相模原市との合併に反対する理由

小さな町が好きな理由』をそのまま反対にすれば、『町が大きくなる事に反対する理由』にもなりますね。ここではそれ以外に、特に現在進められている相模原市との合併についての反対の理由を書きます。

1 各町の住民の心が通ってない

 いかに小さな町が好きな私でも、合併するそれぞれの町の住民が、『この合併で良い町ができる。』と、心から賛成し希望を持っているような合併なら、私個人の気持ちは抑えて、その合併を祝福もするし、新しくできた町の発展に力も貸そうと言う気持ちにもなります。
 しかし、今進められている合併はとてもそんなものではありません。

 相模原市で、この合併に関するアンケートを、住民1万人を無作為に選んで行ったのですが、その結果がこれです。アンケートの回収率は35.8パーセント。3人に2人は返事もよこしませんでした。合併について考える気すらないのでしょうか。
 回答を寄せた35.8パーセントの内、合併すべきと答えたのは15.3パーセントだけでした。
 相模原市は、『合併する事もやむをえないと答えた30.5パーセントと合わせて、合併を容認する方が46%となっています』と結論付けていますが、これには無理がありはしないでしょうか。


 だって、この設問の前の質問が
『少子高齢社会の到来や、地方分権が進む中で、地方自治体は行財政基盤を強くして、自立して行く事が求められています。このため、全国的に多くの自治体で合併協議が進められている事について、どのように考えますか』
なんです。
 こんな質問をされたら、『合併もやむをえない』と答えてしまうのも人間の心理として当然でしょう。なんかこのアンケート、誘導的なのです。
 それにも関わらず、『合併を検討するよりも、無駄な経費を省き、行財政改革をすすめるべきだと思う』と答えた人が、かなりの割合でいるんですよ。

 これで相模原市民の民意は、合併賛成にあると結論付けられたことになるのだそうです。
 今回の相模原市の市長選挙(合併問題と言う争点があるのに投票率33%)でも、合併反対派候補二名の票を足したら、当選した現職の票と全く互角でした。「この合併は嫌だ」と言う根強い相模原市民の存在があるように見えてなりません。

 津久井郡の方も、決して合併に賛成一色ではないのです。津久井町は、まあそれでも積極的な方ですが、城山町は合併に消極的な町長が当選したし、相模湖町では合併の賛否がまっぷたつに別れています。

2 合併の進め方に無理がありすぎる

 合併したら、藤野は相模原市に「大切に」扱ってもらえるのでしょうか。
私にはそうは思えません。何しろこの合併、住民がそれによって幸福になるかどうかなんかはどうでもよく、とにかく『合併したいから合併する』ものに見えてならないのです。

 相模湖町では町長選挙では合併推進の候補が僅差で当選しましたが、この町長の公約である、合併の是非を問う住民投票を行った結果、今度は僅差で合併反対が多数になりました。しかし、相模湖町の町長は、この結果を無視して合併を強行しようとしています。

 特に一番問題だと思うのは、『合併しなければやっていけない』という雰囲気を煽って、住民を不安に陥れて合併を推し進めようとする動きがあることです。(始めは藤野町だけだと思ってましたが、どこの町でも同じ事が起こってたようですね)

 どこの町でも、いきなり降って湧いたかのように『この町は財政破綻寸前だ。合併しなければもうやっていけない』という主張が一気に高まりました。確かに財政状況が厳しい町もある事はありますが、いずれの町も都心への通勤圏でもあり、それなりに税収もあり、本気で財政改革に取り組めば、決して『やっていけない』という状態ではなさそうです。
 私には、全く産業もなければ観光資源もない、都会から遥かに離れた地方の過疎の町村が、『いよいよこれではやっていけない』と言うのなら判るのですが、少なくとも津久井郡の各町が、『合併しなければやっていけない』と言うのは諦めが良過ぎるように思えます。
 もしくは自らを改革する意欲がないとか。

『合併しないとゴミの回収に来てくれなくなる』
藤野町も含め、これもよく広まった噂でした。
 噂どころか、実際に相模原市の市長は、急いで行う合併に批判的な城山町の町長に対して、「合併に参加しなければゴミ処理は受け入れない」と言って来ました。結局、城山町の町長が、「ゴミの回収を引き受けないと脅迫されている状態では、城山町民に合併の是非を問う住民投票はできない」とつっぱねた為に、「城山町が単独で残っても、ゴミ処理に応じる」と言って来ました。じゃあ、始めの「合併に参加しなければゴミ処理は受け入れない」という理屈はなんだったんだろう。

