Corrections and Revisions in Technical Writing
Since: Dec. 6, 2004
Last updated: Dec. 21, 2004


技術文章の修正と改訂の実例集、卒研生〜院生
Corrections and Revisions in Technical Writing



技術文章の修正と改訂の手順

   初歩段階: [1]から[4]まで。研究の内容を理解しているとは言い難い段階。
   初級段階: [6]まで。「研究の内容と価値を理解する一歩手前」の段階。
   
   卒業研究論文第1稿段階: [1]から[7]まで全てが必要。研究の内容と価値を理解・自覚している。

なお、
技術文章内容は「日本語の上手・下手」だけを示しているのではなく、
学生本人(技術者本人)が論理的に理解しているか否かの段階(技術的能力レベル)を示しているといって概ね間違いない。

さらに、
技術文章を書き下し、考え直し、書き換え、考え直すことにより、
理論解析や実験=自分がいまやっていることを、一歩一歩理解できるようになっていきます。技術文章執筆=他人に伝えるために=自分自身が正しく理解するために。これは、いつものように、世界共通の自然法則です。

[1] 文の構造を分析する
 修飾語(形容詞句、副詞句)と被修飾語(名詞句、動詞)の修飾関係。
 主語(名詞句)、述語(動詞)、目的語(名詞句)。能動態か受動態か。
 複文の場合は、主文に対する副文の役割。
 
[2] 論理的な誤りや矛盾は無いか?
 誤り例1: 身長が重い。湿度が暑い。
   訂正後: 身長が高い/低い。体重が重い/軽い。湿度が高い/低い。
 誤り例2: DISCゲートの半値幅。
   訂正後: DISCゲートに入力する光信号パルスの半値幅。DISCゲートの光出力スペクトルの半値幅。

[3] 課題、対象(ゲート、共振器など)、手段(計算プログラム・測定器類)が、必要充分に書き表されているか?
 他の類似部分や類似概念と区別できるか? 他の事柄と混同される可能性は無いか?
 実験対象(ゲート、リング共振器など)、入力信号発生手段、測定手段が明確に区別されているか?

[4] 研究結果(計算結果・測定結果)が、必要充分に説明されているか?
 研究対象(または測定器)のどこで何が起きたのか?
 その現象の原理や因果関係を把握している場合は、原理や因果関係も説明すること。

[5] 考察や結論が、必要充分に説明されているか?
 根拠を明確に述べているか? 説得力(読者を説得する力)があるか?

[6] 「考察や結論」と「今後の課題」が、計画や目的に合致しているか?

[7] 研究結果(計算結果・測定結果)のうち、「すでに報告されている内容」と「新しい内容」が明確に区別されているか?
[8] (大学院生) さらに、研究計画(目的と方法)の内容のうち、「他者が作ったもの」と「自ら生み出したもの」が区別されているか?



技術文章の修正と改訂の実例集

例1 Plans & Progresses of November 26th, 小林

Ver. 1
●今週の進捗
・DISC-LOOPの動作点でのパルス発生実験。データ整理
●来週の計画
・DISC-LOOPのパルス発生実験。安定的にパルスを発生させる。

Ver. 2
●今週の進捗
・リング共振器のDISCの透過率とEDFAの利得から見積もった動作点でのパルス発生実験。電気スペアナで10.5GHz付近のヘテロダイン信号を測定した。
●来週の計画
・リング共振器のCW光のパワーを下げ、透過率の高いところで安定的に電気スペアナでMZIのヘテロダイン信号が測定できる動作点を見つける。
・OE変換器のトランスインピーダンスを二つの入力光の強度とヘテロダイン信号から計算する。

Ver. 3
●今週の進捗
・リング共振器のDISCの透過率とEDFAの利得から見積もった動作点でのパルス発生実験を行った。リング共振器を回る光パルス成分はMZIで干渉したことによって10.5GHz付近のヘテロダイン信号が発生した。
●来週の計画
・リング共振器のCW光のパワーを下げ、透過率の高いところで安定的に電気スペアナでMZIのヘテロダイン信号が測定できる動作点を見つける。
・OE変換器のトランスインピーダンスを二つの入力光の強度とヘテロダイン信号から計算する。

Ver. 4, 2004/12/01 Wed.
(小林君が文構造分析を入念かつ長時間行った後の、改訂版)
●今週の進捗
・リング共振器をマージンの高い条件で動作させた。MZIの共振周波数のヘテロダイン信号が発生した。
●来週の計画
・リング共振器でパルスが安定的に発生する動作条件を調べる。
・入力光強度とヘテロダイン信号強度からOE変換器の効率を求める。

