模型少年の友 団塊世代の工作講座    その4


今回はシティーライナー 国鉄 117系新快速電車です 鉄道ジャーナル2011.9月号より

朝日新聞社編  世界の鉄道 ’82 より    1981年度ローレル賞受賞車輌
近畿圏の国鉄は、他の地域と比べて私鉄との競合区間が多いため、
特に京阪神間に急行用153系を「ブルーライナー」と称して、快速
サービスを提供してきた。しかし陳腐化による取り替え期にきたのを
機会に、より居住性を高めたオール転換式クロスの117系を登場
させた。特別料金不要の快速電車は人気を呼び、独特の形態も相まって
今回の受賞となった。
1980.10 の時刻表
列車名 区間 大阪発 京都着
 新快速
3638M
117系6連
姫路発京都行き 11:30 11:59
 急行
比叡
402M

165系東海型10連
大阪発名古屋行き 11:25 12:00
大阪駅を5分後に出た新快速は京都の手前向日町付近で急行に追いつき追い越し
1分早く京都に到着します。117系は急行料金の要らない俊足で車内も豪華な車両でした。
新幹線の岡山まで延伸により廃止になった急行鷲羽の車両を利用して誕生した新快速は
117系でシティーライナーの愛称のもとその存在価値を不動のものにし、
221系223系へと進化しながら現在にいたっています。まもなく225系が登場する予定です。
グリーン車はなく6両編成21本126両でスタート。6年後にマイナーチェンジした3編成18両が加わります。
先頭車の顔つきが特徴です。

三代目大阪駅桜橋口

117系新快速電車6連Oゲージ(1/45)のできるまで

 パソコン(CAD)を駆使した自作手法の紹介です    



  戦前の関西急電モハ52を彷彿させるカラーリングで
   昭和55年12月117系新快速が誕生しました。

    

    クハ117−101

    モハ117−101

   モハ116−101

    モハ117−102

   モハ116−102

   クハ116−101
   紙吹雪??
車体を製作時にくり抜いた窓、扉の残がいのすべてです。約600ヶ全部デザインナイフで切り抜いたものです。
1枚切るのに1分ほど、全部で600分10時間の仕事でした。

     

参考資料 とれいん 1979.11 bT9
鉄道ファン1979.12 Vol224 1980.5 Vol229
ヤマケイレイルグラフィックス 国鉄車輌形式集4 直流系電車 近郊編
国鉄電車ガイドブック 新性能電車 直流編
鉄道ピクトリアル 2010.9 No.838
そして何よりも 乗った記憶
概略工程 1.参考資料の収集
2.3面図の作成
3.材料、工法の選定、概略予算、所用時間の見積もり、開始完成期日の設定
4.車体筐体、大物部品(クーラー、台車、座席)、小物部品の単品部品図描画
5.展開車体の印刷、切り抜き、曲げ加工、組み立て
6.車体の補強
7.車体の塗装
8.車体の内装
9.大物部品の製作、塗装、取り付け
10.走行チェック
11.小物部品の製作、取り付け
12.外観補修、最終仕上げ
図面作成
(3面図)


 図面が基本です
  丁寧に描きます

図面の良否が後の工作の難易度、出来を
大きく左右します
時に参考資料に寸法ミスが見つかることもあり

トレースで楽をする
まずは参考図面をなぞると手間が省けます  
その結果を修正していきます。
先ずは尺度を考えないで適当に作図します。

とれいんの図面0番台は模型製作用として最適
描きたいのは100番台の為写真をもとに
もとの図面を変更します。
  マイテクニック
見た目が第一です。省略と誇張は必要です。 
この車輌の特徴は独特の正面マスクです
長細い窓とお多福のようなほほです。

CADソフト:TURBOCAD v12 キャノンシステム
 構成検討 材質、工法、工期、費用など 側面と屋根はスノーマットによる一体構成、
正面妻面は樹脂(レジンキャスト)、
アクリル板とアルミアングル材で補強した
軽量構造の非真鍮複合材車体です。
 部品図      面倒な計算は不要
     全てPCまかせ


三面図をコンピュータ(PC)上で分解加工すると
部品図ができます。展開図にするには屋根の
複雑なカーブの長さを求める必要がありますが
PCでは簡単に算出してくれます。

   けがき作業はプリンターまかせ
この展開図をEPSON PM−4000PXで印刷します。
巾329mmまで長さ1000mm以上厚さ1.3mmまで可で
厚紙対応機種の為紙送り方向にも寸法は正確です。
このプリンターは残念ながら生産終了となっております。

車体は0.5ミリ厚スノーマットです。
側面屋根一体で側面、屋根は内側に
2枚重ね構造です
車体製作 窓、扉などを切り抜く前に屋根曲げ部分に
曲げ癖をつけておきます。

