歴史・地理
一口に歴史本と言っても、ピンからキリまでありますから、人によってかなり志向が分かれるところですが、私の場合は下を見てもらえば、お分かりの通りです。かなり支離滅裂かな?
少なくとも「プレジデント」系の歴史本はないことは間違いないですね(苦笑)

新書アフリカ史
宮本正興,
松田素二
(講談社現代新書)
【類書なき好企画】
人類誕生〜現代、政治史から農業史と多角的な角度から″アフリカ″の歴史を浮き彫りにしています。共著なので読みにくいと感じられる所もあるかもしれませんが、色々な切り口からの歴史を知ることができ、類書が少なかったこの分野でしかも新書とは画期的な一冊!
フリーメイソン
西欧神秘主義の変容

吉村正和
(講談社現代新書)
【フリーメーソンを知りたい人のための入門書】
ゲーテ、ワシントン、フランクリン・ベンジャミン、マッカーサーなど歴史上の人物に少なからぬ影響を与えた秘密結社フリーメイソン。そのフリーメーソンの発生論から密儀や実際にどのような役割を果たしてきたのかを解説しています。実際に現在も密かに存在・活動するこの秘密結社に関心ある方は必読です。
ハプスブルク家
江村洋
(講談社現代新書)
錬金術
宇宙論的生の哲学

澤井繁男
(講談社現代新書)
中世の高利貸
ジャック・ル・ゴッフ(著)
渡辺香根夫(訳)
(法政大学出版局)
【アナール派史学の入門書として最適】
「ベニスの商人」を引き合いに出すまでもなく、神により与えられた<時間>を商品化してきた故に、キリスト教世界の時代変遷の中で色々な評価をされてきた中世の高利貸をアナール派史学の観点から分析をしています。同じく法政大学出版局から出版されている『煉獄の誕生』に比べて頁数も少なく、アナール派史学の入門書としては最適なんじゃないかな?
動物裁判
西欧中世・正義のコスモス

池上俊一
(講談社現代新書)
【西欧中世のもう一つの社会史】
法廷に立つブタ、破門されるミミズ、モグラの安全通行権、ネズミに退去命令など、13〜18世紀の西欧で実際に行われていた<動物裁判>をモチーフに、アナール派的史観によるアプローチで、アニミズムの駆逐とキリスト教社会成立を背景にした当時の法が対象にしていたものや社会風俗が良く分かります。
魔女と聖女
ヨーロッパ中世・近世の女たち

池上俊一
(講談社現代新書)
英国史(上)英国史(下)
アンドレ・モロワ(著)水野成夫,小林正(訳)
(新潮文庫)
パブ
大英帝国の社交場

小林章夫
(講談社現代新書)
とびきり愉快なイギリス史
ジョン・ファーマン(著)尾崎寔(訳)
(筑摩書房)
スコットランド 歴史を歩く
高橋哲雄
(筑摩書房)
スコットランドを通史的に概説した入門書です。貧困に喘ぐスコットランドが、いかにイングランドから酷い目に合わされても、合邦せざるをえなかったのか、英国の近代産業革命におけるスコットランド人がいかに<実学>や<実業>の分野でリードしたか、を再認識しました。スコットランドの象徴であるキルトやタータンが18世紀に初めて採り入れられたという点は、本書を読むまでは知りませんでしたし。
通史的な説明といっても駆け足にならず、歴史上の人物の人物像もきちんと押さえていますので、スコットランド史を概観する最初の一冊としてオススメです。
アイルランド―歴史と風土
オフェイロン(著)橋本槙矩(訳)
(岩波文庫)
アイルランドの小説家・伝記作家であるSean O'Faolainの手によるアイルランドの文化史・社会史。政治史・為政史ではなく文化史というアプローチにもかかわらず、政治の不在がこの国に様々な悲劇をもたらし、古き良きゲール語文化がいかにして廃れていく背景が感じ取れました。私の場合は勉強不足で人物や歴史的事件など知らないことが多かったのですが、アイルランドの歴史について通り一遍の基礎的な知識がある方なら、十分に楽しめると思います。
ドイツロマン主義とナチズム
ヘルムート・プレスナー(著)松本道介(訳)
(講談社学術文庫)
ドイツ 歴史の旅
坂井栄八郎
(朝日選書)
黒いスイス
福原直樹
(新潮新書)
観光名所、永世中立国としてのクリーンなイメージが強いスイスの裏の姿を記者としての観点から、麻薬、ナチス・ドイツ、核疑惑など色々な社会問題や歴史的な課題をテーマ毎に解説しています。一度でもスイスに行った事ある方なら「なるほど、そういうことだったのか!」と思える話が少なくないと思いますよ。これから旅行する予定がある方や漠然とスイス全般に興味ある方は必読です。
フランス現代史
渡邊啓貴
(中公新書)
【お手軽なフランス現代政治史】
パリ解放からシラク政権までの約半世紀にわたるフランス現代史についてを解説しています。首相と大統領が併存して、なかなか分かりにくいフランスの政治制度もこの一冊で分かったような気になるかも!?。
街道をゆく〈30〉愛蘭土紀行1
司馬遼太郎
(朝日文芸文庫)
街道をゆく〈31〉愛蘭土紀行2
司馬遼太郎
(朝日文芸文庫)
街道をゆく〈35〉オランダ紀行
司馬遼太郎
(朝日文芸文庫)


