木星奪還部隊ガイアフォース

地球連邦軍・その組織構造と問題点


1.地球連邦軍成立の過程

 

 そもそも地球連邦政府は環境問題など全人類的課題を解消するために、国際連合の延長として発足した。つまりそれまでの地理的国家は、連邦統合後も政府機構などをほとんど変更せずに保存されていたといっていい。無論、国連憲章が新憲法として改正され、強制力を持っていたが、特に軍隊の存在に関しては各国家の考え方が著しく異なっていたため、統合軍としての体裁を持つまでにはかなりの年月を要している。よって地球連邦という一つの国家の中に、指揮系統を異にする軍隊が複数存在するという事態がしばらく続いた。

 やがてそれぞれの軍を大激震が襲う。地球圏の統合という人類史始まって以来の出来事で、国際安全保障の意味がまったく変わってしまったのだ。各軍では軍事費が大幅に削減される中で、その存在意義が問い直され、縮小を余儀なくされていた。結果、軍はその存亡を賭け、治安維持のほかに宇宙進出という新たな目的を見い出すに至った。これにより、軍事ではなく新天地を開拓する力として各国旧軍の統合が進むこととなった。

 やがて陸海空の他に宇宙軍が誕生するも、組織原理を小規模ワンセット主義(複合機能精鋭主義)としたため、宇宙軍エリートなるものが生まれ、軍機能中枢を占めるようになった。つまり地球圏統合本部がそれである。地球圏統合本部は宇宙進出の初期において絶大な権限を持つこととなった。いまでこそ宇宙における安全保障、治安維持のみがその任務であるが、民間機能が届く以前は、司法権すら持った時代があったのである。(これを軍法会議の延長と主張するむきもあるが、大筋の歴史家はそうは見ていない)

 こうした経緯で成立した地球連邦軍は当初から民主的風土を欠いており、依然不安定要素を多数内包していると言える。加えて、地球連邦軍評議会によるシビリアンコントロールはその機能が生かされておらず、政界、財界との癒着が今なお問題とされているのは周知の事実である。


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