木星奪還部隊ガイアフォース

地球連邦軍・その組織構造と問題点


2.地球連邦軍組織所見

 

 地球連邦軍の軍としてもっとも特徴的な点は、その統帥権が文民による評議会によって握られている点である。これにより軍内部の一部軍閥が肥大化するのを防ぎ、また情報秘匿が行われないように監視している。この地球連邦軍評議会の下に地球圏統合本部があり、実際の作戦行動を指揮しているが、評議会の決定こそが絶大な影響力をもっているといわれている。

 地球に陸海空軍は存在しているが、実質は宇宙軍が主体である。宇宙軍は各惑星域およびコロニー域方面軍に分かれ、作戦行動を行うようになっている。その実数は25万、各方面軍は惑星上や衛星上、コロニー内に戦略基地を有しているが、基地ごとに厳密な作戦行動域があるわけではなく、柔軟な戦力の投入に対応できるようになっている。これは通常の最小作戦行動単位である一個小隊が20名前後という、従来の三分の一の縮小が行われたためである。旧アメリカ合衆国海兵隊の流れをくむ小規模ワンセット主義による兵力の高度化は、これに応じて必然的になされたとも言える。

 各惑星基地などの配置は公転運動により変わってしまうため、艦船がその代理を務めることがしばしばある。尚、すべての艦船は自動化が進み、数名の艦橋要員だけで航行可能となっている。戦艦は基地兼要塞であり同時に機動戦力でもある。もっとも艦艇は直接の戦闘に対して、特に質量兵器などに、ほとんど無防備であることから、戦力の長距離輸送が主任務となっている。

 加えて、各基地の最高指令官には軍政権が与えられている点も特筆に価する。宇宙では移動・輸送コストが高くつくので、兵員、物資等を可能な限り現地で賄うことが必要になるためである。再編成も現地で行われることが多い。小規模ワンセット主義、機動歩兵の導入も単位師団当りの増強策の一環である。また同様の理由で、緊急時には、作戦行動中の戦闘指揮官は他の基地へ、上層部を通さずに直接増援要請を出せる立場にある。結果として、これは一軍団がきわめて恣意的に行動できることを意味している。尚、マスメディアがこの不穏な事実を取り上げ、問題にした例はなく、連邦民衆の多くはこのことを知らずにいる現状がある。

 地球圏統合本部の下には方面軍のほか、技術局、情報局などの各局がある。とくに技術局や兵器開発部はテラフォーミングや基地建設、深宇宙探査といった事業に深い関わりがあり、コロニー管理機構に次ぐ宇宙産業市場となっている。これら各部門は宇宙開発初期の段階から軍産複合体の温床であり、醜聞が後を絶たない。しかし実は監視する立場である彼ら地球連邦軍評議会こそがもっとも軍の利権にあずかっているのである。

 


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