     マイテクニック

窓は角が丸くなっています。
でなくなったボールペンで凹み溝をつけ、
デザインナイフで溝をなぞって切り抜きます
窓、扉など開口部分を全て切り抜きます。
大変地味な作業で一日一両分が限度です。
     正面マスクの製作

 複雑な形状も分解すれば単純形状です

正面(顔)はポリウレタン樹脂で作ります。
3面図を加工(輪切り)して部品を設計します。

   複数個作るなら型を作って
    コピーが一番


17枚の薄板を重ねて木型を作り
シリコンで反転して樹脂を注入します。
たった2ヶの為にこんなに面倒くさいことを
するのは、全く同じものが出来るので、
同じものを2ヶ作る手間よりかえって楽に出来、
後から追加も可能は大きなメリットです。
    マイテクニック

正面の屋根と窓から下の部分は
ポリウレタン樹脂製。
その為に木型を作成します。
    
17枚のアガチス薄板を積層して形状を出します。
一見面倒なように感じますが、
木の塊から形を削り出すよりもはるかに簡単。
板の重ね合わせ面が等高線として常に現れているので
形状確認が大変楽です。
出来た木型の正面部分をシリコンで型取りし
ポリウレタン樹脂を流し込みます

妻板部分も同様の手法で作成しました。

必要数: 正面2セット
      妻板(先頭車用)2枚
      妻板(電動車用)8枚
アガチス3mm板に図面を貼り付け
外周に沿ってカット

小物部品もパーツに分解した形状にして
厚紙等で作成、貼り付けて立体的な構成にします
出来た型を箱に固定してシリコンを流し込む。
完全に埋め込み、数時間後箱をばらして
裏面から型を取り出せば、
樹脂の注入型の出来上がり。
この型で20ヶ以上量産できます。

近所の歯科医師と話していたら
シリコンの代わりに寒天でも型は出来ると。
但し崩れやすいので数多くはとれないそうですが。

シリコン:信越化学 KE−14
注型するポリウレタンは主剤、硬化剤の2液からなり
混合すると数分で固まります。
紙コップにストローで混合して型に流し込みます。

ポリウレタン:テムコファイン プロ2000
組み立て   マイテクニック

車体側面を曲げ、前後に正面マスクと妻板を
包み込むように接合します。
車体側面には妻板の接合部分が現れません。
見た目にも強度的にも大変すぐれています。
正面も同様です。

なお最初から妻板、正面マスク共に包み込む
側面の厚さの分を差し引いたサイズにしております。
この車両は運転室扉位置が左右で異なっています。
接合部分が側面にないので悩むことなく
箱にすることが出来ます。

この後接合部をペーパーで研磨して仕上げます。
屋根の部分は広範囲に渡って研磨が必要になります。
マイテクニック
車体の強度アップにJ型アルミアングル材を使用しています

運転席隔壁は車体の捻れ対策に効果大です。
その他窓の上、裾部分に強度部材(平板、J型アングル材)を見えない工夫をして通します。
室内照明付なので角棒を通しますと目障りになります。
さらなる強度アップとして
@窓周りに透明PET板
 を窓ガラスの表現を兼ねてはりつけます。
 (塗装後に実施)
A屋根の内張追加、乳白色アクリル板で平天井化
 にします。
 (内装工事時に実施)

以上により軽量高剛性車体になりました。
塗装 プラサフ(プライマーサーフェーサー)で下地処理して
まずクリーム色の中塗り上塗りをします。
十分に乾燥(3日以上)ののちマスキングして
チョコレート色(正式色名はぶどう色2号)を塗装します。
   マイテクニック
マスキングテープは3枚重ねします
1枚では溶剤がテープを透過して先に塗った塗面が
柔らかくなり、マスキングテープのざらつきが
模様として転写されます。(いわゆる糊跡残り)
模型用***のテープがいいとか言われていますが
どのテープも大差なし。
テープは半乾きで剥がすと良いのは事実。
多少の糊跡は消滅することもあり。
クーラー
換気装置
クーラー、換気装置カバーは蒲鉾型の箱と
思えば簡単です。
車体同様に3面図から展開して部品図に。
仕切り板を中に入れて骨組みにし強度をアップ。
ひっくり返っても車体重量約1kg程度ではびくとも
しません。材料は0.5mm厚のスノーマットです。
 マイテクニック

通気孔、ルーバーなどはパターンを描いて
OHP透明シートに反転印刷し、光沢面を表に
なるようして、透明両面テープで貼り付けます。
ポイントはパターンを如何にそれらしく描くかでしょう。

