泉枯れ果てしとき… 《三》







土砂降りの雨の中、俺達は縺れ合いながら殺し合う。
殴る、蹴る、噛み付く、抉る、引き千切る、腹の底から湧き上がる衝動に全てを委ねてしま おう。
叫びだしたくて、いや、実際に叫んでいたのかも。
血が流れている、もちろん0号からも同じ様に流れている。
肉のぶつかり合う音、骨のきしむ音、なのに、目の眩むような快感、血が滾って、楽しくて。
どのくらい殺し合いを楽しんでいただろう、呼吸が荒くなって、肩で息をする。もう、力だっ て入らない。
「ぐわあっ!!」
0号の一撃が石に入り鈍く砕けた音がした。激痛が走り、変身が解けてしまった。痛みに蹲 る。
霞んだ目で己を見ればボロボロな格好でこんな状況なのに思わず笑ってしまった。
「ぐっ!」
髪を掴まれて顔を上げられた。何時の間にか0号も人間体になっている。
――― なんだ、まだ 子供じゃないか。
0号が笑っている。きっと、自分も。
「もうすぐだね」
なにが、と聞こうとして血を吐いて咽る。・・・・鉄くさいな。
「わかっているんでしょ、もう、僕しかいないってこと」
体が熱くて、頭がボウッっとする。
「僕だけが、わかるんだよ?」
顔が寄って、――――――――――― 貪るように口付けられた。



「これ・・・・は」
出来上がったレントゲンをみて一条は言葉を失った。椿が食い入るようにフィルムを見つめて いる。
レントゲンに移ったアマダムから伸びた神経組織は網の目の様に入り組んで五代の体を覆い尽 くしていた。
「な・・・んで、だ」
もどかしげにファイルを開き前回撮ったフィルムを隣に並べる。その差に愕然とする。
「変身はしていない筈、だろ・・・・・」
なのに、この急激な侵食の仕方は。
「ほかの結果見てよう。2〜3日なんて待ってられるか、1時間で出させる」
椿が電話を手にとる。一条はただひたすら目の前のフィルムを見つめていた。



「ひああっ!!・・・あ!」
抱き上げられ、貫かれる。凶器のようなソレに体が引き裂かれた。
「ぐうっ!!うっ!」
新しく、血が流れる。俺の方が大きいの軽々と両足を抱えてもちあげられてしまう。いいよう に、抜き差しをされて、体が揺れる。
「ひっ・・・・・あぁ、いた・・・・いよぅ・・・!」
「痛くなんて、ない、くせに・・・」
嬉しそうな声。
「本当は、いいんでしょ・・・・?」
いい?
「だって、・・・締め付けてるよ・・・・」
耳元で囁かれて、カッ・・・と体が熱くなる。滾った自身を扱かれて、初めて己が感じていた事 を知る。
「や・・・・・!」
下から熱い塊で突き上げられ、受け入れたアソコが燃えるようで。
「あっ! あっ! ひいっ!」
ギリギリまで抜かれ、一気に奥まで貫かれる、もう、声も出ない。
――――― いい
「あっ、も・・・・もっと、ひいっ!」
俺の体の中でうごめくソレの感触は確かに人間の物じゃなくて、ソレ自身が意思を持っている かのように俺の中で暴れている。
あと、ちょっとでイク、という時に引き抜かれ、地面に落とされた。
「やっ・・・、な、ん・・・で」
振り向いてみる、0号の猛々しいソレは十分角度を保ったままそそり立っていて、俺は喉を鳴 らす。
欲しい、ソレが、欲しい。俺を貫く、凶器が。
「リントは変わらないね。弱くて非力で、偽善者ぶって。素直になればこんなに気持ちいいの に」
ゆっくりと俺に覆い被さってくる。待ちきれなくって、自分で両足を抱え体を開く。
「かわいい・・・」
「ひうぅっ・・・・・!!」
ゆっくりと、めり込んで来る物、ソレに自分から腰を振る。両足を捕まれ、さらに大きく開か される。
「・・・・奥まで、ね・・・」



