自分の名前の由来を、親に聞いた事がありますか?
これ、誰しも一度は知りたいと思った事じゃないでしょうか。
と、思って職場で隣の席の人に聞いてみたら、「そんなの別に考えた事ない」との事。
名付けられて二十数年、何度か親にその由来を尋ねてみたものですが、曖昧な返事ばかり。ひょっとして幼い頃に教えてもらったのに、まだ理解するには早すぎたために覚えていないだけなのかもしれないけれど。
先日、その何度めかになる質問を母親にぶつけてみたところ、こんな返事が。
「私は『みどり』がいいと、ずっと思っていたんだけどね。父さんが絶対これがいいって。花登筐の『細うで繁盛記』っていうのがあったんだけど、あれに出てくる女主人から貰ったの。あんな風にしっかり家を守って、もりたてていけるようにって。」
へぇ。花登筐かぁ。
「あんたが今食べてるいちじく、父さんあんたが好きだからって、買ってきたんだよ。」
ふーん。
小学校高学年に入ってから、父親と共有するものが少なくなりました。
音をたてて食事するのがイヤ、毎日のようにお金を持ち出してパチンコへ行くのがイヤ、お風呂に入りたがらないのがイヤ、なんでも母さんまかせにするのがイヤ。その癖頑固で自己主張が強いのがイヤ。どんどん嫌なところが増えていって。父親が帰ってくると、顔を合わせたくなくて自分の部屋へさっさと向かったっけ。
いつからだったかな、ぽつりぽつりとだけど会話できるようになったのは。
ふと見ると、私の読みかけの推理小説を父さんがめくっていて。
「あれ?父さんそういうの読むの?」
面白いから読んでみてよね、と勧めたくなる小説のタイトルが次々に浮かんできちゃいました。すると静かに本を閉じてひとこと。
「字が小さくて、読めんな。」
・・・そっか。
私が小学生の頃、『ターザン』や『火星のプリンセス』、アガサ・クリスティの推理小説を勧めてくれたのは誰だったっけ?
「おっ、おまえ一人でいちじく3つも食べたんか。」
「いやぁ、このいちじく美味いよ。父さんも食べん?」
「わしは一つでええ。おい、母さん、一つ食え。」
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