物語オーストラリアの歴史
多文化ミドルパワーの実験

竹田いさみ
(中公新書)
昨年シドニーに長期出張したのですが、そこで感じたのは「欧米でもなくオリエンタルでもない多民族国家」だということ。本書は外交史からオーストラリアという国を分析しています。国民性の記述に関しては、個人的なイメージとは若干相違がありますが、近年の外交スタンスの分析については非常に興味深かったです。
アラブが見た十字軍
アミン・マアルーフ
(ちくま学芸文庫)
現代イラン―神の国の変貌
桜井啓子
(岩波新書 新赤版 (742))
イラン革命からハタミ大統領再選までのまさに『現代イラン』を、7つのテーマからその実態を浮き彫りにしている力作です。この類いの本はジャーナリスティックな観点から書かれたものが多く、表面的な事実の記述に終始しているケースが多いのが現実です。しかし、本書の著者は女子神学校にも入学しており、そういった生の体験を通じて描き出された、「内側」からのイランの姿をとてもリアルに感じましたし、私の中で持っていたイラン像というものがかなり変わりました。文化・社会だけでなく国際政治という観点からも、恰好のイラン入門書だと思います。
物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国
黒川祐次
(中公新書)
肥沃な黒土の穀倉地帯、旧ソ連で最大の重工業地帯と恵まれた環境にあったが故に、逆になかなか独立国家を確立できなかったウクライナ。こうして見てみると、ウクライナという地域で起こった数々の事件のヨーロッパ史における重要性を再認識できると同時に、ウクライナの歴史はロシア・ソ連の歴史そのものであったと確信させられます。著者の方は現役大使の方で、文章も平易で記述のバランスがよく気軽に安心して一気に読めますし、新書の特性を生かした好企画だと思います。ウクライナに関心ある方、旅行を予定してる方、ちょっとでもロシアに興味のある方にも、一読をお奨めしたい一冊です。
クルド人もうひとつの中東問題
川上洋一
(集英社新書)
「クルド人」を中心に据えた中東の通史です。クルド人問題は、中東問題を論じるのに避けて通ることが出来ませんが、クルド人の関与した事件にクルド人という表現をこれまで必ずしも使っていなかった気がします。それに加えて、トルコ、イラン、イラク、シリアの各国の利害関係、各政党間の内ゲバ的な闘争、そして欧米諸国の様々な思惑などが絡み合い、問題が複雑になっています。本書は、ジャーナリスティックな視点ながら、そんな絡み合った糸を解きほぐして、クルド問題の全体像を浮き彫りにしています。
新書という手軽なフォーマットとして、今までありそうでなかった企画だけに、クルド人問題を知りたい人には是非オススメの一冊です。
日本の歴史をよみなおす
網野善彦
(筑摩書房)
網野歴史学が平易な言葉で分かりやすく語られています。従来の為政史観とは違った日本史の世界がここにあります。
続・日本の歴史をよみなおす
網野善彦
(筑摩書房)
異形の王権
網野善彦
(平凡社ライブラリー)
民俗学の旅
宮本常一
(講談社学術文庫)
【地道なフィールド・ワークの記録】
『忘れられた日本人』などで知られる宮本常一氏が、自身のフィールド・ワーク体験、柳田国男や渋沢敬三などの恩師への回想をつづった自伝的エッセー。民俗学というと、柳田国男や折口信夫などのイメージが強いが、ひたすら地道なフィールド・ワークと実際の体験から生み出される仮説に氏ならではの姿勢が感じ取られます。こういうのが民俗学の魅力(あるいは苦労の必要さ)を感じさせる一冊です。
新編・鬼の玉手箱
外部性の民俗学

小松和彦
(福武文庫)
神々の精神史
小松和彦
(福武文庫)
悪霊論
小松和彦
(青土社)
異人論
小松和彦
(青土社)
鬼がつくった国・日本
小松和彦,内藤正敏
(光文社)
日本の呪い
小松和彦
(光文社)
日本社会の歴史(上)(中)(下)
網野善彦
(岩波新書・新赤 500〜502)
【網野歴史学の待望の通史】
従来の歴史教育の視点は、あくまでも明治政府の国策を継承したものであり、その従来の為政史観を見事に相対化させてくれます。上中下の3巻のシリーズです。