オーソドックスな手法(洋白板エッチング)に比べ
手軽で安価にできました。そしてなによりも軽く。出来ました。
 
台車作成    マイテクニック
   台枠はアルミのL型アングル材
   ボルスターは燐青銅板
   外観はポリウレタンのお面で構成


DT50C、TR235B台車は写真を基に
作図し、要素に分解し薄板の積み上げで
立体的にを表現します。
DT、TRほぼ同じ形状なので一型ですませております。
シリコン型にとり24ヶ量産します。


この構造は軽くて適度な強度があり、
ベアリングは入っていませんが転がりは
悪くありません。
マクソンのモーターを搭載した吊り掛け台車
内張
照明
   マイテクニック

   内張の貼り付けはすべて両面テープ
   
   不織布にアクリル系粘着剤を染み込ませた
   のが両面テープ。はみ出ずべとつかず
   固定時間も不要で唯一の欠点は位置の
   修正が出来ないこと。

  両面テープ:TERAOKA  No7722 厚み0.08mm
室内の縦壁全面に透明PET板0.5mm厚
を貼り付けて車体縦面の剛性アップと
窓ガラスの表現を図ります。
その後室内の内張と屋根(天井)の二重化
を行います。

   マイテクニック
室内照明は実車と同じ光源蛍光灯と決めています
太さ3φ長さ15cmの冷陰極管(蛍光灯)2本
を乳白色アクリル板1mm厚に取り付け
これを屋根の内側にとりつけ平天井とします。

  秋月電子 15cm級冷陰極管+インバーターセット
蛍光灯の点灯にはインバーターが必要です。ユニットを床下中央部に搭載しております。
印加電圧7ボルト以上で点灯します。
会場を暗くして走行させると
白い光の帯は夜行列車そのもの。
LED照明ではこの雰囲気は
出せないでしょう
座席    マイテクニック
 食品トレーでおなじみのスチレンペーパーは
 軽量で座席にぴったりです
 
加工が容易なのでバック(背もたれ)、クッション(座面)
の形状と質感が巧みに表現できます。
欠点は強度が無いこと。

プラモデル用接着剤で接着、アクリル塗料
で枕カバー部を残して塗装します。
肘掛けは厚紙にパターンを描き貼り付けます。

座席はブロック化して車体内壁に取り付けます。
連結幌     マイテクニック
  波型の戸あたりテープは幌に最適
  車体への取り付けのサージカルテープ
  はカーブでも突っ張らずソフトなタッチで
  まことに絶妙です。
  
 住友3M 玄関ドア用波形テープ灰
 ニチバンホワイトテープ
網棚      マイテクニック
透明OHPシートにパイプパターンを描き、
透明PET薄板に貼り付け棚を表現し
窓の上辺に貼りつけます。

しかし
通常の目線では見えることはありません。
窓が大きく室内照明も明るいため敢えて取り付けています
蛍光灯同様  マイ こだわりです。
パンタグラフSW
5mm角程のSWをベースの手前側
中央に追加しております

実車同様に屋根上配管は通電されております
   パンタスイッチ(psw)
機能は
  停車中でも室内蛍光灯が輝き
  パンタを上げると走行する
仕組み
  パンタの台座付近にタクトスイッチを追加
  アームが上がるとON 下りるとOFF
  モーターへの供給電気は
  レール→前台車→屋根上配線(配管)→
  psw→屋根上配線→モーター→後台車→レール

  パンタグラフ:カツミPS100
調整 1.駆動力を掛けたとき空転しないかどうか。電動車の自重を鉛ウエイトで調整します。
  1M5Tのこの車両編成では 電動車980グラム、付随車650〜780グラムです
2.室内照明と走行速度のバランス。 
  蛍光灯は7Vから照度が適正になります。但し
  ブリッジダイオードで1.4vの電圧低下があるので実際は8.4v
  この時速度が適正になるようにモーターへの印加電圧を抵抗で調整します。
  (セメント抵抗5w22Ωを使用)
   マイテクニック
各種重さの鉛錘は釣り具屋さんに揃っています。
ハンマーで叩けば所定の形状に変形できます。

     スペシャルグッズ  の紹介

  釣り具屋さんでしか売られていない
  釣り名人という名前の瞬間接着剤は
  白化が少くしかもかカチカチにならない
  低白化ソフトタイプのアロンアルファ 
  これは逸品です
新快速のヘッドマーク、サボ、車番他の表示類はパソコンで作成、、
    
   図形処理ソフト:花子2010 ジャストシステム
   用紙:PLUS 超耐水光沢フィルムラベル

アンテナ、床下機器、スカート類は写真を見ながら作成取り付けるとぐっとリアルに迫ってきました.

いよいよ完成です。

          木目調の仕切りは競走する阪急6300などと同じえんじの座席と相まってシックな雰囲気を醸し出しています。
 
   姫路発京都行き新快速の完成です。 
    2010.9.23      製作期間3ヶ月