泰阜村『自立の道』 2

 ありえないに決まってるんです。
 べつに藤野町だけの問題ではございません。一番多く地方交付税を貰っているのは、政令指定都市、大きな所なんです。みんなまいっちゃうんですから。藤野町一つだけがこの世から消えるなんてことはございません。心配しなくてもいい。テレビを見た人が、「泰阜村がやっていけるのなら全国どこの自治体でもやっていける」と、うまいこと言うなあと(笑)、そのくらい財政力のない村。だから、地方交付税もですね、減るけれども、0にはならない、ということは間違いない。どこまで減るか、それは、地方がまいっちゃうような事はできない。
 今、仕事を市町村にやらしておる国家がですね、市町村が運営出来んような事をやって、国が国として回って行くのかどうかということですね。今の小泉さんがやっておる事といったら、頭と心臓だけを強くして、まあ小泉さんと竹中平蔵さんですね、でも手足がなかったら、どうやって人間が生きていけるかということになれば、そんな事は出来ないと思います。だから0にはならない。じゃあどこまで削られるかといったら、まあ、私の所は17%っちゅうことですね、平成10年14億5000万位だった交付税を9億円でございますから、どうですか、5億というと、約40%減るって事に決めたということでございます。

 ただですね、確かに今年の三位一体改革を見ていると、それよりも、もう少し減るかなっていうことまで覚悟しなければいかんのかなと思っております。それくらい厳しいわけでございますが、私ども、借金の返済も大変で平成9年からですね、もう、やってけんということで取り組んで来ました。役場の一般職員もですね、平成9年から今年までに一般職員、正規職員を17人くらい減らしました。まあ嘱託でカバーしたところもございます。
 平成14年に、助役を置かない条例というのを定めまして、まあ人口1万人なら別だけれども、私どもの所で、そんな、フルセットはいらないということで、助役を置かない条例を定めました、議会議員も定数を減らしました。それからあとですね、過疎の山村でも実は、住民要望に答えられたんです。あれやれこれやれといわれれば、はい判りました、はい判りましたと、なんとかできたんです。だから、いっぱい小さな補助金や交付金というのがあって、民謡クラブにも5万円、何とかクラブにも何万円、そういのがいっぱいあるんです。山村ですからうちへ道路を、救急車も入れない、という所にはですね、道路を改良するのに、改良って、個人の家に入るのに、補助金を8割だしたり9割だしたり、なんてこともやったり、いっぱいそういうものがあるんです。

 で、全部、洗い出しましてですね、これは廃止、これは2割カット、これは3割カットということをやって、原則全部2割カットということにして、住民懇談会をやったんです。ただ私は福祉の継続、福祉を守る村長という事なんで、まあ福祉サービスだけは守る、一応村長なんで政治姿勢もあっていいじゃないかと、いっておりますが、私の報酬も20%カットでございます。
 で住民懇談会、19集落でやってですね、村民の皆さんに20%全部、だから民謡クラブにいってた補助金5万円が4万円になり、遺族会に6万円いってた補助金が4万8000円になる、そういうところまでやっておりますが、全部やって、私の報酬も20%カットした。一人くらいですね、「村長、そんなにカットしなくていい」という人がいてもいいのに、一人もいなかったですね(笑)。誰一人。私を助ける人はいなかったですね。

 それでやって、あと借金返済のピークを超えたら多少は減って来ますから、いけるとおもっておりますが、それでもなおかつということで、今人件費が平成10年度に4億8000万の人件費が3億3000万くらいまでになりました。これだけどね、3億円くらいまでに、もうちょっと減らさなければならないと思ってる。
 自立のために、財政が厳しい厳しいという話の中でね、今まで何かを聖域化したらやっていけません。だから私は職員の給与も聖域ではないと職員にも言っておりまして、もちろん、職員を路頭に迷わすようなことはやりませんけど、私はだけど、山村なので、職員の数を減らすと言うのはあまり賛成出来ずに、(まあ減らしたりもしましたが)、これから先は、まあ800万円1000万円かかる職員よりも500万円の職員を二人使った方が良いというような発想すべきかなと思っております。

 そういう意味で、泰阜村の職員まで国家公務員と同じ給料を使う事はない、とそういうことを言っておりましたら、長野県の自治労が「村長、あんまり過激な発言をしないようにしてほしい、影響力が大きいから」なんていわれておりますが、しかし、私はですね、そういうようなことでもしながらでも、やっぱり自立して行くためにはやむを得ないと思っておりまして、最終的には職員の給与も聖域ではないと考えております。


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