査読結果(上野):
・理解段階[1]: 概ね合格 (誤りは2箇所だけ) ・理解段階[2]の誤り: マージンが高い
・理解段階[3]の不充分: 何のmarginか、全く不明。marginは、本研究の様々な箇所で用いる一般用語である。
・理解段階[3]の不充分: 研究対象のどの部分でヘテロダイン信号が発生したのか、不明。研究対象の各部分と研究手段(=各種の測定器)の区別を、明確に意識していない様子。
・理解段階[3]の不充分: リング共振器で調べる。⇒ 研究対象と研究手段の区別を、明確に自覚していない様子。

Ver. 5, 2004/12/06 Mon.
●今週の進捗
・リング共振器を利得が損失よりも大きい条件で動作させた。
・MZIの共振周波数のヘテロダイン信号がOE変換器で発生した。
●来週の計画
・安定的なパルスがリング共振器に発生する動作条件を光スペアナで調べる。
・2種のDFBレーザーのピークパワーとヘテロダイン信号のトータルパワーからOE変換器の効率を求める。

査読結果(上野):
・理解段階[3]の不充分: 何に対する利得・損失か、全く不明。利得は、本研究の様々な箇所で用いる一般用語である。具体性も乏しい(どれくらい大きかったか、共振周波数の値)。
・理解段階[3]の不充分: 動作条件を調べる際に必要不可欠だった測定器は、光スペアナだけだったか?
・理解段階[3]の不充分: 「DFBレーザのピークパワー」は、「DFBレーザパワー」と何か異なるのか?(ピークと限定する必要があるか?)

Ver. 6, 2004/12/13 Mon.
●今週の進捗
・リング共振器を周回するパルスに対するEDFAの非飽和利得がパルスに対するDISCの透過率と他の受動素子の損失の合計よりも +5.56dB大きいと推測した条件でパルス発生器を動作させた。 その結果、OE変換器で 10.484GHzのヘテロダイン信号が発生した。 この原因を以下のように考えた。 リング共振器において、SOAとEDFAのASEがリング共振器の共振周波数間隔7MHzでマルチモード発振した。このマルチモード発振成分がMZIでフィルタリングされた。よってMZIの共振周波数間隔 10.484GHzの各成分が相対的に大きくなった。 この成分がDISCに入力されることにより、MZIの共振周波数間隔 10.484GHzのフーリエ成分が発生する。そしてこの成分がOE変換器に入力されたためである。
●来週の計画
・パルスのタイミングジッタを少なくするように、パルス発生器を動作させる。
・OE変換器に入力した波長の異なる2種のCW光の強度と出力ヘテロダイン信号の強度からOE変換器のトランスインピーダンスの値を求める。 求めた値とデータシートの値を比較することで、ヘテロダイン信号実験の測定結果の妥当性を確認する。

例2 Plans & Progresses of Dec. 3rd, 大平

Ver.1
●今週の進捗
・DISC出力パワーのパルスエネルギーが低い部分の考察をし主な要因は位相シフト量であると結論づけた。
・SOAの短波長側スペクトルの測定を、感度を下げて行った。
●来週の計画
・CSAのカラーグレーディングモードを画像ファイルに出来るようにする。
それが出来たら、LN変調器のテスト(CWのパターン変調)を行う。

Ver.2, 2004/12/7
●今週の進捗
・何の要因によりDISCゲートの光出力パワーが入力パルスエネルギーとともに増加するのかを考察した。
その結果、入力CW光のパワーが小さいほどDISCゲートの出力が大きいので、この要因は位相シフト量であると考えた。
・OSAのパワーに対する感度を上げて、再度InPhenix社製SOAの短波長側ASEを測定した。
●来週の計画
・CSAのカラーグレーディングモードでの測定結果を画像ファイルに出来るようにする。
その後、LN変調器を用いてCW光のパターン信号による変調を行い、変調後の光の波形をCSAで測定する。
その結果を7月の測定結果と比べる。

Ver.3, 2004/12/8
●今週の進捗
・何の要因によりDISCゲートの光出力パルスの平均パワーが入力パルスエネルギーとともに増加するのかを考察した。
入力CW光のパワーが小さいほどDISCゲートの出力パワーが大きいので、この要因は位相シフト量であると考えた。
・パワーに対する感度を上げたOSAで、InPhenix社製SOAの短波長側ASEを測定した。
●来週の計画
・CSAのカラーグレーディングモードでの測定画面をビットマップファイルにする。
その後、電気パターン信号によるCW光の変調をLN変調器を用いて行い、変調後の光の波形をCSAで測定する。
その結果を7月の測定結果と比べる。

Ver.4, 2004/12/10
●今週の進捗
・測定結果と計算結果を重ねてDISCゲートの光出力パルスの平均パワー と入力パルスエネルギー の関係を示したグラフを見た。

