「ウォーキング」サイト内で製鉄技術についてのページがあるとは、
と驚かれているかもしれませんが、「鉄鋼王」カーネギーについて調べているうちに ここまで来てしまった次第です(苦笑)。 以下の「寄り道」は2900文字程度です。「寄り道」なのに長くてゴメンナサイ!! <長ーい「寄り道」:製鉄の歴史>
fujiyanはまったく素人なんですが(苦笑)、「製鉄」についてまとめますと。。。。。 純粋な「鉄」(元素記号Fe)は、グニャグニャと柔らかいものだそうで、これでは「道具」には適しません。 純粋な「鉄」の塊に、「炭素」(元素記号C)が混ざる(=「合金」)ことによって「硬さ」が増していき、「鉄製品」として使用できるんだそうです。(「炭素鋼」あるいは「普通鋼」と呼ばれています。) 「鉄製品」は「硬さ」、つまり炭素の含有量の大きさ、に応じて大まかに3種類に分けられ、柔らかい順に ・「錬鉄(れんてつ)」、・「鋼(はがね)、鉄鋼」、そして・「銑鉄(せんてつ)、鋳鉄(ちゅうてつ)」。 (現在では、5種類程度に分けられているようです。) また地下から取り出した「鉄鉱石」中の「鉄」は「錆び」ています。この「錆び」とは「酸化」、つまり鉄と「酸素」(元素記号O2)と分子構造上結びついていることだそうです。 ですので「製鉄」とは、「鉄鉱石」を道具として使用可能にするために、 ・「錆び」=「鉄鉱石」内の「鉄」に結びついた「酸素」、を取り除く。(「還元」と言うそうです) ・「酸素」と別れた「鉄」に、「炭素」を溶け込ませ「硬く」する。 (原始的製鉄 - 純粋な「鉄」に「炭素」を加えて「硬さ」を増す) 「鉄器時代」と呼ばれるように、紀元前から人間は「鉄」製品を作り出していました。やり方は、「空気(酸素)」を送り込み「木(木炭)」を燃やして「鉄鉱石」を加熱し、その後熱くなった鉄鉱石の「固まり」を叩く、というもの。空気は「フイゴ」と呼ばれるペダル式のもので送っていて、後世は「水車」などを使ったそうです。 <「錆び」を取り除く> 「木炭」を燃やして、 ・「鉄鉱石」を加熱して「鉄」と「酸素」(元素記号 O2)が分離しやすくする ・同時に、「木炭」が燃えて、「炭素」(元素記号 C)が「一酸化炭素」(元素記号 CO)」となり、「鉄鉱石」の酸素(元素記号 O2)と結びついて、「二酸化炭素」(2CO+O2=2(CO2))になり「酸素」は取り除かれる。 つまり「木炭」は「加熱源」であると同時に、「酸素を取り除く材料」というわけで、これを「還元材」というそうです。「一酸化炭素」は酸素に結びつきやすい性質を持っており、ちなみに「一酸化炭素中毒」は「一酸化炭素」が体内に取り込まれて血液中の酸素に結びついてしまうことです。 <硬くする> また、純粋な「鉄」の塊に木炭の「炭素」が別途混入して「硬く」なり、道具として使用可能になる。 「空気(酸素)を送り込む」のは「木炭」を大量に燃焼させ高温を保つため、そして「叩く」のは「鉄鉱石」に混じっている不純物を取り除くため、だそうです。 まとめますと、「鉄鉱石」の「固まり」を熱して天然の「錆び」(=「酸素」)を「炭素」とくっつけて落とし、叩いて不純物を取り除き、若干の「炭素」を混入させて「硬度」を出す、という次第。古代の人たちは化学を分からずに鉄製品を作っていたんでしょうが、この「経験則」にはホント驚かされます。 (「高炉」による「銑鉄・鋳鉄」の大量生産−「木炭」から「コークス(石炭)へ」) 現在TVなどで目にする光景の、鉄がドロドロな状態までの高温を出すことは、古代では無理でした。 