ラブ アタック 2







「どうしようか、椿」
「どうしよう、ったってなあ、協力したろ?」
関東医大の一室で。珍しく五代を含まず一条と椿の二人きりの昼下がり。
「お前、仕事はいいのかよ」
椿は一条に背を向け仕事をしたまま問い掛けた。五代雄介専用医となりつつある彼だが、普段 も仕事が合ってそれなりに忙しい。ただでさえ未確認が出てしまえば通常の仕事は全て追いや られてしまうのだ。
「ウム、片付けてきた」
未確認の動きは最近沈静化していてここ1週間ほど何もなく過ごしている。何もないってこと は―――――――。
「んで、まだ五代とあってねえの?」
「俺も仕事が忙しいし、あいつも一応仕事(?)しているしな。だが・・・」
「だが?」
「電話しても、出ないんだ」
溜息。クルリと椅子が回転して椿が一条と向かい合った。
「お前、ナンカ、失敗したんじゃねえの?」
「・・・・馬鹿いうな。俺がナンノ失敗をすると思うんだ」
沈黙。
「・・・・・だよな〜。でも、お前の経験て全部、女だろ?ソッチの経験はまるっきりなかったん だし」
恋愛は楽しく気持ちよく!が、モットーの椿はその線さえ守られていれば男も女も関係なかっ たが、一条は自分の記憶にある限り男と付き合った事はなかった筈だが・・・。
「別に基本は変わらんだろ? 俺が突っ込むことには変わらん。反応なんかは女より判り易く て楽しかったぞ?」
「・・・・・ケダモノだな、お前って」
「お前に言われたくない」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
そんなのは互いに判りきっている。こんなくだらない言い合いをしに来た訳ではない。一条は 問題を解決に来たのだ。
「ちゃんと、五代だって喜んでいたんだがなぁ」
「なんでわかる?」
「イッた」
「そりゃ、男は直接刺激与えりゃイクだろ」
「違う。・・・・・後ろだけで・・・・」
「マジ?!」
椿が体を乗り出した。
「マジ」
一条が自信満々に笑う。
―――― 初めてはかなり痛い筈なんだよな、あいつがクウガだって事を除いても初めてで一 条のあんなのを受け入れてイクのかよ・・・。一条の様子からは自分だけの思い込みだけではな さそうだし。もしかして、素質あんじゃねぇの?五代てば
「ちゃんと、慣らしたぞ?お前に言われたとおり」
一条が椿の思考を遮る。どうやら、椿の指示をきちんと守ったらしい。
「どれ位?」
時間か?状態なのか?
「・・・・五代が鳴いて頼むまで」
「相変わらず鬼畜なセックスする奴だなぁ、五代だって、初心者だったんだろ? ちったぁ手 加減してやれよ」
「良かったのはそのせいだと思うんだがな。それに」
「まだあんのか?」
「形が合うみたいなんだよなぁ・・・・」
一条が、ニヤリとする。
「あのフィット感は今までにないなぁ・・・。俺のをビッチリとくるんで蠢く感触ったら・・・」
思い出しているのか一条は目を閉じた。
「良かった・・・・。最初は確かに只泣くだけだったんだが、そのうち自分から腰を動かしだし て・・・・」
「うそ!!」
「一緒にイッた時はほんっと天国を覗いた気分だったな・・・・」
「へぇ、そんなにイイ?」
興味しんしんといったふうに身を乗り出してきた椿に一条は釘を指す。
「アレは俺んだからな」
「若いときゃ全部わかちあったのに・・・・・・」
「ダメだ」
「ケチだな」
「ケチでもいかん」
「ちぇ、判ったよ」
椿は椅子の背もたれに寄りかかる。
「じゃあ、なにが、良くなかったんだよ」
「なんだろうな、俺には判らん」
根本的なことを何にも判っていないお二人の会話である。所詮、男同士ってこんなもんであ る。

