第4話 三蔵法師と玉龍
悟空が五行山に閉じ込められてから500年という月日が経った。この頃、中国は「太宗皇帝(たいそうこうてい)」という人物が治めていた。
しかし、世の中は争いが絶えず、皇帝は悩んでいた。
皇帝は人民が仏の力によって罪から救われ、長く平和な世の中が続くよう「天竺(てんじく)」にお経を取りに行く者を探していた。
その時、名が挙がったのが「三蔵法師(さんぞうほうし)」だった。
早速、皇帝は三蔵に馬一頭と二人の弟子をお供させ、「長安(ちょうあん)」から送り出した。
長安を出て、さびしい道を歩き出した。三蔵をお供した弟子達は、果てしない旅を思うと既に心細くなっていた。
しかし、三蔵はやさしい言葉をかけて勇気づけた。
やがて、一行は、「法雲寺(ほううんじ)」というところで、一夜を明かした。
翌朝、暗いうちに先を急ぐ。しかし、足元が良く見えず山道の途中、一行は穴に落ちてしまった。
そこは、魔物達の住家だった。二人の弟子は魔物に食べられてしまった。あまりの恐怖に、三蔵は気を失ってしまった。
しばらくすると、一人の老人が通りかかった。老人は三蔵のもとへ降りてくるなり、「フーッ」と息をかけた。
三蔵は気を戻した。三蔵はお礼をいうと、老人は「鶴」になり、白みかけている空に消えていった。
実はこの老人、太白金星だった。三蔵の目の前に一枚の紙切れが落ちてきた。「行く手に何があろうと、天はお助けする。辛抱し、挫けるな。」と書いてあった。
気を取り直し、助かった馬と旅を続けた。しかし、お経を読める以外、力のない三蔵は行く末を案じて途方に暮れていた。
しばらく歩き、ある山の頂で休んでいると、麓から声が聞こえた。
「お師匠様!!」
「そなたは...。」
「石ザルの孫悟空です。」
「なぜ、こんなところに?」
「とにかく、ここからだしてくれ!訳はあとで話すからさぁ。」
「どうやって助けたらよいのやら...。」
「山の天辺に貼ってある紙切れを剥がしてくれ。そしたら、あんたのお供をさせて
もらいますから。」
三蔵はおふだを剥がすと、悟空は山の麓から這い出てきた。約束どおり、三蔵に訳を話した。
こうして500年間、閉じ込められていた悟空は三蔵のおかげで自由を取り戻し、天竺への旅のお供をした。
少し行くと、突然、山賊が現れた。しかし、悟空には朝飯前。山賊が100人だろうと、1000人だろうと天界を揺るがした強者。
如意棒を一振りで、山賊は全員死んでしまった。見かねた三蔵は...。
「なぜ、そのような惨い事をするのだ?山賊を追い払うだけで、命までも奪う必要は
無いのではないか?」
「こうでもしなけりゃ、お師匠様の命が危ないじゃねぇか。」
「いいえ。たとえ、殺されても殺してはなりません。」
「うるせぇ!こう見えても俺は数え切れないほど、悪人や魔王を倒してきたんだ。
一々情けなんてかけてられるかぁ!」
「そのような行ないだから、山に閉じ込められたのであろう。」
「だったら一人でいけば?俺はこの旅から降りたから。あばよ!」
花果山へ戻ろうと思ったが、龍王や観音から戒められ、渋々と三蔵のもとへ戻った。
三蔵は悟空が戻ると呪文を唱えた。すると、悟空の「緊箍(きんこ)(=悟空の頭にはめられた輪)」が締まっていった。
悟空は頭を抱えて転げ回り、ぎゃぁぎゃぁとわめきちらした。
三蔵は、再びこのようなことが無いよう戒めると、悟空は土下座をして謝った。
悟空は心を入れ替え旅を続けた。しばらく行くと、鷹も越えられないと言われる「蛇盤山(だばんざん)」という険しい岩山にさしかかった。
一匹の龍が三蔵に襲いかかった。空かさず、悟空は三蔵を抱えて守った。しかし、龍は隙を見て馬を飲み込んだ。
悟空は三蔵を、岩陰の安全な場所に隠すと龍に飛びかかった。龍は川ヘビに化け、草むらに逃げ込んだ。
実はこの龍、西海龍王の息子「玉龍(ぎょくりゅう)」。以前、悪戯をして火事をだしていまい、処刑されるところを観音に助けられ、そのかわりに三蔵のお供をするよう命ぜられていた。
観音は天界から舞い降り、龍の体に息を吹きかけると、龍は馬の姿に変わった。三蔵達は観音に頭を下げ、馬と共に旅を続けた。
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