鉄の錨
6世紀~ 鉄の技術が広まり全体が鉄できた錨が登場する。それまであった木碇を基本とした形状で、爪の部分がプレート状になっている。現在でも使われているストックアンカーの登場である。この錨は、帆船と共に世界の海を航海し、広まっていく。初期の頃はストックが板状で固定されていたものが、次第に丸い棒状になり、更に収納しやすい可動式のものが現れる。
 19世紀初頭、錨の進化にとって大きな影響を与えたトロットマンスアンカー(写真右)が登場する。この錨はアームが可動式になっており、現在使われているアンカーの原型とも言える。
 汽船が登場し、揚投錨が楽なストックレスアンカーが望まれる様になると、様々な錨が開発され、20世紀初めには数え切れないほど多種多様なアンカーが登場する。
  20世紀~錨にとっての進化の爆発が起きる。ストックアンカーはもちろん、商船の殆どが汽船へと移り代わって行った時代であったため、邪魔なストックの無いストックレスアンカーが強く望まれ、今では想像もつかない姿のアンカーが次々に開発された。しかし、錨に対しての理論も無ければ、研究もされていなかったため、開発される錨は役に立たない物ばかりで、すぐにその姿を消していった。写真にあるようなトリプルアンカーやスミスアンカー、マーチンスアンカーなど色々なアンカーが登場し、極短期間の内に現在使われているアンカーに落ち着いていく。代表的なアンカーとしてはホールス型、バルドー型でAC-14型やダンフォース型が登場するまで、世界中の船がこの錨を使用しており、本船やヨット・ボートで現在使われている錨は、ここ50年ほどで登場した非常に新しいものなのである。
 ただ、現在でもアンカー理論は確立しておらず、昔と変わらず多くの人が錨に頭を悩ませているのである。