「ま、本人に聞けよ。いま、検査終るし」
と言う間もなく検査着姿の雄介が入ってきた
「終りましたよ・・・、って、一条さん?! なんで、ココにいるんですか?!」
「いちゃ、悪いのか」
ちょっとムッとする。漸く会えたのに第一声はそれかい。
「・・・・今日、接待とかいってませんでした?」
「何で、知っているんだ?」
「桜井さんが教えてくれたんですけど。」
「なんで、桜井が?」
一条と距離を置きつつ雄介は答える。早く着替えたいのだが洋服は椿の机の横の籠の中だし、 それをとるには一条の横を通らなければならない。まあ、椿もいるからまさかこんなとこでコ トには及ばないだろう。――――ちょっと酔っているっぽいのが気になるけど。
「なんか、食事気に入ってくれたみたいで、ちょくちょく来てくれるんですよ」
「・・・・・ふうん・・・・・」
一条の目が据わったのを椿は判った。あんな目をしだしたら要注意なのに。
「ま、いい機会だと思ってさ。一条だって、なにが原因でお前に避けられてるかわからんみた いだし、話ぐらいしてやれよ」
「・・・・・言っとくけど、椿さんにだって怒ってんですからね」
「なんで?!」
「未確認に使う筋肉弛緩剤、俺で試しましたね!!一 条さんになんてモノ渡すんです か?!」
「あ!、あれね! よく効いたろ! 榎田さんと研究に研究を重ねて・・・・」
嬉しそうな椿の頭に、雄介は思わず駆け寄って拳を振り落とした。
「いって! 何すんだよぉ」
「それは、俺の台詞です!!」
「お前が怒っていたのはそれか?」
今まで黙っていた一条が会話に割り込んだ。
「それは悪かった。もう、使わないから。スマン」
一条が立ち上がる。雄介はビクンと反応すると後ずさった。
「別に・・・・それだけじゃ、ありません」
「まだ、なんか、あるのか?」
椿の問いかけに雄介は向き直る。
「だって! この人、あんな太っいモノ何回も何回もガンガン突っ込んで!!」
「あ――、そりゃ、大変だったな。一条の相手は女でも最初は辛いみたいなのに」
「しかも、全部、ナマで! 中だししたんですよ!!」
「あ、そりゃ、よくねえな、うん、うん」
一条に顔を向ける。
「おまえ、そんなことしたのかよ。」
「妊娠するわけじゃないだろ? ・・・・・別にしてもいいけど」
全然悪びれずサラリと言う。最後は雄介には殆ど聞こえなかったが。判った椿は溜息をつい た。
「恐ろしいこというなよなぁ、もう。言っとくけど、中だしは後が大変なんだぞ?」
「ちゃんと処理したぞ、俺は」
憮然として言う一条と反対に雄介は一瞬にして真赤になった。
「折角、フロ場まで連れて行って体まで洗って綺麗にしたのに・・・・」
「そうなの?」
椿の問いかけに一条はコックリと頷いた。
「ダメじゃないか、五代。こいつには珍しくアフターケアがちゃんとしているぞ? これは愛 だな、うん」
「何言ってんですか! お、俺、ヤダって言ったのに、一条さんたら、無理やり指突っ込んで きて、綺麗にしなくちゃな、とか散々かき回した挙句に、さらにそこで2回もしたんです よ!!」
真赤になった雄介が椿の襟を掴んで叫んだ。
「・・・・一条、お前、ほんっっっとうに、ケダモノだな・・・・」
「でも、全部イカせたのに・・・・」
「なっ・・・!」
思わぬ一条の反撃に雄介が言葉につまる。
「気持ちよくなかったのならともかく、あんなに、イイッ・・・って鳴いたのに・・・・」
「わ―――――っ!!」
「なんだ、良かったんじゃないか、五代」
「え?」
ガシッと椿は自分の襟を掴んでいた五代の両手を掴んだ。
「正直になったほうがいいぞ?」
「椿さん・・・・・?」
ニンマリと椿が笑う。
「ごめんな。ケダモノの友達もケダモノで」
「え?」
「ナイス、椿」
訳がわからずにいる雄介の後ろに何時の間か鋏をもった一条が立っている。
「なっ?!ちょっと、何・・・・」
パサッ・・・・と検査着が捲り上げられ、チョキン・チョキン!!といい音がしたかと思うと下着 が足元に落ちた。
「な――――――――――っ!!」
手を振りほどこうと思っても意外と椿の力は強く両手首を捕らえられたまま動けない。
「どれだ、椿?」
「あ、ソコの引きしにない?」
「あ、ココ?」
勝手知ったるなんとかで椿の机の引出しをあけると一条はピンク色の物体が入ったビンを取り 出した。大きさが350mlのペットボトルと同じ大きさぐらいのソレ。
「・・・・一体なんです、それ」
嫌な予感に襲われて雄介が尋ねた。
「コレ?俺が作った特別製のローション」
「は?」
「凄いぜ〜コレ」
「匂いはしないんだな」
蓋を開けた一条が匂いをかいで言った。
「無味無臭だ。催淫効果はないが、通常の数倍の粘着力がある割に洗ったら落ちやすい」
「・・・・・お前、榎田さんとグルになってなに作ってんだよ・・・・」
