電気で食う人々 2

 電力会社というのは、「電気をつくって売る会社」なのかと思っていたら、意外にいろいろなことを手がけてきているのに驚かされたことがある。
 「夏が来れば思い出す…」で知られるあの尾瀬。所有も管理も東京電力である。尾瀬はもともとは、水力発電の用地として戦前の電力企業が買い上げを進めた土地だ。だが反対もあり、なかなか計画は進まない。戦後の電力再編で東京電力が引き継いだが、そのうち当地での自然保護が叫ばれるようになり、また水力発電もはやらなくなったことから、現在のような保護の方向が固まった。これは収益が挙がる事業ではないから、「企業の社会貢献活動」として行われているものだ。
 「社会貢献活動」は、これにとどまらない。尾瀬の場合は行きがかり上こうなったという側面も強いが、そうでないケースもある。たとえば、「オフィス町内会」という団体の場合は、その立ち上げから積極的に取り組んだ例だろう。 「オフィス町内会」というのは、ビルを回って古紙の回収などのリサイクル事業に取り組む非営利組織である。
 なるほど電力会社はよいことをしているなと感じる。しかし、その費用はどこから出たのかということになると、首をひねらざるを得ない。運営費用は参加する各企業が負うだろうが、その立ち上げにかかわる費用や、人員の人件費はどこから出たのだろうか。当然電力会社だろう。ちなみに、この団体を立ち上げ、育成にあたった人物は、昨年まで東京電力の執行役員を務めていた。電力会社のお金は、元をただせば電気料金なのだが。その主たる事業以外に金を使えと、いったい誰が頼んだというのか。
 さて、話は変わるが、今後東京電力は、福島の事故の補償に追われることになる。電力料金の値上げや国庫からの負担も検討されている。もちろんこの会社には、思うにまかせてお金を使ったりする自由はなくなるんだろうなと思う。たぶんそうだろう。 
(2011.9.3)

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