第15話 悟空、またも追放!
再び、山と砂丘を越え、天竺への旅を始めた。幾日も野宿をして、ようやく山間の家を見つけた。
今夜はそこに泊めてさせてもらおうと、門の前に立ち呼んでみた。
「どなたかいらっしゃいますか?」
「はーい...。わっ、猿と豚と河童の化け物だー。」
「じいさんや、何をそんなに騒どる?」
「ばあさんや、見てくれ。化け物がきたぞ。」
「わっ!」
「驚くことはありません。猿は孫悟空、豚は猪八戒、河童は沙悟浄と申しまして、
わたくしの弟子です。」
その言葉に安心した年寄り夫婦は、三蔵の一行を招き入れると夕食をもてなした。
「今夜は本当にありがとうございます。ところでそのお子さんは?」
「せがれの息子でございます。」
「せがれって人は何処にいるんですか?」
「今、留守にしています。実は山賊の仲間に入って、旅の方を襲っている困り者です。」
「それだったら、俺に任せてくれ。叩きのめしてやる。」
「それは勘弁してください。たとえ山賊でも、たった一人の大事な息子。私達の面倒も
見てもらわなくてはなりません。」
「そうだよ、悟空兄貴。自分中心で物事を考えちゃいけないぜ。なぁ、沙悟浄。」
「そうそう、余計なお節介はやめて、とっとと寝ちまおうぜ。」
三蔵達は離れ小屋に寝床を作ってもらい、眠りについた。
その夜更け。年寄り夫婦の息子はたくさんの仲間を連れて帰ってきた。仲間のひとりが馬小屋に白馬がつながっているのに気づいた。
見かけぬ馬がいるということは、客が泊まっているはず。他の仲間と一緒に襲おうとした。しかし、他の仲間は腹が減っているので、飯を食ってから襲うことにした。
それを聞いていたじいさんは、山賊達が飯を食べている間に離れ小屋に行き、息子達が襲ってくる事を説明し、三蔵達を裏口から逃がした。
山賊達は飯を食った後に、三蔵達が眠りにつく離れ小屋を襲った。しかし、そこはもぬけのから。山賊達は三蔵達が逃げた後を追いかけて捕まえた。
悟空はうれしそうに腕をまくり応戦しようとした。三蔵は倒さないで追い返すだけにするように悟空に命じた。しかし、血が騒いでいる悟空には、聞こえるはずが無い。
悟空は如意棒で、ひとり残らず倒してしまった。足元で倒れている山賊に、自分達が泊まっていた家のせがれは誰かと訊ねると、すでに悟空が倒してしまい息絶えていた。
悟空はまずいと思ったが、すでに遅かった。三蔵はそれを見るなり、緊箍呪を唱えた。悟空は頭を抱え、のたうちまわった。
「お前のような者は、弟子でもなんでもない。私の前から消えなさい!」
三蔵が緊箍呪を唱えるのをやめると、悟空はしょぼくれて、一行から外れていった。
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