木星奪還部隊ガイアフォース 番外編

火星−木星間隕石流の発生メカニズム


 

 火星−木星間隕石流とは、火星−木星間小惑星帯付近で、直径数ミリから数十センチ、大きいもので数十メートルといった隕石群が密集、公転軌道方向に太陽系平均相対速度500m/sから1200m/s位まで加速する現象である。

 通常、長さ100km、1万立方kmほどの規模であり、密度は小惑星帯平均の1万倍程度と見られる。

 隕石流の加速過程の寿命は1時間、3000km程度と極めて短く、突発的な現象で、エックス線観測等ではプラズマ泡と誤認され、今まで問題とされなかった。詳しい研究がされるようになったのは近年である。

 隕石流全体は磁気圏を形成しており、内部は太陽風の影響で強力な磁気嵐を伴うことがある。この磁気圏は太陽風プラズマを取り込んでおり、そのエネルギーは3MeVにも達する。この磁気圏とプラズマが太陽風のエネルギーを集約する働きをすることが最近分かってきた。

 人工惑星からの観測によれば、隕石流の原因は磁気音波、つまり小惑星帯に停滞しているプラズマに、太陽風がエネルギーを供給することによって発生するプラズマ密度波と見られている。特にフレアバーストなどで発生する100MeVクラスの高エネルギープラズマに凍結された強力な磁気エネルギーが周辺に供給されると、プラズマ電流のピンチ効果により高密度流が発生する

(磁気音波急始部という)。またプラズマ流はピンチの偏りにより公転軌道方向をねじれるように流れる。隕石流はプラズマの運動エネルギーと磁気エネルギーを受ける形で発生する二次現象である。

 ただ、シンクロトロン放射電磁波の測定によれば、隕石流全体が発するエネルギー総量は、供給されるエネルギー総量を大きく越えているとみられ、より近い小惑星帯あるいは火星や木星起源の何らかのエネルギー供給があると考えられている。

 隕石流の観測例は極めて少なく、データも乏しい。そもそも太陽フレアから100MeVの電子が発生する仕組みもよく分かっていない(コロナホールから出ていることは判明している)。また放電現象や発光現象が観測された例があるが、これは磁場や電磁波による高周波加熱が原因として予想される。

 隕石流の寿命について、磁気音波の減衰機構の説明は諸説あるが、磁気トンネル効果説と、隕石の超伝導破壊によるとする説がある。現在、隕石流に含まれる珪質隕石などにマイスナー効果が見られるか検証が待たれている。

 

(「ASTROPHYSICA 0130」より抜粋)

 


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