どちらの結果でも、入力パルスエネルギーの増加によるDISCゲートの光出力パルスの平均パワーの変化は、
入力パルスエネルギーが10fJ辺りで飽和しているのを境に、増加から減少に転じていた。

このうち入力パルスエネルギーが増加した時にDISCゲートの光出力パルスの平均パワーを増加させる要因を考察した。
すると、DISCゲートの出力パワーが入力パルスエネルギーとともに増加する時には、
入力CW光のパワーが小さいほどDISCゲートの出力パワーは大きいことがグラフから読み取れた。

一方、SOAでのCW光の位相シフト量も、入力パルスエネルギーとともに増加し、入力CW光が弱いほど大きくなっていることに気づいた。

このことから、入力パルスエネルギーとともにDISCゲートの光出力の平均パワーを増加させる要因は SOAでのCW光の位相シフト量であると考えた。

・SOAのキャリヤ利用効率を求めるため、測定できるパワーの範囲を-80dBm以上にしたOSAで、 InPhenix社製SOAの注入電流が150mAの時の短波長側ASEを測定した。

●来週の計画
・既存のアイパターンよりサンプル数の多いアイパターンをパソコンに取り込むために、
CSAのカラーグレーディングモードでの測定画面をビットマップファイルにする。

その後、PPGで作成した電気のパターン信号によるCW光の変調をLN変調器を用いて行い、変調後の光の波形をCSAで測定する。

LN変調器にかける直流電圧を変えてこの測定を繰り返す。

変調後の光の波形やそのピーク電圧を7月の測定結果と比べる。

例3 パルス発生実験の測定結果の説明, 鈴木

課題:(1)〜(3)の測定結果について、なにが等間隔か、その原因は何か、を説明する。
(1)data-discloop2004.ppt P.4
(2)data-discloop2004.ppt P.116右下
(3)data-discloop2004.ppt P.119左下

Ver.1, 日常の口頭説明
(1)エタロンの透過スペクトルが等間隔である。
(2)マッハツェンダ-の干渉縞が等間隔である。
(3)リング共振器の縦モードが等間隔である。

Ver.2, 2004/12/3 Fri.
(1)エタロンの出力光強度が最大となる入力光波長が等間隔になる。
原因は、エタロンの光路長が半波長の整数倍となる関係を満たす入力光波長成分のみが、多重反射干渉によって、 強め合ったためである。
(2)マッハツェンダ-干渉計の出力光強度が最小となる入力光波長が等間隔になる。
マッハツェンダ-干渉計は入力光を2つの成分に分け、位相差をつけることで、干渉させている。その際、半波長の奇数倍がマッハツェンダ-干渉計の光路長差となる関係を満たす入力光の分けられた成分は位相差πで干渉するため、出力光強度は最小となる。よって、出力光強度が最小となる入力光波長は等間隔となる。
(3)リング共振器を周回する高調波がビートしたヘテロダイン信号強度が最大となる周波数間隔が等間隔である。
波長の整数倍がリング共振器の光路長となる関係を満たす波長成分が周回することによって、強め合う。その高調波がビートするため、 ヘテロダイン信号が発生する。高調波の周波数間隔は等間隔であるため、ヘテロダイン信号の周波数間隔も等間隔となる。

Ver.3, 2004/12/7 Tue.
(3)リング共振器を周回するマルチモード発振成分の周波数が等間隔である。
リング共振器では、SOAやEDFAの自然放出光が、リング共振器を周回することによって、波長の整数倍がリング共振器の光路長となる関係を満たすASEの成分が強め合い、マルチモード発振する。リング共振器より出力された各マルチモード発振成分はOE変換器で互いにビートするために、各マルチモード発振成分の各周波数差に相当するヘテロダイン信号が発生する。マルチモード発振成分の周波数は等間隔であるため、ヘテロダイン信号の周波数も等間隔となる。よって、この図からリング共振器を周回するマルチモード発振成分の周波数が等間隔であることが推測された。

例4 Plans & Progresses of Dec. 3rd, 金子

Ver.1
●今週の進捗
・SOA分割モデルの正当性の確認: 1分割と20分割のモデルの比較
→各セクションの利得飽和エネルギーを、1分割時と同じにするとキャリア密度時間変化が一致する理由は不明
・自作レート方程式プログラムの正当性の確認: 自作レート方程式とGate-simulatorの計算結果の比較
→比較結果は不一致。自作プログラム中のCW光の扱い方を考える必要があることが分かった。
・Gate-simulatorの高速化: 富士通ssl2のサブルーチンを用いたFFTサブルーチンの作成
●来週の計画
・SOA分割モデルの正当性の確認: 各セクションの利得飽和エネルギーを、1分割時と同じにすると
キャリア密度時間変化が一致する理由を探る。
・ASEを考慮したレート方程式プログラムの作成: 実験結果からASEの発生確率を求めて、その値をプログラムに盛り込む。
・Gate-simulatorにASEを計算させるプログラムを付加する。

