以下は、2005年6月28日に、藤野町と相模原市の合併を主張する『ふじの行政を考える会』が藤野駅の駅頭で配られたチラシの一部抜粋です。 |
長野県泰阜村は単独を選択した結果、財政が大幅に滞り、道路修繕・公共の建物の修繕・災害時の対応など、住民の生活に直接かかわるものまでも自力ではやっていけず、窓口業務を除いた大半の業務を県に委託しようとしています。自治体の崩壊と言っても過言ではありません。 |
まず、なにより泰阜村は、『財政が大幅に滞って』はいませんでした。いろいろ教えてもらいましたが、泰阜村独自のユニークな行政は今まで通り継続され、今年からは光ケーブルによるケーブルテレビ網の推進や、新たな託老所が生まれたりと、なかなか元気です。 長野県泰阜村でやろうとしている事は、こういう事でした。 昨年藤野町で行われた講演録を読んでもらうと判りますが、泰阜村の松島村長自身は、市町村合併そのものに反対の人ではありません。合併した方が効率的な行政が運営でき、住民の幸福に繋がるのであれば合併した方が良いと考えている方です。 しかし、町の大きさ・単位には必然性があると考えている方でもあります。松島村長の目から見て、泰阜村は人口2200人程度の小さな村ですが、それ自体、一つの単位として存続しなければならない必然性がありました。泰阜村では、特に地理的な要因が大きいようです。 私は藤野町の人口1万人という単位は、町の良さを活かしていく上で極めて適当な大きさだと考えている人間です。しかし、だからといって、『人口1万人が最適なら、人口62万人の相模原市は62分割すればいいのか』と言われると、それは違います。 今年の春、近隣の町との合併をあきらめ、単独の方針を打ち出した山梨県の道志村は、決して合併を望まない住民が多かったわけではありません。しかし、都留市と合併した場合は道志村の東側が、上野原市と合併した場合は西側が、新市になった時に行政の中心から僻遠の場所になってしまうので、合併推進派が一つにまとまる事が出来なかったのです。 話がやや脱線しましたが、松島村長は、小規模村であろうと、残さなければならない必然性のある村は、自治体として残さなければならない、自分で考えて自分で決定できる権限を保持しなければならないと考えているのです。 しかし一方で、行政には人口1000人当たりに一つ必要な業務や施設もあるでしょうし、人口1万人に一つ、人口5万人に一つ、10万人に一つ必要な業務や施設があります。 泰阜村を含めた下伊那地方の町村では、単町では不可能な事業を広域で組合を作って行って来ましたが、近年それらの共同を更に改良発展させるべく、県職員との協働による研究から『ふるさと振興局』設置の提言へと至りました。 以下は中日新聞長野版4月2日より 合併せずに自立の道を選んだ下伊那地方の町村が、共通して抱える課題に連携して対応できるようにと一日、県の出先機関として初の「ふるさと振興局」が同地方の北部、西部、南部の三カ所に設置された。 振興局は、広域連携をさらに円滑化するための県の支援策で、県派遣の地域政策支援コーディネーターが常駐。事務の共同化など地区の行政課題に対応し、企画の立案支援、連絡調整などに当たるほか、地区内に駐在する県の農業改良普及員も振興局員を兼務する。 阿南町、下条など同地方南部の七町村をエリアとする「南信州南部地区ふるさと振興局」は、阿南町役場に開設。七町村のごみやし尿処理などをしてきた「衛生施設組合」を発展させた「総合事務組合」と併せて、町役場で開所式をした。 七町村の首長、振興局に駐在する県職員ら関係者約三十人が出席。管理者の小林謙三阿南町長は「県や町村、NPO法人が広域連携する時代。いかに下伊那地方の町村が自立できるか。この振興局が県内のモデルになるようにしたい」とあいさつした。 恐らく、「ふじの行政を考える会」が言う、 こういう取り組みを近隣の町村と共同して行い、県を動かして、『自治権を守り、村を維持するための』組織を立ち上げたわけです。 合併によって自治体の規模を大きくして、単町では出来なかった業務もできるようにする手法もあるでしょう。しかし、明らかに合併は無理がある場合、今まで通りの町村の形の方が必然性がある場合は、それに代わる手段を模索する必要があります。
泰阜の松島です。 私の「総合行政放棄論」は、ずっと言っているのですが、5,6月の全国規模のシンポで二回発言しました。朝日の編集委員が、自治体発ということで注目し記事になりました。使いようによっては「西尾私案」ですから、推進派の皆さんが使いたい気持ちもわかります。 人口2千人以下では、これ以上、地方交付税等が削減されれば、仕事のあり方を考えるのは当然のことです。もちろん、藤野町の規模になれば、話は別です。 【西尾私案】 思いっきりかいつまんで説明すると・・・ 合併しないで一定規模以下のままの町は、県に重要な事務事業をやってもらうか、あるいは近隣の市に編入されるか、どちらか強制的に選ばせる。こうして、全国から人口1万人以下の町村はどんどん消えてもらおうというもの。 長野県下伊那地方で始まった『ふるさと振興局』は、捉え方しだいでは『合併しないで一定規模以下のままの町は、県に重要な事務事業をやってもらう・・・』考えと似て来ますが、西尾私案では、その場合町村の自立性にも制限が加えられ、法人格を失う可能性も強い。 「村の立場でふるさと振興局をどうみるか」 飯田下伊那には十八の市町村がありますが、その地形から町村を三つのブロックに分けています。泰阜村は南部七町村の一つです。飯田市と合併する南信濃村、上村も南部で、泰阜と地図では隣ですが、直接行く道路はありません。この二村が合併後、泰阜村、阿南町、下條村、天龍村、売木村の五町村が残ります。人口の多いのは、阿南町の6千人です。 「町村の補完をどうするか」 平成19年度以降の地方財政計画の縮小幅によっては、泰阜村のような人口二千人程度の規模で、総合行政体は無理ではないか、と考えます。その場合、誰が、何を補完するのか、が問題となります。いままで、広域連合とは別に全国町村会も提案している町村連合をイメージしてきました。そこで、私ども七町村(合併後五になる)で、現在の一部事務組合を改組し、総合事務組合に変更、すべての仕事を共同で、できるようにしました。広域連合とこの総合事務組合で補完すれば行政運営はできる、と考えてきましたが、多くが縦割り行政であることを考えると、「連合」は、権限の受け皿、事務の補完は「県」と考える方がいい、と思うようになりました。 市町村合併が進み、道州制が論議される中で、これからの県の役割とは何か。一定規模以下の市町村の補完がもっとも大きな仕事ではないのか、と考えています。そこで、その補完を「ふるさと振興局」が担うという姿が浮かんできます。 |