シオン便り テーマB 個別指導・集団指導・・・どちらがいいのでしょうか。
近年、個別指導をうたう塾がたいへん増加しています。これには、様々な要因がからんでいます。まず第一に、「もっと自分の子どものことを考えた指導をして欲しい」という親御さんからの要望があります。つぎに、考えられるのが、集団指導では、なかなか成果があがりにくい子どもが、増えていると言うことがあります。
そもそも、個別指導といわれると、みなさんは、どんなイメージをお持ちでしょうか。講師1名に対して生徒1名の、家庭教師のようなイメージをお持ちでしたら、それは、かなりの間違いだと言わざる得ません。一般的な個別指導塾は、講師1名に対して生徒2名、あるいは、それ以上の割合になっています。
私の経験上、個別指導の限界は、1対2であるといえます。つまり、学年も科目も違う生徒を同時に教えるのは、どんなに熟練した講師でも2名が限界と言うわけです。1対1はもちろん、1対2の個別指導でしたら、生徒の理解度に合わせた密度の濃い、面倒見のよい授業は可能ですし、現にシオンでも1対1、1対2のコースはあります。
ですが、個別指導をうたう多くの塾は、講師1名に生徒3名、あるいは4名という指導形態を取っています。想像してみてください。目の前に3人の生徒がいます。この子は中2の数学、この子は中1の英語、そして、この子は小6の理科を学んでいます。これを同時に指導していくわけです。個別に説明し、個別に演習させ、個別に解説するなどと言うのは、至難の業と言わざる得ません。それこそ日本史の偉人・聖徳太子なみの活躍が必要です。したがって、演習を指示して、答え合わせをしてまわるのが、精一杯といったところです。
…時間割を自由に組めるのが、個別指導のメリットですが、生徒のスケジュールを優先すると、学年も科目も理解度も、まったくちがった生徒を同時に教えなくてはならなくなります。それぞれ、違う科目の違う単元を教えるので、講師は、目が回るような思いで教えてはいるのですが、効率はたいへん悪くなります。これでは、個別指導というよりは、自習プラス質問に答えるといった授業スタイルにならざるを得ません。生徒本人に、明確な目的意識がないと、学習効果はあがりません。
一方、一般的な集団指導というのは、15〜20人程度を相手に、講師が黒板等を使い指導していきます。一斉授業になる分、教える効率はいいといえます。ですが、どうしても一方通行になりがちになります。こうした塾は、「緊張感ある」授業をアピールする塾が多いのですが、その分、質問しづらく、わからないところが、そのままになってしまうという欠点があります。消極的な子どもであれば、授業中もただ座っているだけで、講師と一言も交わすことなく、授業終了ということになってしまいます。成績が相当上位でなおかつ積極的な子ならば、ついていけるのですが、学習に不安がある子や、おとなしい子は、置いてきぼりをくうこともあります。
シオン学院は、創業以来、集団指導ではありますが、少人数のクラス編成を基本としています。これは、集団授業の効率性のよさと個別指導のめんどうみのよさの両方を取り入れています。
シオン学院の授業は、前回の授業の確認から始まります。つぎに新しい単元の説明を、ホワイトボードを使って、クラス全体に対して行います。説明はだいたい20分程度です。そのあと、すぐにテキストを用いて、その内容の演習にうつります。
生徒が、演習している間、講師はそれぞれの生徒を見て回ります。つまり、きちんと解けているか、わかっているか、講師自ら確かめるのです。積極的な生徒はここで質問してきます。もちろん、講師はアドバイスしてまわります。
一方、なかなか自分からは質問できないような生徒に対しては、講師はその子のペンの動きを見ていきます。動いてないときには、こちらから説明します。この間は、集団授業と言えども個別的に対応していきます。ですから、演習中は、質問したり説明したりして、教室はけっこうにぎやかです。その後、生徒が解き終わったら、クラス全体で解答・解説していきます。
全体説明→演習と個別対応→全体解説というサイクルで、授業を進めていきます。生徒は常に講師の説明をきいているか、問題を解いているわけですから、授業時間中は、無駄なく学習していくわけです。…その上で、宿題としてその日の授業の復習を課します。また、理解が不十分な場合は、居残りさせたり、別の時間に呼び出したりして補習勉強させることもあります。
こうした、集団プラス個別対応ができるのが、少人数制・集団指導の最大のメリットです。これが可能なのは、能力別クラス編成にした上で、小学生なら8名程度、中学生でも最大12名が限度となっています。集団指導でありながら、個人のペースを、常に見極めていくという、シオン学院が培ってきた授業システムです。
また費用面ですが、1対2の個別指導でも、集団授業の2倍ちかくかかってしまいます。ですから、複数の指導科目や指導日数を確保しようとすると、たいへんな負担になってしまいます。(もし個別指導をうたいながらも、集団授業とそれほど変わらない価格設定ならば、それは1対4程度の個別指導的な自習塾と言わざるを得ません。)
もちろん、当学院としても、個別指導をお勧めすることはあります。それは、一般的な学習進度より大きくずれる生徒の場合です。たとえば、数年前の内容からの総復習が必要なケースや、また逆に中高一貫校で、進度が大きく進んでいたり、あるいは特殊な対策授業が必要な場合です。(AO入試対策や小論文対策、英語面接対策などがそれにあたります。)
ですが、このようなケースは、そう多くはありません。一般的な進度で、自分から学習するという姿勢が持てる子どもならば、やはり集団指導がいいと思います。費用的なことはもちろんですが、1対1や1対2という、「いたれりつくせり」(?)の指導よりも、同じ学年の、同じ目標を共有する仲間たちの中で、いろいろと励まされたり、切磋琢磨されることで、子どもは、より成長していけるからです。子どもは、こうした刺激のある学習環境において、能力的にも、精神的にも鍛えられるというものです。
シオン学院は、こうした環境の中で、「自分から学習しよう」という、子どもの意欲を大切にしたいと考えています。意欲さえ備われば、子どもは、どんどん自分から勉強していくものですから。講師一同、日々、学科の学習にとどまらない、「自分から学習する力」を引き出そうと、努力しています。