Ver.2, 2004/12/17 Fri.
●今週の進捗
・SOA分割モデルを用いた、自作レート方程式プログラムによるキャリア密度時間変化の計算結果の正当性を確認したかった。
 そのため、自作レート方程式プログラムのSOAを20分割し、SOA中のキャリア密度時間変化を計算して
 1分割時の計算結果と比較した。
→SOAを20分割した際、その各セクションの利得飽和エネルギーを1分割時と同じにした。
 その状態で計算を行った結果、20分割時の平均キャリア密度時間変化が1分割時と一致した。その理由は分からなかった。

・自作レート方程式プログラムによるキャリア密度時間変化の計算結果の正当性を確認したかった。
 そのため、自作プログラムのキャリア密度時間変化の計算結果とGate-simulatorの計算結果を比較した。
→両者の結果は一致しなかった。
 自作レート方程式プログラムの入射CW光強度によるキャリア密度減少量を考慮していなかったことが原因だと考えた。

・豊田さんが使うGate-simulator中のFFT計算を高速化するため、
 富士通ssl2のサブルーチンを用いたGate-simulator用FFTサブルーチンを作成した。

●来週の計画
・SOAを分割した際の各セクションの利得飽和エネルギーを1分割時と同じにした場合の、
 自作レート方程式プログラムによるキャリア密度時間変化の計算結果が、
 同プログラムの1分割時の計算結果と一致する理由を探る。

・ASEの強度を計算するため、ASEの測定実験結果からSOA中のASEの発生に関わるキャリアの再結合確率を求める。
 その発生確率を自作レート方程式プログラムに盛り込む。

・ASEを計算するプログラムをGate-simulatorに付加する。

例5 Plans & Progresses of Dec. 3rd, 中本

Ver.1
●今週の進捗
・MZI透過スペクトルのレッド領域に重み付けを施した場合の出力時間波形について、系統的評価を行った。
・SLMの構造について勉強した。→神成研で用いられているSLMの場合、分解能は0.83nmであった。
●来週の進捗
・SLMの分解能に関する理論式を論文から探す。

Ver2.2004,12/18
●今週の進捗
・DISCで使われているMZIの位相バイアスが1.0πの時の透過スペクトルは、CW光の周波数で 0になるようなcos波形の振幅特性をもつ。CW光の周波数より小さい透過領域をレッド領域、 大きい領域をブルー領域と定義する。現在のサブルーチンではMZIの透過スペクトルはレッド領域とブルー領域の 最大透過率が同じであるように定義している。レッド領域の最大透過率にブルー領域の最大透過率に対して 重み付けを施した場合の出力時間波形について、消光比と半値幅の系統的評価を行った。その結果レッド領域の最大透過率を ブルー領域の最大透過率に対して半分にすることで消光比が3dBによくなった。しかし半値幅が0.3ps大きくなった。

・実際にSLMを使って、どのように光パルス生成が行われているかを 論文等を読んで調査した。特にSLMで使われている回折格子分解能に注目して調査した。
(例)慶応大神成研で使われているSLMの回折格子の分解能は0.83nmであった

●来週の進捗
・回折格子を組み合わせて分解能を上げる方法を論文等から探す。SLMを使った波形整形には、回折格子、レンズ、SLM が必要である。どのような配置にすればよいか調べる。

指摘事項(上野):
[1] DISCで使われているMZIの位相バイアスが1.0πの時の透過スペクトルは、CW光の周波数で 0になるようなcos波形の振幅特性をもつ。
???
話を整理すると、
1) MZIの透過スペクトルはcos関数型となる。
 ⇒ 当然。一般的に知られている。
2) CW光に対するMZI位相バイアスを1.0πに設定すると、CW光の透過率が0となる。
 ⇒ 当然です。1-1=0だということ。

1550nm光に対して位相バイアス= 1.0πであっても、1551nm光に対して位相バイアス= 1.0πではないことを、理解していますか?

[2] CW光の周波数より小さい透過領域をレッド領域と定義する。
透過領域=光が透過する領域???
レッド領域の光は常に透過する?
CW光より光周波数の小さな領域をレッド領域と定義する。

周波数領域、波長領域、時間領域: 正しい言語。
透明領域、非飽和領域: 正しい言語。

[3] 慶応大神成研で使われているSLMの回折格子の分解能は0.83nmであった
だから何???

[4] 来週の進捗???


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