15世紀頃ヨーロッパで大量の木炭を燃やし、水車で空気(酸素)をふんだんに送り込み、加熱温度を上げていく一方で、木炭からの炭素が多く混じることとにより溶け出す温度(「融点」)が下がっていく「溶鉱炉」、中でも鉄のためにあつらえられた、背の高い「高炉」の技術が誕生し、大量の「溶けた鉄」を生み出すことができました。 ちなみにアニメ映画「もののけ姫」でこの時代の技術に相当する、日本独自の「たたら製鉄」法が描かれています。「たたら製鉄」は、砂鉄と木炭を層として積み上げて加熱していく方法です。「もののけ姫」のテーマは「自然破壊」。つまりこの時代の製鉄技術は大量の森林資源を消費してしまうことになり、製鉄の中心であったイギリスでは、森林資源の枯渇から一時期製鉄業が滞ってしまったそうです。 イギリスで、1709年、「木炭」と同じく「炭素」を持つ「石炭」を、蒸し焼きにし不純物を取り除いた「コークス」を使用した「コークス高炉」が発明され、ここで更に大量の「溶けた鉄」を生産することが可能となりました。また空気(酸素)は蒸気機関で送り込まれるようになり、さらに製鉄量を増大させることが可能になりました。 この「溶けた鉄」ですが、古代の製鉄では純粋な鉄の塊に「炭素」を少しずつに加えて「硬く」していく方法だったのに対して、「溶けた鉄」には一気に多くの「炭素」が送り込まれることになり、炭素が多くて「硬い」、「銑鉄(せんてつ)・鋳鉄(ちゅうてつ)」が、大量に生産されるようになりました。 「溶けた鉄」を「型」に流し込むと最終製品化できる簡便さですから大量生産可能でして、軍事目的としては「大砲」、また橋、建物などの建築素材などに使用されることになります。 しかし、この大量生産可能な「銑鉄・鋳鉄」の最大の弱点は、「炭素」が多すぎること。「硬い」のですが「脆(もろ)い」。従いまして、大型、高層の構築物などには使用できない、というわけです。程好く「炭素」を含み、程好く「硬く」、程好く「弾力性」を持つ「鉄」=「鋼(はがね)」、つまり「鉄鋼:スティール」、が欲しい!!「パドル法」という、「溶けた鉄」をかき回し空気中の「酸素」と接触させて「炭素」量を調節する方法で「鉄鋼」を作りましたが、コストが高く、少量生産でした。 (「ベッセマー法」−鉄鋼(スティール)の大量生産へ) 答えを出したのは、1856年英国の「街の発明家」ベッセマーでした。「コークス高炉」で出来た、「炭素」を多く含む高温の「溶けた鉄」を、さらに高温の状態で「空気」(酸素)を吹き付けることにより、「炭素」と「酸素」が反応し「炭素」が除去出来ること(「ベッセマー法」)を発見しました。 「炭素」が完全に除去されれば柔らかい純粋な「鉄」になり、程好く「炭素」を残せば「鉄鋼:スティール」になる、と言う訳です。「高炉」で出来た「溶けた鉄」を別の「炉」に転じて空気(酸素)を送り込む。この別の「炉」は「転炉」=「ベッセマー転炉」と言います。 しかしこの「ベッセマー法」に弱点があることが分かりました。「鉄鉱石」から取り除くべき不純物の一つ、「燐(リン)」が除去できなかったのです。どうしたら良いか?1879年「トーマス法」という、「燐(リン)」の除去方法が開発されるまでの回答は、「燐(リン)」をなるべく含まない鉄鉱石=「低燐鉱石」、を使用することであり、アメリカ大陸の5大湖周辺には、それがふんだんに眠っていました。 カーネギーが製鉄業に莫大な投資を行うのは、「鉄鋼 スティール」の大量生産技術が「ベッセマー法」で可能となった、低燐の鉄鋼石はフィラデルフィア州西部から程近いところに眠っている、「石炭」も豊富にある、そんな時代背景がありました。 今まで読んでいた場所に戻る
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