カルテを見て、椿は下唇を噛んだ。
なんてことだ、気付けなかったなんて。
「なにか判ったのか、椿」
「・・・・・」
「隠さずに言ってくれ」
真っ直ぐ見つめてくる一条の瞳。
「・・・・・・この、フィルムを、見てみろ」
先ほどの五代のレントゲン写真を指差す。
「何か気付かないか」
言われて、じっくり見る。アマダムの神経組織が網目の様に張り巡らされているほかに、なに か?
「・・・・・?」
眉間に皺を寄せる。
「・・・・・椿」
神経組織の先が・・ぼやけているように見えた。
「この、先が・・・・」
「ああ、前の部分ははっきり移っているだろう」
「・・・・」
「この最新のフィルムでは、・・・アマダムの神経組織の先がぼやけているだろう? おそら く、溶け込んでしまっているんだと思う」
「とけ、こむ?」
「ああ、融合しているんだと思う。血液成分の数字も、より、・・・・未確認に近い値が出てい る」
「え」
「・・・・おそらく、脳の方も、侵食されているだろう」
なにか言葉を言おうとして、うまく声が出なかった。
「なにが・・・・」
「血液は全身に巡るだろう?・・・・脳にもだ。おそらく、五代の意思が脳へのアマダムの侵食を 阻んでいたんだと思っている。だが、より強くなることを求められて、アマダムが変化したん だ。筋繊維の中に少しずつ溶け込んで血液に溶け込んで、全身を巡る。そうすれば、いづれ、 脳にもたどり着くさ」
一条の心臓が痛いほど脈打っている。
「・・・じゃ・・・・」
「ここまで、きちまったら・・・・・・・もう、人間じゃ、ない」



何も考えられない。
「ねえ、こうやって、二人でいよう?」
抱きかかえられ、貫かれる。
「殺しあって、交わって、あの時のように、ほかに誰も要らないよ・・・・」
「あっ!いいっ!・・・んん!」
激しい抜き差しに、其処から溶けてしまいそうになって。
「僕達だけで・・・、今度こそ」
アマダムが激しく脈打っている。そこから全身を巡る何かが。
頭の芯が快楽で霞む。

――――― ドクン

いくつもの顔が浮かぶけど、なんでだろ、はっきり見えない

――――― ドクン

『お・・・にぃ・・・・ちゃ』
小さくなる声が、なにか、せつない と思ったのはほんの一瞬で

――――― ドクン
消えてしまう、何もかもが


――――― ドクン
激しく突き上げられて、もう


――――― ドクン
「忘れちゃいなよ」
「あ、あ」

なにも

         『五代』

トクン・・・・・・
え・・・?

         『五代』

な・・・・・に? やさしい、おと、が

トクン・・・・・・・
アマダムの脈動の下から聞こえた、俺の、心臓の音に、かさなって

         『五代』

呼んで、いる
トクン・・・・・

いつの間にかアマダムの脈動は聞こえなくなっていて
「い・・・・・ち・・・・ょ・・・・」

俺を、呼ぶ人

         『五代』

もっと、呼んで、ただ一人、俺を繋ぎ止める人


         『五代・・・・・』

一条さん!


「ひっ!!」
俺の変化に気がついた0号の動きが荒くなる。
「くっ!!」
でも、もう大丈夫。
「やっ・・・め・・・!!」
「ちっ!!」
あの人が俺を呼ぶから、戻ってくる。俺は『究極の闇』にはならない。
本当は、世界がどうなったっていいって、思ったことがある。日本だって、どうなったってい いって思ったことだってある。
でも、あの人がいるから、一条さんがいる今を護りたいんだ。
再奥を突かれて、俺は達してしまった。そのまま、俺の中の物も締め付ける。
「くっ・・・!!」
叩きつけるように、熱い物が流れ込む。奥へ奥へと何度も吐き出され、注ぎ込まれた。
そのままボロクズのように放り出される。
「・・・・また、なんだ。また邪魔する奴がいるんだ・・・・」
身体が動かなくて視線だけ向けた。
「・・・・・まあ、いいや、もう、あの時のような失敗はしないよ。もうすぐだものね」
叩きつけるような雨が、少しずつ身体の汚れを洗い流していく。
「待っているから」
「・・・・・」
「俺を探して?」
だんだん意識が遠のいていく。
密やかな0号の笑い声だけが、俺の最後に聞いたものだった。



―――――――――――――――――― 五代 ――――――――――――――――――――

俺を呼ぶ声 
俺の最愛の人
大丈夫、まだ残っている
愛しいと思う心

―――――――――――――――――― 五代 ――――――――――――――――――――

この人を護るために

「なります」
一条さん、俺なります
「五代・・・・」
この人の為だけに・・・・・・・・・・







言い訳
う〜ん、本当は1月14日の放送前にこのネタはできてたんだけど、あの放送の後ではダブル ものがあってやめようかなあ、と思ったんだけど書いちゃいました。今週中に残りをあげます。
気が向いた人だけよんで・・・・・・ね? それにしても、これって裏になっちゃうのかしら?

BY 樹   .

とりあえず表にしました(ひかる)   .





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