 津久井郡4町は、ゴミ処理や消防・救急などの行政サービスを広域組合を作って行って来ました。確かに相模原市との合併が成立すれば、この組合は解散して、相模原市の組織と一体化する事になります。しかしだからといって、これらの行政サービスを合併に反対する勢力に対する脅迫の材料に使うというのはどうでしょう。まるで、住民を追い出すために生活基盤を破壊しようとする地上げ屋の手口です。

 相模原市は中核市、将来は政令指定都市を目指しています。それだけ、その地域の中核を担う役割を自認しているわけです。
 総務省は、たとえ合併を選ばなかった自治体であっても、それによって広域行政サービスの低下するような事態を許さないよう通達しています。
 熊本や山口では、合併しない事になった自治体が、合併した自治体と新しい広域事務組合を設立する事例や、事務依託の協定を探る事例もあります。
 これが本来の『中核市』が採るべき姿勢であって、肩書きに見合った人格・徳だと思います。肩書きに見合った人格のない人間は世の中にありふれてますが、上司の選べない会社の話ならともかく、わざわざこちらから合併して配下につきたがる事もなかろうと思います。

 それくらい、今の合併は露骨に脅迫的な圧力で進めらているのが目につきます。
「無理を通せば道理が引っ込むだろう」と言わんばかりの強硬なやり方がどんどんまかり通り、合併への道筋が粛々と作られて行くのが悔しいのです。合併せずに単独でやって行くのは怖いと言う人もいるかもしれませんが、こんな脅迫で出来た市に組み込まれる事の方が、今の私には恐怖に感じさせます。

3 合併した方が将来『破綻』するのではないか?

 実は最近になって、合併した自治体が、将来の予測を誤ったのか、『このままではやっていけない(笑)』と慌てて財政の見直しを迫られている事例が発生しています。しかし、本来は『単独では、このままではやっていけない』町が、『合併すれば大丈夫』だから合併したんじゃないでしょうか。(こういった破綻事例の紹介も、いずれアップします、気長に待ってて下さい)

 相模原市は3年前に中核市になりました。それによって、県が担当していた1256の業務を引き受け、財政負担が急増したということです。3500億の借金を抱え、公債費負担比率は神奈川県ワースト3位。財政力はある町なんですけどね。でも財政の硬直化が相当進んでいます。
 津久井郡と合併したら、津久井郡にも相模原並の行政サービスを提供して、合併特例債の借金を返しながらの長い日々が続きます。
 果たして、そんな相模原市に津久井郡を受け入れて行政を運営するだけの余力があるのでしょうか。こんな資料もあります。

 このグラフは、去年の秋に「津久井との合併を考える相模原市民懇談会」が発行した、『合併問題市民懇ニュース』からの引用です。これを見ると、どうも相模原市は平成20年頃から財政的に谷間の時期に落ち込むらしい。
 人口の増減が穏やかにしか推移しなかった藤野町と違って、相模原市は近年まで大変な人口増を経験しました。(
昭和29年に2町6村が合併して人ロ8万人でスタート。昭和62年には人口50万人を突破。平成16年現在、62万人を超えている。)
 町の急激な拡大に対応するために、様々な事業を展開し続けてきました。もちろんこれらの事業は住民のサービスの為、やらなければならない事だったのですが、いよいよここで財政の建て直しを迫られている正念場に来ている事は確かなようです。

 いや、もしかしたら、相模原市は、『津久井郡と合併する事によって』、この財政の谷間を乗り切ろうと考えているのではないでしょうか。合併特例債や、津久井郡に本来降りて来ていた地方交付税、これらを、あてにしているのかもしれません。

 どうも藤野に限らず津久井郡の町民は、相模原市のような大きな町に吸収される事によって、津久井郡を救ってもらう、という意識があるように思えてなりません。しかし実態は、そうではなさそうです。津久井郡の町民は相模原市に甘い期待をよせ、相模原市も津久井郡との合併に甘い期待をよせている、そんな感じでしょうか。

 私には、これから荒波のような財政危機を乗り越えなければならない相模原市に吸収されるメリットを感じません。荒波に巻き込まれ、飲み込まれる可能性も大きいと思います。