第1話 孫悟空、誕生!
はるか遠い昔、「傲来国(ごうらいこく)」の果ての大きな海に、「花果山(かかざん)」という世界中を見下ろすような、大きな山がそびえ立っていた。
その「花果山」の頂に大きな岩があった。
時が経ち、大きな岩が割れ、石の卵が出てきた。
石の卵は、すぐに「ヒビ」が入り、中からとても元気な一匹の「石ザル」が生まれた。
石ザルは花果山の豊かな自然の中ですくすくと育ち、やがて山ザル達の仲間に入ると、毎日遊んで暮らした。
ある日、山ザル達が谷川に飛び降り、水遊びをしていると...。
「おい、誰か滝つぼをくぐれる奴はいないか?」
「やめたほうがいいよ。滝に打たれて、体がくだけちまう。」
「くぐれる奴がいるなら、俺達の王様にしてやる。」
それを聞いた石ザルは、真っ先に滝つぼに飛び込んだ。懸命にくぐり抜けると、そこにはきれいな景色が広がっていた。
景色の先には、赤い橋があり「花果山 水簾洞(すいれんどう)」の石柱が立っていた。石ザルは、みんなの所へ戻ると、
仲間を呼び寄せて、新しい住家にした。
「さっきの約束を忘れてないだろうな?今日から俺は、ここの王様だぜ」
こうして、石から生まれた石ザルは「美猴王(びこうおう)」と名乗り、水簾洞で何ひとつ不自由のない生活を始めた。
ある日、美猴王は涙をポロリとこぼした。
「おれも、やがて年を取っていつか死んでしまう。」
それを聞いていた、年老いたサルは...。
「この世に3人だけ、死を逃れる事のできる方がおられる。神様・仏様・仙人。」
美猴王は、それを聞き「不老不死の術」を教えてもらうため、いかだを作らせ海を渡り、旅に出た。
いくつかの国々を経て、「牛賀州(ごがしゅう)」という大陸にたどり着いた。
石ザルは仙人を探して、山奥の洞穴にたどり着いた。そこは仙人の住まいだった。
石ザルは、仙人の弟子に案内され、奥の間に通された。
「おまえはどこから来た何者じゃ?」
「傲来国花果山から参った者でございます。」
「そのような遠い国から、ここまで来れるか! このうそつきめ!」
「うそではありません。数十年かけて海を渡り、山を越えて参りました。」
「よかろう。で、どこの家の者だ?名前を何と申す?」
「名前はありません。家もなく、親もおりません。」
「では、木のまたからでも生まれたと申すか?」
「いいえ、石から生まれました。」
仙人は美猴王がやけに気に入り、弟子にした。仙人は名前が無いと言った美猴王に、名前を付けた。
姓を「孫」、名を「悟空」。「孫悟空」だった。
仙人から名前を貰った「悟空」は仙人の弟子たちと共に、水まき、掃除、礼儀作法、習字と修行に勤しんだ。
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