合併特例債の問題点
この借金を前提にした行政の危険性について
その3

 二人が一緒になって、しばらくして予想外の事態が発生しました。最初の10ヶ月はそれまでの額が保障されると思っていた「仕送り」が、予想外のペースで減額されているのです。
 親が算定する「必要額」は、毎月算定基準が変わります。
『タクシーは使わずに、極力バスを使うべきだろう。』
『今どき、煙草を吸うのはいかがなものか。』
『床屋は月一回から二ヶ月に一回へ。』
いろいろ理由をつけては「必要額」が減額されていきます。これは別に約束違反ではありません。親は『金額』を保障するとは言ってません。『最初の10ヶ月は二人が別々だった時の「必要額」を保障する』と言っていたのです。そして「必要額」がいくらかを決めるのは親の一方的な認識で左右されるわけで・・・。

ピンク色は「祝い金」 黄色は「仕送り」 水色は二人分の収入

 「必要額」は50万から45万に下がり、月々20万もらえると思っていた「仕送り」も、最後には15万になっていました。

 おまけに、二人が一緒になったからといって、最初に想定されていたほど無駄が省けていません。一台で充分だと思っていたテレビも、チャンネル争いで結局2台持つ事になったり(笑)、一人は朝型人間、もう一人は夜型人間で、結局二人分の光熱費が必要になったり。

 翌月から、今度は「二人が一緒になった場合の必要額」へと、段階的に「仕送り」が減額されます。合わせて、「祝い金」の自前の返済に月々3万を捻出しなければなりません。同時に、親が返済してくれる7万も、「必要額」に上乗せして算入されます。

オレンジ色は自前で返済する3万。親が返済してくれる7万は「必要額」に算入されるが、当然、借金返済に使い道が決められているので、バツ印をつけて「使えないお金」として区別しました。

 段階的に「仕送り」が減額されて、最後には「二人が一緒になった場合の必要額」は35万になっていました。
 この結婚話が持ちかけられた時は
『二人の場合の「必要額」は40万・・・』
という話でしたが、それはあくまでも「結婚話を持ちかけた当時の算定基準では」40万だったというだけの話で、「今の算定基準では」35万だと言われても、これも約束違反ではないのです。

 そして、その後もジリジリと「必要額」の算定基準は厳しくなり、「仕送り」も減らされていきます。
『バスを使う事もない。健康の為には歩くのがいいだろう。』
『ニュースならテレビで充分だろう。新聞はとるのをやめたらどうだ。』
ついには「二人が一緒になった場合の必要額」が二人の収入額の30万を切るようになりました。

 こうなると、親が払ってくれるはずの月々7万の借金返済はどうなるのでしょう。この例の最後の数字では「二人が一緒になった場合の必要額」は28万と算定され、それに親が払う借金返済分7万が加えられて35万の「必要額の総額」が決まります。そこから収入30万を引いた5万しか「仕送り」が来てません。もちろん、これでは親が払ってくれるはずの7万には、2万足りません。

 その不足分は、二人が払う事になるのでしょうか。この生活があと5ヶ月残っています。

 


補足説明

『こんな詐欺のような酷い事を国がするわけがない。』
そう思う方もいることでしょう。しかし、実際に似たような事が起っているから、騒ぎになっているのです。
 平成16年度に「三位一体の改革で、交付税が12%減額される」と国から言われて、全国の自治体は慌てました。ある自治体は『このままではやっていけない』と考えて、市町村合併を考え始めます。
 しかし、既に市町村合併を行って、新市になって運営している自治体も同様に『このままではやっていけない』と慌てました。なにしろそういう町も、このような交付税の減額を想定していないで将来の設計をしているのですから。そのうえ、合併した町は、特例債の返済も迫ってきます。

 合併した町でも、近年になって慌てて財政の見直しを迫られました。
『少子高齢化社会を迎え、現在と同程度の行政サービスを維持するためには、合併による合理化しかない』
そう住民に説明して合併を進めた町でも、結局、行政サービスの切り捨てを決断しざるをえない状況に立たされた町が幾つも発生しています。

 実は、このような形で地方の自治体が膨大な借金を抱え込む経験は、これが始めてではありません。バブル崩壊後の景気対策でも、これとほぼ同じ仕組みのバラまきをやったために、地方の自治体が借金に喘いでいるのです。

 この事はいずれ、別の場所で紹介します。

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