ルアー(ミノー)
HMKLのリアルさや形の美しさに魅せられて、何本ものミノーを作りました。
最初は顔の表情や鱗模様に傾注した容姿優先のミノー作りでした。
そして、いざラインを結び付けてスイムテストをすると全く泳がなかったり、くるくる回転したり、泳いだとしても釣れなかったりと何回もの挫折感を味わいました。(今でもトローリング用ミノーは湖上に出て実釣のトローリングピッチでないとアクションを確認できないと確信しています。流れの有る河や小さな池でキャスティングしてアクションを調整しても実釣ではほとんど同じアクションをしてくれません。)
そんな私のミノーの中に不思議(?)に釣れるミノーが現れました。
自己嫌悪に陥って闇雲に結んだルアーにヒットし、巻き上げながら「何を付けたんだっけ?」と魚を掛けて戻ってきたミノーは、似せたつもりのワカサギとは似ても似つかない顔をし、セルロースを分厚く塗り重ねたミノーでした。
これがまぐれでないことはその後の実釣における釣果が物語ってくれました。
しかし、それ以外のミノーは相変わらず実績が上がりませんでした。
釣れるミノーとそれ以外のミノーの違いを調べてみるとそのアクションに大きな違いがあることに気がつきました。
他のミノーがブルブルと泳ぐのに対して、そのミノーは体制を崩すことなくクネクネと泳ぎました。
違いがわかってからはその釣れるルアーを真似て作ることに専念しましたが、試行錯誤の産物でしたから作った自分でもウエイトをどこに入れたかわからず、すぐに行き詰まってしまいました。
どうしようもなくなって、ある日強行手段にでました。 歯型でぼろぼろになったそのミノーを解体したのです。
それが下の写真です。
泣く泣く解体した優等生・ミノー作りのベースとなった
コピーを数本作り、同じ動きが確認できると、次に形・リップの角度・大きさ等体裁を整えて6cmと9cmのサスペンドとフローティングタイプの4つのパターンを完成することができました。
今でもこのミノーは工房の作業台の隅にあって、ミノー作りの原点として目を光らせています。
改良型・ラインナップの原型(スイムテスト確認用)
9cmサスペンドタイプとフローティング
1995〜1998頃の作品
1988〜1994.ルアーの役割を果たさなかった頃の作品
改良型のラインナップは計100本くらい作りましたが、気に入ったものは半数の50本くらいでしたから、当ページでは下記参考文献を紹介するにとどめ、私がハンドメイド・ミノーについて講釈するのは控えさせていただきます。
しかし、日の目を見なかった数百本の作品から得た貴重な経験を入門者の方に参考となればと思い、格言じみたヒントを差し上げます。
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「ルアーはリアルにこしたことはないが、リアルさだけに惑わされてはいけない」
フックを付けて泳いでいる小魚なんていないでしょ。この時点でルアーはルアーでしかないのです。どんなに人間の目で小魚に見えたとしても、最終的にそれに噛みつくのは人間ではなく魚なのですから。
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「作業しにくければ、アイレットやフックハンガーは後付けで良い」
強度を得るためにステンレスの針金でアイレット〜腹部のフックハンガー〜尾部フックハンガーまでを1本で通しているのが一般的である。しかしこの製法はアイレットやフックハンガーがじゃまをしてバルサ材の接着、削り、コーティング作業が複雑になり、時間もかかる。
私は、試作品でも良いから、とにかく泳ぐルアーを手っ取り早く作りたかったので、出来上がりの厚みを持ったバルサ材に形取りし直接削り出すことにしました。そして補強コーティングの直前で、ヘアピン状に成形したアイレットと尾部のフックハンガーを上下左右のバランスを確認しながら取り付け(バルサ材に突き刺す)、瞬間接着剤を充分浸み込ませて固定する。腹部のフックハンガーに至っては最終行程である目(アイ)の取り付け行程に合わせて取り付けています。
確かに強度は1本通しの物に比べると劣りますが、この取り付け方でもルアーが壊れる前に6lbラインの結び目が切れるか魚の肉が切れバレてしまいます。
要するにルアーに必要以上の強度が有っても意味がないということです。
私がルアー作成の参考にした本です
「ザ・ミノー・メイキング」
株式会社 ナツメ社
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