木星奪還部隊ガイアフォース 番外編

高周波振動ワイヤー


 軟質サーフォニウム合金の表面弾性波特性を利用した超音波加工装置の一種。ワイヤー状に編まれたサーフォニウム繊維に超音波振動(30〜100kHz)を加えると、ワイヤー表面に高周波の表面波(サーフォニウム合金内部の共振で振幅が10倍程に拡大される)が出現し、その振幅加速度は重力加速度の10万倍に達する。ワイヤー表面に油状研磨剤を塗布しておき、この振動でワイヤーに沿った線状に硬質物体を切断、あるいは研磨する。

 10kW出力の装置で、厚さ10mmの複合モリブデン鋼板を数秒で切断できる。エネルギー損失が少ないこと、加工自由度が高いこと、装置自体が安価で取り扱いが簡易なことが利点として上げられる。加えて作業に力学的反動を伴わないため無重量空間での用途に適する。例えば資源隕石などにワイヤーを絡め、破砕するのに有効である。また軍用では宇宙船及び有人船外活動装置のほとんどが硬質の装甲板を持っているので、近接戦兵器として用いられることもある。

 装置を長時間運転し続けると、摩擦熱によりサーフォニウム合金内の弾性波特性が局所的に変化し、共振ぶれが発生してワイヤーの内部にひずみが発生する。これが続くとワイヤーは復元力を失い疲労破壊を起こす。この現象をクリープと呼ぶ。現在では応力による永久ひずみ値γ≒0であるような材質製法が確立されているので、長時間運転を避けることでクリープ現象を回避できる。

(「宇宙材料工学小事典」より抜粋)


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