Technical Writing
Since: January 26, 2004
Last updated: Dec. 9, 2004
技術論文執筆と研究発表の手引き、初級
Technical Writing and Presentation Skills
[1] 図表
その図を使って何を伝えたいか、自分が何を判断・判定したかを、再考する。
読者にとって、必要最低限の情報が図に記載されているか。その図にとって最も大事な測定条件設定、分解能、ゲート動作条件設定、など。
因果関係を図示する場合は、横軸が原因、縦軸が結果である。逆はありえない。
図表の題名を慎重に選ぶ。図表の役割に最も適した題名を選ぶ。
横軸と縦軸の題名は、題名、記号、単位である。 例えば、Cavity frequency, f
cav
(GHz)。適切な記号が無い場合は、Frequency (GHz)。
複数の曲線を重ね描きする場合は、必ず、それらの違いを図中または脚注に明記する。
曲線の線種は、実線、破線、点線、一点破線の順番に利用する。
データ点の点種は、●、▲、▼、■、×の順番に利用する。○、△を使わないこと。
複数の図を併せて1図とする場合は、図中の右肩または図の右側に(a), (b), (c)と記載し、脚注に(a), (b), (c)の違いを明記する。
数値や結果を一覧表示する場合は、表を作成する。表には、一般に、図と同じ重みと価値を与えられる。
従って、図と表は、パワーポイントに並べてください。一戸君卒論を参照。
2, 3行、2, 3列だけの小さな表というものは、大変例外的です。そのような場合、内容が貧しくないかどうか、考え直すこと。
なお、式(関係式、方程式、定義式)は、通常、文章の中に挿入します。(式にも連番(1), (2), ...を付けること。)
本格的な
学会講演会予稿論文・技術論文
に各自の図を活用するために (1):
図中の線幅と文字サイズを、かなり大きめに設定すること。
理由: 講演発表用スライドや学位論文と異なり、本格的な技術論文では、通常、図 [またはFig 1(a), (b)などの組み合わせ図] の横幅を one-column width= 80mm (=A4幅の30%)以下に縮小します。従って、縮小前の狭い線や小さい文字は消えてしまいます。
実際に図 [またはFig 1(a), (b)などの組み合わせ図] の横幅を60〜80mmに縮小すると、どの程度以上の線幅と文字サイズが必要かがよくわかります。
講演発表用スライドや学位論文の場合も、図の幅や高さをやたらに大きくしないこと。図の周囲に充分な余白を設けたほうが、バランスの良いスライドや学位論文となります。
本格的な
学会講演会予稿論文・技術論文
に各自の図を活用するために (1):
全ての図 (Figure)を、英文で作成する。
重要事項: 日本語フォント(Γ、σ、・、スペース、_)を使わないこと。使用してよいフォントは、Times Roman(標準的な英数字), Symbol(ギリシア文字と記号), Helveticaの3種類。当研究室ではさらに、Times RomanとSymbolの2種類に限定します。
大問題: 研究結果を研究論文/学会/シンポジウム/websiteなどに投稿・発表する際に発生します。欧米のコンピュータが日本語を受け付けない。一見日本語を使っていなくても、ギリシア文字を日本語フォントで記載していたというトラブルが多発中。
対象: パワーポイントの図面、および、SMA4WINのグラフ。
最終確認方法: パワーポイントをacrobat PDFに変換し、フォント一覧内容がTimes Roman, Symbol, Helveticaだけならば、OK。
表 (Table)は、日本語でも目をつぶります。
図表作成の手引書
日本物理学会編、科学英語論文のすべて、第2版、2001年: 最も確かな手引書
5.2節 図の作成
5.4節 表の作成
(5.6 a. Sma4Winによるグラフの作成)
技術文章の修正と改訂の実例集(卒研生、院生)
名詞を分類する
[2] 技術文章
図を引用して具体的に説明する。「xxxはyyyであった(図3.1)」と引用する。
1つ1つの「文」の役割をはっきりさせる。1つの文は1つの事実または考察を伝える(1文1意の原則)。1つの文に複数の役割を与えないように、文を分割する。
文の主語、述語、目的語
を明確に意識する。3重、4重の複合文を作らない。必要以上にだらだらと長く、密度の低い文は、悪文。そのような場合は、文を分割する。
さらに
読者の視点
で推敲する: 文の主語は何か、述語は何か、目的語は何かを読者が明確に理解できるかどうか、読者の視点になって確かめる。代名詞や関係代名詞が何を指しているかも、読者の視点で確かめる。
従って、文と文の接続関係を表す接続詞の役割が重要となる。「従って、」「一方で、」「さらに、」「その後、」など。
「しかし(However)」「...だが」などの逆接を、滅多に使わないこと。正しい研究論文に現れるhoweverの「数」は、全体を通して1回、多くても2回です。Butは殆ど使いません。方法説明、結果説明、考察説明、結論へ向かって、できる限りストレートで素直な順接で、記述すること。
無駄と過剰を避ける(=簡潔)。同一の事を、言い方を換えて繰り返さないこと。=1回で明快に決める。
以上のことは、日本語でも英語でも共通です。実社会で必ず役立ちます。
技術文章作成の手引書
日本物理学会編、科学英語論文のすべて、第2版、2001年
第2章 具体的な各論
第1章(抽象的な総論)
[3] 研究発表や卒業研究の価値
研究発表は、適切な程度に普遍的な「結論」と、それを裏付ける特定の「結果」の両者を備えなければいけない。
<結果と結論の違い>
(狭義の)結果(Results): 客観的で具体的で確かな実験結果や理論解析結果。
実験結果や理論解析結果は、「客観的な事実」でなければならない。つまり、「研究論文に記載された対象と方法を使えば他者が同じ結果に到達できること(=同一の結果を再現可能であること)」が大事である。オリンピックや工芸品と異なり、広く普及できる技術、あるいは科学的な真実でなければ価値が無い。
結論(Conclusion): 客観的な結果に基づいて研究者が主観的に行った考察結果や価値判断。
広義の結論(Summary, Abstract): 新しい結果の要点に狭義の結論を加えたもの。研究成果。
<研究発表の価値(世界標準)>
広義の結論、研究結果、研究成果: 狭義の結果に結論を加えたもの。
すでに知られている事実(研究結果)を再度実験したり理論解析した場合は、(その人独自の)研究結果と呼ばない。それは、過去の研究結果の検証あるいは追試にすぎない。
研究結果は、「従来知られていない、新しい実験結果や理論解析結果」でなければならない。
従って研究発表の中で、
<従来知られている事実や研究結果=本研究の背景説明>と<本研究の結果>を厳格に見分けられるように
、研究論文を記述すること。
せっかく良い研究結果を持っていても古い結果と新しい独自結果を混在させると、研究の価値が無くなってしまう。両者の区別が、極めて大事。
<研究発表の価値(卒業研究)>
4年生の実力で新しい大結果に到達するのは、容易ではない。到達しなくても、「どのような価値を持つ世界レベル研究」を目標としたのか、その途中のどこまで到達したかをできるだけ明快に記載する。
これまでに
どのような困難
があったか(=なぜ長い時間がかかったか)、困難を具体的に
どうやって克服
したか(=方法)を、図表を使って詳しく記載する。
今後の課題(=目標に到達するためには何と何が今後の課題か)を、適格に指摘する。記載箇所は、結論。
電気通信大学
上野 芳康
研究室ホームページ