密  談

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とある日の、ある喫茶店の一角で、良い男が二人向かい合ってなにやら真剣に話し込んでい た。
「コレなんかどうよ」
「それはもうやった」
「コレは」
「ソレも」
「じゃ、コレ」
「とっくに」
「へ、ちょっと意外だな」
「試した、というより、前の相手が勝手に」
ああ、そうね、と頷く。椿は手にしていたシャーペンを放り出した。手元のメモには全部×印 がついている。
「んん〜、大体出尽くしたか。ああいうのはパターンが殆ど同じだからなぁ・・・・」
椿は腕を組んで呟いた。いつにない真剣な表情だ。その正面には同じく一条が、やはり真剣な 表情で考え込んでいる。
「あ、・・・・アレは?」
「・・・・・ああ、アレは結構良かったかも。お前の言った通りだった」
「んじゃ、コレもやっちまったか・・・・・・」
「なんか、ないかな」
一条の問いに椿は考え込んだ。
「別に今までのだって十分だって思うがなあ」
「しかし・・・」
不満気な一条の様子に椿は納得がいったというようにニヤリとした。
「あ、お前、楽しくなってきたんだろ」
「うむ。あんなに、いいモンとは思ってなかった」
「そうだろ、そうだろ、お前がまともになって俺も嬉しいよ」
「だから、協力してくれ。お前なら、もっと別のやり方とかしってるんだろ?」
「あ、ダメダメ。そっちはおまえにゃまだ早い」
「・・・なんで」
あっさり言われてムッとする。
「俺には無理だというのか」
「違う違う。数は同じでも経験不足なの、お前は。今のお前でやったら五代が壊れるまでし ちゃうだろ?」
「ああ、・・・・かもしれないな、うん。・・・・今ままで付き合ってて別にしたいなんて思ったこと はなかったんだが、どうやら五代は別らしい」
一条の言葉に椿は溜息をついた。なにしろ一条薫と言う男はモテた。
尋常じゃなく。おかげで彼のセックスライフは凄く豊かではあったものの彼のセックスに対す る考え方は歪みまくっていた。なにしろ一条がしたいと思う前に女達が体を差し出すので、 "セックスをしたいと思ったことが無い"とは学生時代の一条の台詞。一般学生にしたら何様だ という感じだ。と、自分を棚に上げて椿は考える。だから、一条は自分が惚れた女との蕩ける ようなセックスをしらず、今まで一条が付き合った女性達には申し訳ないが、本当に一条の欲 求不満の解消の道具にしか過ぎなかったのだ。又一条も、ソレの何処が悪いのか解かっていな かったし。そんな彼が一人よがりにならずにすんだのは、一重に椿がいろんな知恵を与えたか らだ。・・・・ポイントなのは相手を喜ばせるためではなくて、自分が快感を得るためには相手を どうしたらいいか、と教える事であり、そうでもなければ一条は聞きゃあしなかったが。
その点椿は違っていた。彼のモットーは何事においても楽しく気持ち良くだ。椿も一条と同じ ようにモテたが彼のセックスライフは非常に充実していたのだった。なにしろ椿は一条と違い 楽しむために努力を惜しまなかったので。そりゃあもういろんな事を試したのだ。
「俺は素材もいいが経験に基づく実績もある。俺がするなら間違いなく良くしてやれるけど、 お前はまだ素材の良さだけで押してるだろ。経験が足らないんだよ」
「経験か・・・・」
自分達を基準にしてはいけない、ということに彼らはどうやら気付いてないらしいが。
「そ、下手したら五代が嫌がる可能性だってあるんだぞ」
「それは困るな、俺は五代以外とセックスするつもりはない」
はっきりきっぱり、TPOもわきまえず言い放つ。
「だったら、焦るなよ」
しかし、椿も普通ではなかった。全然動じない。動じているのは二人の周囲の人間であって。 まるっきり普通に話している二人の内容がそんなんだとは考えてもいなかったので。
―――じゃあ最初のコレとかソレとかって一体何!!!とは共通して心の叫びである。
「焦ってるわけではない。只・・・」
「ただ?」
「もっと五代を喜ばせてやりたいんだ。俺がいい様に、五代もよくしたい」
「五代、よくないの?」
