もう一つはですね、これからの行政を考えた場合、自治体は果たして大きい方が良いのかと言う問題です。 これからの行政を皆さんは、どんなふうに御考えになっておりますでしょうか。今までの日本の国というのは、戦後、復興をした過程を振り返って見ても、子供達の教育を受ける学校を新しくきちんと建設しようとか、交通網を整備しようとか、いわゆる社会基盤整備をしようという事で、みんなが同じような基盤整備を競い合って進めてきました。 私は、この藤野町の事を全然知らずに話すので、外れるかもしれませんが、恐らくみなさんここに住まれておりましてですね、道路をこれ以上もっと広くしなおせというようなことを、考えられている皆さんはおるかもしれませんが、そうしなければ、生活出来ないという事はもう無いと思うんですよ。私の村でさえ、19も集落が別れてですね、福祉サービスを受けるにも道路が基本なんで、とにかく、未だに「道路を直せ道路を直せ」、というのが私どもの行政で、歴代村長ずーっと道路を整備するのが大きな仕事でございました。 私の村ももちろん、今でも道路整備というのがございますが、村民はですね、「2.5メートルの道路を5メートルにせよ」との要望が今でも毎年どんどん各集落からでます。私が、もう広げなくてもいいじゃないかと言うと、 今、脳硬塞とか、いろんな病気で入院しますと、ある程度、特に高齢者の場合、症状が固定すると病院においても儲からないんですね。だから帰れっていうことになるんです。うちの村はなるべく家族が受け入れるようとしようとしてますが、最近はそれでも嫌だといううちもでるんですよ。これ困っちゃうんです。藤野町はまだ、田舎の風情がございますから、受取る方も多いとは思いますが、田舎でさえ嫌だという方が出る。 あの老健施設、の期限の事を覚えておいて下さい、て言われますんで、施設をたらい回しにされるということになっちゃう。これは本当に可哀想なんですが、それでもうちはショートステイとか受け入れてます。だけど脳硬塞とかで半身動かないって方が来て、じゃあ明日から生活となるとすぐヘルパーも行かなければならない。ということになれば、それは道路は2.5メートルを5メートルにしても、それほど生活には影響しないけれども、ヘルパーが明日から行けんとなると困ってしまう、という事を思いますと、むしろ、そういうことがこれからの行政ではないのかと、私は思えてならない。 ![]() 泰阜村の風景 それからうちの村でさえですね、田舎なんで、おじいちゃんおばあちゃんも居るんだから、子供くらい面倒見てもらえとか言うのだけれど、とにかく働きに行くためにわが子を保育園に預けたいなんて話も出て来ます。従ってうちも、まあ地理的条件で二つ保育所を持っておりますが、どちらも、いま0歳児からあずかっています。0歳児も1歳児もそれから延長保育もやって、働くお母さんや、(良いかどうかは判りませんよ、私は3歳くらいまでは自分の子供は自分のところで育てるというのが本当は望ましくて、そういう日本にならなければいかんと思っておりますが)、それでも、私も行政マンでございますから、村長ですから「多様な保育ニーズに対応し(笑)」と演説して、0歳児保育も1歳児保育もやておるわけでございます。 そうなると、それが大変有難いと言われる。こういう行政をやらなければならない時代になっている。これは何かと考えれば、学校を建設したり立派な建物を作ったりですね、道路を直したりするよりかは、安心して老後を送ったりですね、子供達を安心して預けて働くという子育て支援でありますとか、学校教育をちゃんと町が責任をもってくれるとか、まさに福祉とか子育て支援とか教育とか言うような事が、今皆さんの行政への要望の中心になっているのではないか、ということを思うんです。 |