だし、樹木の剪定や伐採も必要だろう。多くの場合、こうした植物のゴミは、わざわざ石油を使って燃やしている。
 なんか、現代の再新技術を使って、気軽に家庭で使える燃料にできないものだろうか、などと、寒くなってくると私は妄想を膨らませるのです。

 これからかなぁ、そんな技術や新製品が開花するのは。

10月19日(日)

秋の陽

 このところ二週続けて台風を警戒する週末だったけど、この土日は久しぶりの好天で終わった。昼間は暑からず寒からずの心地よさで、こんな日にイベントや祭りが行えた方々は幸運だと思う。個人的には、自分が今年参加したイベントや行事は、雨ばかりだったからなぁ。

 10月も半ばを過ぎると、陽が陰る時間が早くなってきた事が実感として解ってくる。夕暮れはまさにつるべ落しで暗くなるし、午後2時頃でも、陽の高さはだいぶ低くなった。
 山里では、山に太陽が遮られるので、平地よりも日没が早い。冬になると、家に太陽の光が当たる時間が数時間だけ、みたいな家だって山里では珍しくない。洗濯物や布団を干せる時間帯も限られてくる。

 こんなふうに、ただでさえ山に陽が遮られる土地柄だけど、その山に木が高く聳えるように生えると、ますます日照は難しくなる。フジノに住む知り合いの中には、「あー、あのあたりの木を伐ってくれたらなー、もう少し日照時間が伸びるのに」と思っている人は多い。
 かといって、その木が植林された杉や桧だったら、その木の持ち主に伐ってくれとも言えないしな。

 フジノに引っ越したころは日当たりが良かったけど、10年、20年と住んでいる内に、周囲の木が伸びて日照が悪くなった家も多かろう。

野菊

 私は、山里に人が住むからには、木は計画的に伐ったほうが良いと思ってます。というか、「山里に暮らす」と「木を伐る」という行為はセットになっていると言ってもいい。
 山の木々の生命力は凄まじく、耕作を放棄した田畑なら、1年で雑草だらけになり、2年で雑木が生え始め、3年目にもなったら人の背丈よりも高い木々が育ち始める。「木を伐る」というと、なんだか人間が自然破壊をしているように聞こえるかもしれないが、木や草というのは、人間の領域に絶えず侵食をし続ける力の持ち主だ。こういう事は、実際に山に住まないと判らないかもしれない。

 日々、草を刈り、木を伐って、はじめてどうにかこうにか人が住む領域を維持していると言った方が、実態の説明としては正解に近い。

 そんな山里でも、少子高齢化や人口減、林業や農業、木炭の生産といった山を使う産業の衰退で、山の木々に手を入れて管理する力が乏しくなって久しい。そうこうしている内にも、木々は不断の成長を続けている。そのため、近年になって、以前の山里ではあまり考えられなかった問題も出てきた。

 例えば、道路沿いに生えている木々の問題がある。大きく成長して道路の中に枝を伸ばし、バスやトラックがぶつかってしまう問題もあるが、こういった木々の枝が、台風のたびに電柱の電線や電話線を切断する事例が、近年は特に増えた。

 ここらで一度、道路沿いの両側5メートルの範囲の木々は、伐って除去するくらいの対策をしたほうがいいのではないか。前回の日記でも少しその事に触れて、伐った木の利用として燃料に加工したらどうかといった事を書いた。

ススキ原

 木は伐ってもすぐには薪として使えない。半年か、場合によっては1年は乾燥に時間をかける必要がある。伐った木を乾燥させる場所を確保するだけでも難しい。
 それに、薪ストーブを使う場合、薪ストーブに向いた木もあれば向かない木もある。針葉樹は好まれないし、竹なんかは「使うな」と薪ストーブの注意書きがあるのが普通だ。

 でもなぁ、ハイテク大国なんて自認しているのなら、そろそろ「どんな燃料でも選びません」という悪食(あくじき)な薪ストーブを開発する国産メーカーがあってもいい頃だろう・・・と思ってたら、既にある事はあるみたいですね。「竹も燃やせます」と堂々と唱うメーカーも出始めたみたいだ。
 そうだよな〜、そういう薪ストーブもこれからは作っていかないと。「良質の薪しか使ってはいけません」なんて澄ました事を言っていると、いつまでたっても薪ストーブは金持ちの道楽で終わってしまうよ。

 燃料以外の木の利用法として興味深いものがあった。木材を加工して住宅用の断熱材を作るというもの。間伐材や、林業で出る残材を使うそうな。
こちら>>

 自然素材由来の住宅用断熱材って、ないもんかねえと以前から思ってましたが、羊毛や炭化コルクくらいしか知りませんでした。でも、ほかにもいろいろあるんですね。中には、その土地で作れそうなものもある。
 これは麻を使ったもの。麻でできるのなら、そのへんの雑草でも出来ないかとムシのいい妄想も働く。
こちら>>

 木や草から作られる住宅用断熱材って、これからの良い産業になると思うんですけどねえ。

谷間のススキ

 麻といえば、こんな記事を見た。

60年ぶりに麻栽培が復活 伝統的な麻づくりプロジェクト。「八十八や」
こちら>>

 麻薬として使えない麻であれば、栽培しても問題なかろうと思うのだけど、それでも認可を得るまでには苦労があったみたいだ。

 この日記の9月28日の所で、近年になって、地方や地域の再生の話でも、「これから挑戦します」という話よりも「成果が現れてきました」という話が多くなったような気がする、と書いた。この麻の話も、そんな記事の一つかもしれない。

 もう一つ、これも開花した話だなァと感じた記事。

アートが照らす、坂道の街。世界が交差する集会所「光明寺會館」が、尾道の空き家を開くまで
こちら>>

 空き家を再生して、芸術家が長期滞在して活動できる場所を作り、いろいろと面白い事をやる人の移住も増えて、空き店舗にも、新しい商売を始める所も増えた。

 空き家の再生・再利用と移住者の受け入れ、それによる新しい商売や産業の創出。これって、地方の活性化策の「ひな形」になりつつあるね。