03.03.31(MON)           十二ヶ岳            小野上
  スッキリ晴れたら展望の良い小野上の十二ヶ岳へでも行って見ようと思っていたが、暖かく良い天気なのに浅間も赤城もスッキリ見えない日が続く。間違いなく春である。何となくけだるく無気力、さんざ迷った挙句、遅くなってのそのそと出掛けた。・・・登れば春霞を抜けるかも・・・。
コース:登山口駐車場 10:50→十二ヶ岳30分の案内のある尾根 11:40→男坂・女坂分岐 12:00→山頂 12:25-13:10→男坂・女坂分岐 13:25→十二ヶ岳30分の尾根 13:35→登山口 13:55 (所要時間 3時間05分)

  林道峠山線というのが完成していて、登山口がかなり山頂に近付いたので歩行時間はかなり短縮されている。

駐車場:特に無いが登山口近くに2〜3台分のスペースはある。トイレは無い。 
十二ヶ岳山頂、バックの雪山は武尊
 登山口と安心して駐車できそうなスペースはすぐ分りそこに車を入れて一先ずほっとする。

 前回十二ヶ岳へ登ったのは手帳をひっくり返して見ると ’90年の5月だから13年前である。ふもとの村の菜の花畑、杉林の中のヒトリシズカの花、付近の山では珍しい広々した山頂の360度の大展望、好い山だなと惚れ込んだ割に行ってないのは、やはり車で行く道の狭さと駐車場所に苦労したからである。今回行って見ると舗装された林道が完成していてどこまでも伸びている(峠を越えて高山村か中之条へまで行けそう)。登山口は林道の途中にあり大変分りやすく駐車も楽である。前私が車を止めた水源地付近からみると、登山道の下3分の1か半分近くがショートカットされた感じである。手近になったが登山道に入ればまだまだ山の雰囲気は残っている。

 ザックを担いで登山口に向かう。とにかく暖かい日だが油断は出来ないので冬山用のヤッケやフリース、常備品の緊急用食料やピバーク用セット、山頂直下の北面の急斜面が気になっていたので、最近ではめったにお目に掛かれない鍛造製の10本爪のアイゼン、旅行中の妻に取り上げられてしまったデジカメの替わりに、久しぶりに引っ張り出した大きくて重い一眼レフ、それに暖かい紅茶を自分で用意するのが面倒なので、今日は山頂でラーメンでも作ろうと余分の水とストーブまで担いだので馬鹿馬鹿しく重い(馬鹿だ)。流石にワカンを担いで行かなかったのだけが正解だった。


  頭をばっさりと削り取られた可哀想な山、御甲山を目印に小野上駅を過ぎてすぐ広い交差点を右折する。山の村にも立派な広い道路が出来ている。車からも確認できる十二ヶ岳への案内に導かれて林道に入る。水源地付近の空き地に駐車してザックを背に歩き出そうとしている二人連れの女性を見たが、舗装された林道はさらに先に続いているので入って見ることにした。暫らく登ってさて十二ヶ岳への登山口が見つかるのか心配になった頃、上から軽トラックが下りてきた。譲り合ってすれ違う時に地元の人らしい年配の運転手に十二ヶ岳への登山口を確認すると、「ちょっと登ると3差路があるからそれを左折するとすぐだよ」と教えてくれた。  
林道峠山線開設記念碑と駐車場所
正面の三角形の切通しの先に右の登山口がある。
十二ヶ岳登山口
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 早速お湯を沸かしてラーメンを作る。インスタントラーメン一杯に使用する水の量はほぼ500ccのボトル一本弱で、コーヒー一杯分は残らない。出来あがったラーメンを食べようとしたら箸を忘れたのに気が付いた。ナイフで小枝を切って箸の替わりにしてすすり込んだが、一味落ちたような気がする。多寡がラーメンだが麺類の味は箸の使い心地が影響する様である。

 跡かたずけを済ませ改めて写真を撮ったりしてさて下ろうとしていたら、下のほうで鈴の音と話し声がして暫らくして女坂の方から二人の女性が上がってきた。水源地の手前で会った人達だった。私と同じ前橋からとの事である。男坂は懲りていたので女坂を下ることに決めていたが、様子を聞いてみると残雪があってアイゼンは有った方がいいがなくても歩けます。とのことだった。失礼して先に下る。