得意げな椿に、早速手に垂らしてみている一条。その一条の手を濡らす液体の滑り。一条が指 を動かす度に聞こえるヌチャヌチャとしたいやらしい音が雄介の耳を犯す。思わず生唾を飲み 込み、渾身の力で椿の手を振り払おうとしたのと同時に一条が雄介の体を抱え込んで診察台の 上に放り投げ、そのまま身体を重ねる。
「たッ!!・・て、なにするんですかっ!!」
「こうでもしなきゃ会ってくれないだろ?」
「い、一条さんがあんな事するからじゃないですか!!」
雄介は必死で中に潜り込もうとする一条の手を抑えようとしているが、何分一条に圧し掛から れ身体の自由が利かない。
「な、なんでこんな事・・・」
「言ったろ? 好きだからって」
「そ、そんなの、信じられないです、俺、男ですよ?!・・・それに、一条さんの周りに、かわ いい人とか一杯いるのに、人気があるし、女の人選び放題だし・・・」
段々言葉尻が小さくなる。
「お前しか欲しくないんだ。第一、お前だけしか勃たなくなってるのにどうしろというん だ。」
当たる一条の欲望。熱く滾るソレからは自分だけが一条の欲望の対象なのだと伝えられて身体 の熱が上昇する。
「ま、後は二人でやってくれや。カギは置いとくからなー」
「すまないな」
「椿さん!!」
「素直になれよ、五代。本当に嫌いならわざわざココにこないだろ?おまえだって」
白衣を脱ぎながら椿が言う。雄介がグッ・・・と言葉に詰まる。一条は雄介を押さえ込んだまま 顔だけ椿の方に向けた。
「例のモノ、置いてあるぞ」
「マジ!!」
一条の言葉に辺りを見回すとドアの側に置いてある白い紙袋を見つけホクホクと近寄ってい く。
「コレかなっと・・・」
「ああ、全て純米大吟醸だ」
「おおおお!!、愛知の『泰然』に広島の『龍勢』かよ!! 超レア物、限定品じゃねえか!  いや、悪いなぁ!」
飛び上がって喜ばんばかりの椿に雄介は頭に一つの疑問が浮かんだ。
「・・・・椿さん、・・・もしかして・・・・」
「ん?」
「もしかして・・・・」
「ゴメンナ、五代。俺って、欲望に弱い人間なのさ」
「やっぱり、酒2本で俺を売りましたね!!?」
「馬鹿だな、只の酒じゃないんだぞ?いったろ、地域の限定品なんだ、なかなか手に入らない んだぞ」
まるで、子供に言ってきかすような言葉に一瞬雄介に隙が生まれた。勿論一条はその隙を逃さ なかった。
「あっ!!」
入り口に一条の指を感じ目一杯身体を硬くした。なのに、その滑りを帯びた指はヌルリ・・・と した感触とともに侵入を始める。
雄介がこんなに拒んでいるのにそんな抵抗をものともせず、ゆっくりと入ってくる。
「痛くないだろ? 雄介」
なんの痛みも与えず進入してくる不可思議な感触。入って出て、繰り返しながら序々に奥へと 潜り込む。
「あ、あ、いやぁ・・・・・!」
「好きだ。お前が欲しくてたまらない・・・」
「だ、だからってぇ、こんな、こんな方法ッ・・・!」
「何よりも欲しいものが手の届く場所にあるのになりふりかまっていられるか? どんなこと をしたって、お前が欲しいんだ・・・」
一条の切羽詰った言葉。今までこんなに求められたことはない、と思う。だから怖いのだ。
「俺のこと、嫌いになったか?」
「・・・・」
「でも、俺は好きだ。・・・・好きだ」
指が増えた。二人の荒い息遣いと、クチュクチュと濡れた音がする。
「な・・・、ココに、俺の、出していい?・ ・・・一週間分溜まってんの・・・・」
いやらしく囁かれて真赤になる。どうしよう、嫌じゃないなんて。その証拠に自分の身体が反 応してきている。
「おまえだけだ、俺をこんなふうにできるのは・・・・」
本当に? 本当にそうなのだろうか。
「・・・ら」
雄介の小さな呟きに耳を澄ます。
「ん?」
「本当に・・・・俺、だけ・・・て、言う、なら・・・」
とうとう言ってしまった。だって、こんな事されても嫌いになれなかったし、一条の心を独り 占めしている優越感すら感じていたのは確かだ。一条はあんなに女性に人気があるのに雄介し か見ていないのだ。それを嬉しいと、確かに雄介は思っていた。
「!」
「や、優しくして・・・欲しいです。俺、一条さんほど、経験ないし、下手だから、ほかの人と 比べら・・・」
続く言葉は一条の唇に吸い取られる。
「馬鹿だな・・・・。誰と比べるって言うんだ」
優しい一条のキス。
「いままで、一条さんが、付き合ってた人達・・・です。お、俺、なにもできないし・・・・いつ か、・・・やっぱり、女の人の方がいいって思うかもって」
「言ったろ。俺をこんなにしたのはお前だけだって」
何時の間にか椿はいなくなっている。おずおずと一条の背中に雄介の腕が回されて・・・。

「好きだ」
誰も知らない一条を雄介だけが知っている。

甘い時間が始まる。





続きはここには書けないわ。ふふふ。(樹)

続きって……、いやこのままでも十分、裏行きかと思ったぞ。
まぁすれすれということで、表にアップしちゃうけど。(ひかる)


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