「馬鹿をいうな、俺がしてるんだぞ。よくない筈がないだろうが」
「そりゃそうだ」
「しかし、かなりテレ屋だから・・・・。恥ずかしがって中々コトに持ち込むのも大変だし」
「・・・・・・お前、言ってることと顔が正反対」
「ま、それも良いんだけど、たまには五代から誘って欲しいなあ、とか」
沈黙。誘う?あの五代が?
「誘うって、足開いて?」
椿の言葉に誘発されて、五代がしどけなく誘う様子が一条の脳裏にボンッ・・と浮かんだ。今ま での女達のように、来て、と? 両足を広げて、貴方のソレで貫いて、と?
―――――――ボタッ・・・・・と音がして。
あわてて一条が手で押さえたが遅かった。
「あ、やば」
「おまえ、・・・・・子供じゃないんだから、今更鼻血なんてだすかよ」
ガックリと肩を落とす。一条は内ポケットからハンカチを取り出し押さえる。
「・・・・悪い」
「なあ、欲求不満なの?」
「いや?・・・・そうなのかな?」
「4の2回?」
「いや、3の3回以上は確実・・・・かな?」
「おまえ、五代壊すなよ。2日に1ッペン、3回以上のお前のペースで犯ったら壊れんだ ろ?・・・・だから痩せてきたのか、あいつ」
「・・・・」
「反対にお前、少し太ったろ。五代から栄養吸い取ってんなよ。・・・・お前がそんなんじゃ、尚 更五代からってのは無理があるだろうが」
「そうか?」
「だって、五代、ウブウブだもん。男はお前が初めてだろ?あいつ」
「俺で最後だ」
「へぇへぇ。どうせ、鬼畜なセックスしてんだろうし」
「・・・・」
「初めてがお前じゃ、他の奴とは2度とセックスできねぇだろうし」
「させるつもりはないが・・・・・」
かわいそう、と胸で呟く。鼻血が止まったのか一条はハンカチを取ると椿の方に顔を寄せてき た。
「椿、おれは別にタダで協力しろ、とは言ってないぞ?」
「お?」
「それなりに報酬もある」
「おお」
「きっと、お前も気にいるはずだ」
「なんだよ」
「俺も色々考えたんだ。・・・でコレを使おうと思う」
「・・・・・電話?」
「直接参加はだめだが声だけなら許す」
「声かあ〜」
一条の提案に椿は考え込んだ。周囲の人も一緒に考える。――――― 声って一体なんの参加 なの!?
「ふっふっふ、そちも悪よのう」
「いえいえ、お代官様にはかないませぬ」
みめ麗しい男が二人顔をつき合わせて怪しい企み。二人ともとっても楽しそうで。
「なんだ、だったら最初から言えよ」
満面の笑みでOKサインを出す椿。
「やっぱり、俺たち親友だな」
と、これまた、会話の内容の割に爽快な笑顔の一条。
うんうん、と頷きあう二人。周囲の興味は話題の主である 五代 なる人物に集中する。
「で、この後どうすんの、お前」
「ここで、五代と待ち合わせだ」
ザワッ・・・・と周囲がざわめく。妙に緊迫した雰囲気が辺りをつつむ。――――――その時
「おう、五代、こっちこっち」
「あれ、椿さんも一緒なんですか?」
カラン・・・・とドアを開け入ってきたのは、確かに可愛いけれど間違いなく男であって。
!!!! うそっ!! うそよね!!!! そうよ、きっと彼のお姉さんかなんかよねっ!!
とは周囲の女性の心の叫び。だが、五代に届く筈もなく、あっさり五代は一条の隣に腰を下ろ した。
「ああ、ちょっと、相談にのっててもらって」
椿さんが? 一条さんの相談にのる? ・・・・嫌な予感が五代を襲う。
「ふうん・・・?」
とり合えず何か飲み物を・・・と、メニューに手を伸ばして、ふとテーブルの上にある一枚の紙 に目がいった。
「!!!!」
途端、真っ赤になって五代が立ち上がる。
「な、な、こ、これ」
「ああ、俺も勉強しようと思って」
サラリと一条はのたまった。
「椿に参考意見を聞いていたんだ」
「こいつがここまでするとはなぁ、おまえってば全く凄いよなぁ」
「こんどのは凄いぞ。天国に連れてってやるからな」
と鬼畜なセリフをはいてくれて。

「一条さんの馬鹿ぁ!!!!!」


さて、紙には一体なにが書いて合ったのでしょう?





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