「4TEEN-14歳、あの夏を、忘れない-」
(かつて14歳だった大人たちへ贈る物語りである。)

わたしのお兄ちゃん、通称”にいに”はハンドボールに青春を捧げる、ごく普通の硬派な中学生。
3年生最後の夏、”学校総合体育ハンドボール大会(県大)”が3日間に渡り開催されたのでした。

「それにしてもここ(草加市スポーツ健康都市記念体育館)の会場はどうなってるの?
冷房なし(体感温度40度以上)+カーテンを締め切った体育館(不快指数100%)で試合させるなんて・・・・
光化学スモッグ発令中の都会のコンクリートジャングルで、マラソン大会しているようなもんね。
ハヒ、ハヒ(_","_).。o0O○」

夏になると何故かトーマス君と呼ばれるわたしの
”ハヒハヒ”冷却装置もフル稼働しているのだが、息苦しさにグロッキー状態であった。

そんな劣悪な会場にもめげず仲良し10人組は、
いつもの一時的数的不利(試合中なのに熱血監督”太っちゃん”の個別呼び出しお説教)を克服、
順調に予選トーナメントを勝ち上がり、4チームで争われる決勝リーグへ進出。
2日目、決勝リーグ1回戦、中央のディフェンスを固める大原中に対し、
わたしとのお遊びからあみ出した必殺”粕壁ルーレット攻撃”が決まり快勝したのであった。

(写真:粕壁ルーレット攻撃を決めるにいに)
「明日は、川口東、そして宿命のライバル十二月田中と決戦ね。
毎日泥んこになり、わたしの大好きなすっぱ臭い靴下をお土産にくれるにいにの為にも、応援、かんばらなくっちゃ。
頑張れ、大増中(ちなみにオオマシと読む)」
・・・
そして、最終日10:40、運命のホイッスル。
・・・
その頃、クレヨン家・・・
「今日も暑い、暑い・・・いいなぁ、にいに、冷えピタいっぱい貼ってもらって・・・
急な発熱時にビタッと貼れてしっかり冷やしますだって?」

全勝同士で迎えた十二月田戦、スタンドの片隅に、肩で息するトーマス君2号の後ろ姿・・・・
そう、にいには、39℃の発熱により、3年間の集大成の試合に出場できなかったのでした。

クレヨン新聞 東埼玉版片隅の記事
「ハンドボール、大増中アベックV」
中学ハンドボール埼玉県大会、春日部大増中が初のアベックVを達成し、
千葉市ポートアリーナで開催される関東大会への出場を果たした。
ニ名の発熱者を出しながらも、川口東を二点差、
十二月田を一点差で押し切り、全勝で初優勝を飾った。

スタンド観戦の大増中の生徒へインタビュー
アナウンサー:「優勝ですよ。よかったですねぇ、何か一言」
「今から何年かして、自分がだめになりそうだったら、今日のことを思い出すようにしよう。
純粋にボールを追いかけていた3年間、あの時すごくいいやつらが十人いた。
僕達はみんな年を取り、大人になっていくだろう。
僕が恐いのは、世の中に出て、あれこれ捻じ曲げられ、
今日ここにこうして十人でいる時の気持ちを忘れてしまうことなんだ。
大人になっても変わらないでいいことも沢山あるんだ。」
目指せ、関東大会突破、全国出場じゃぁ。(小説:4TEENより一部参照)