泰阜村の在宅福祉

 私の所は、在宅福祉という言い方をしましたけれど、介護保険の場合、さすがの神奈川県藤野町でも、要介護者が一月に10万円のサービスを受けると、利用者が1万円払うようになっていると思います。これは日本の制度ですから当たり前の話なのであります。
 私の所は、10万円サービスを受けると、本人は4000円だけでいいんです。6000円は村が肩代わりをしているわけです。

 さらに、本当に在宅福祉サービスをやるとなるとですね、もちろん要介護度4とか5で、介護者無しで自宅におるというケースの人を看るにはですね、御飯を3回たべて頂いて、おむつもあまり濡れておらんようにするとなると、ヘルパーも6回とか7回行くんです。
 『身体介護』1時間4020円なんてしておりますと、ヘルパー7回行くと2万8000円になっちゃうんですね。2万8000円かける30日と言ったら、80万くらいになる。デイサービスであろうと何であろうと、本気で在宅サービスをやると100万近くかかっちゃうんです。

 じゃあそれをどうするか。特別養護老人ホームへ行くと35万8300円で終わるんですよ、要介護度4とか5の人でも。かかってもかからなくても、それだけ貰っておるんですよ。私は、うち(泰阜村)にもある特別養護老人ホームの、今民間の理事長をやっておりますが、特別養護老人ホームにはしっかり儲けろと言っておりますから(笑)。限度額いっぱいかかっちゃうんですよ、何故か。これが非常に実は矛盾があるんです。この話をするとちょっと長くなるので止めますが、70万80万かかっちゃう人がおるんです。


泰阜村の在宅介護風景

  要介護度4で約30万ですが、70万かかって40万どうするか、という話になるんですが、前からうちは在宅介護サービスをやっておるんで、どうするかという時に、結局、最終的な結論は、私が、介護保険懇話会とか、議会でも認められましたが、とにかく、在宅福祉の村としてやってきたということで、ここは一つ、私の政治姿勢もあるんで理解して頂いて、ということで、その『上乗せ分』全部村がもっております(驚きの声)

 従ってうちはですね、要介護度4で3万円ですね、そのうち4割、1万2000円払えば、80万でも90万でもサービスを受けられる、というシステムで介護保険をやっておるんです。何故かと言いますとね、(要介護者が)家におるんで、うちで亡くなる方が多いんです。ドクターが365日、村中を飛び回っておるんですが、終末期医療が在宅。病院に入院して無駄な事をしない、と言うと、「村長はすぐそういう事を言う」(笑)、と言われるんですが、家で寿命が来るんです。
 そうなると、医療費が、あまりかからないんです。うちの村はたぶん今まで長野県120市町村、合併して118ですが、老人医療費が低い方から3番目とか4番目とか2番目とかだったんです。平成15年度は、たぶん一番安いと思います。一人当り45万円ぐらいなんですね、老人医療費が。全国平均が65万円ぐらいで、一番高い所で福岡や北海道で85万円ぐらいでございますから、いかに安いか。医療費が安いんで国民健康保険では長野県で平成14年度で一番安い。一世帯当たり6万9000円でやってきました。

 今年も上げずに来ておりますが、それでも二つ、わたし(の村)よりも低い村も出来ましたが、そういうふうにして医療費を下げてですね、その分を福祉に回すという社会保障の枠組みの中でやっています。これ一つとって見てもですね、国保は赤字じゃ無い、介護保険だって上乗せをしてもきちんと保険料としてやっておる。老人医療費だって、こんなに安くなっている。国は医療費が上がって困ると言うけれど、どこが小さい自治体でまずいのか、と言うような話をよく言う訳でございます。

 従ってこれをもし、国が医療費を泰阜並みにしてくれたらですね、30何兆なんて、毎年1兆上がる医療費なんて、25兆くらいに下がってしまうんですね。それ一つをとっても、小さい所では駄目だなんて、よく言えたものだな、なんて私は一人でいきがっておるんです。そう思いますと、決して小さいから駄目だとか何だとか言う事では無いのではないか。

 そういう事を思いますと、これからの地方自治の行政ってことを考えてみても、小を大にするという発想ではなくて、これは元自治省官僚で元兵庫県知事の貝原さんという方が盛んにいわれておるんですが、むしろ大を小にする方が、行政サービスというのはやっぱり良い、と、私は考える人間でございます。むしろ小さくして行く方がいいのではないかと。小さい単位の方が良いのではないかと思っております。(何でも小さければ良いと言うものでも無くて、これから話しますが)


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