 女坂はかなり急斜面のつづら折れの巻き道である。膝くらいまでの残雪があり踏み跡がはっきり付いているが、踏み跡の上はいかにも滑りそうである。しかしアイゼンの必要はなく踏み跡との境界の残雪を踏んで下る。峠では時間が早いので中ノ岳まで行こうか迷ったが、行った事がなくまた残雪の登りにてこずったりしないとも限らないので無理をせず下る。下りでも滑って転ぶようなこともなく無事車に辿りついた。スパッツを外すととても残雪のどろどろ道を歩いてきたとは思えないような、綺麗なズボンの裾が顔を出し満足(何がじゃ)であった。さて早く帰って風呂でも浴びてさっぱりしたら何時もの定食屋へ行こう。
 その時、男坂の方から元気に鈴を鳴らして同年輩の男性が一人で下りてきた。「誰も居ませんよ」と言う。安中の人で先日は荒船山、3月12日には鼻曲山へ行ったそうであるが雪が多かったと話していた。道を聞くと滑りやすいけれど踏み跡はあるし大丈夫ですよと言う。それならと男性と別れて男坂に向かう。

 踏み跡はあるが、滑り難そうなところ、掴まる潅木のある所等を選んで歩いているうちに、斜面は益々急になり踏み跡も分らなくなってしまった。ここで転がったらただでは済みそうも無いと言った感じの薄く残雪の乗った崖である。行くにしろ戻るにしろリスクは同じような感じなので、潅木を頼りに目の前の尾根に向かって攀じ登る。掴まる潅木のないところもある。何てこっちゃ。とても大事な人(もちろん妻のこと)を案内しては来たくない登りである。何とか登山道らしき所まで登ってほっとする。さらに登るともっとはっきりした道に出た。狭い尾根なのにどうなっているんだろう。そして山頂。やれやれ。

 山頂は以前と変わらず開放的な展望台のままだった。雪もなく乾燥していて居心地よい。360度の山名表示板が出来ていた。浅間から白根、谷川、武尊までの雪の白い峰々は良く見えているが、白っぽい空と、特に谷川あたりは上空に張りついた薄雲のために陽が当たらず今一であった。榛名も逆光と春霞でディテールまでは見えない。眼下の小野上村方面の展望が適度な高度感で山頂の気分を味あわせてくれる。登山口直前の林道の三叉路まで見ることができ、自分の歩いた距離、獲得した高さを知ることが出来る。登山口や置いた車は支尾根の陰で見ることはできない。
 最初の100mほどは林道工事で荒れた岩だらけの沢、右折して登山道に入ると山らしくなってほっとする。右手の沢がどんどん深くなり崖の上という感じになったあたりで、すぐ目の前のブッシュで何かが動いた。鳥かと思ったら黒っぽくて丸々太ったリスだった。こちらを気にしながらも急に逃げもせず、止まることなくせわしく動きながら盛んに餌をあさっている。カメラと思っている間にどんどん遠ざかり、キキキと鋭く鳴いて木の幹を駆け上がり茂みに消えてしまった。リスの鳴くのを見た(聞いた?)のは初めてだ。

 リスと別れて暫らくすると、今度は沢の中で落ち葉を踏む足音がする。カモシカかまさか熊!と恐る恐る沢を覗いてみたら山鳥だった。私に驚いて一瞬赤茶色の背中と長い尾を見せて沢の対岸を走り激しい羽音と共に同時に3方向に飛び立った。3羽いたのだ。

 沢のどんずまりは岩壁で水のある時は滝が出来るのだろうか、登山道の真中に標柱があって「十二ヶ岳滝上」と書いてある。せんうえと読むらしい。急な道をひと登りで十二ヶ岳30分と書いた案内板のある尾根に出た。沢を挟んだ対岸に十二ヶ岳の山頂がそびえている。とにかく暖かい。アンダーシャツに夏の長袖1枚で腕まくりである。耳を覆う毛糸の帽子も手袋ももう要らない。春を実感する。

 程なく十二ヶ岳と中ノ岳の間の峠へ抜ける。十二ヶ岳20分の案内がある。峠からは僅かに雪が残っている。雪解けと霜柱がとけて道はどろどろつるつるである。ここで転んだら実害は無いにしても被害は甚大である。パンツまでしみ通る尻餅の痕はみっともないしプライドを傷つける。すぐに男坂と女坂の分岐に着く。この分岐は前に来た時の記憶には無い。今の女坂を登ったように思う。
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